人気作家が8年続けた「子どもインタビュー」はわが子の内面成長の尊い記録

シリーズ「子どもの声をきく」#2‐3 児童書作家・杉山亮さん~子どもインタビューでわかる成長~

児童書作家・ストーリーテラー:杉山 亮

児童書作家・ストーリーテラーの杉山亮さんが長男と2人きりで8年続けた子どもインタビュー。そこからはどんなものが見えたのでしょうか。  写真:アフロ
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「子どもの声をきく」ことが昨今重要視されている中、26年前に一人の子どもの声を聞いてまとめた本『子どものことを子どもにきく』(杉山亮著・岩波書店刊)が、今年(2022)、2度目の文庫化になりました。

同書は、子どもが3歳から10歳までの8年間、年に1回ずつ父が息子に“子どもインタビュー”を続け、その内容を記録したもの。

著者の児童書作家・杉山亮さんは、26年前に終えた8年間のインタビューをまとめて読むと子どもの成長がよりよく見えると話します。

※全4回の3回目(#1#2を読む)

杉山亮(すぎやま・あきら)PROFILE
1954年東京生まれ。保父、おもちゃ作家を経て、児童書作家兼ストーリーテラーに。『もしかしたら名探偵』『いつのまにか名探偵』など23冊に及ぶ「あなたも名探偵」シリーズ、『ばけねこ』(原作・ポプラ社)などのおばけ話絵本シリーズなど、数多くの児童書を執筆。

成長するにつれ変化する言葉

1996年の初版から26年を経て、今年11月『子どものことを子どもにきく』が2度目の文庫化となりました。

この本は、1989年から1996年まで年1回、息子・隆(たかし)への“子どもインタビュー”を記録したものです。当時は毎年8月に発売されるミニコミ誌に書くため、6月ごろにインタビューを行い、7月に原稿を書いていました。

それが本になって8年分のインタビューを通しで読んでみたら、隆の成長がよくわかるんですよね。おもしろいし、実に感慨深い。

というのはね。年を重ねるにつれ、だんだん会話の中には噓やごまかしが入ってくるんです。

例えば、隆が6歳のときに話してくれた保育園生活については、文字で読むといろいろと考えている様子がわかります。

当時、担任だった保母さんについての話は、どこまで言っていいのか迷いも見えてくるし、「まあまあ」というあいまいな、口をにごすような表現も年を重ねるごとにするようになりました。

また、小学生くらいになると、あえて相手を笑わせようと知恵を使っています。例えば8歳(小学3年生)のとき、当時の隆が熱中していたサッカーの話をしていました。

僕が「キーパーもしたことある?」と聞くと、「フッフッフ、ぼくはゴールのシュゴジンだよ」と。

「なんだよ、そりゃ。宿屋の主人じゃあるまいし、シュゴシンっていうんだよ。で、ボールをとれるの?」
「だからシュゴシンだから」
「シュゴシンだからって。おまえ、意味わからずに使ってるな、まあいいけど。ハハハ」
──という具合にね。

そういうふうに、ちょっと知恵を使って“ウケ狙い”をする会話ができるようになったことに、大きな成長を感じましたね。

インタビューのやめどきは思春期の手前

インタビューは隆が10歳まで続きました。この先も、隆はどんどん新しい言葉を獲得していって、同時に何かを失っていく。

純粋すぎる子どもと話をする楽しさも、本人の言葉から内面の成長を記録できるのも、大体ここまでだろう、という感触が割と手ごたえとして得られ、終わりにしました。

結果的に、10歳でやめた判断は妥当でした。もしその後も続けていたら、おもしろいこともあったかもしれないけれど、楽しくなかった気もします。

思春期に入ったら、子どもの悩みも少しずつ複雑になり、会話も込み入った内容になるでしょう。それはもう、親ではなく、友達と語り合う話です。思春期の子どもが大人に胸の内を話さなくなるのは当然だと思うんです。

そもそも、子どもは親より友達との時間を優先するようになるはず。インタビューに応じてくれたとしても、まあ、どこまで本当のことを言うんでしょうね。

隆はもう37歳です(2022年11月現在)。子ども時代は、聞かれたことには饒舌(じょうぜつ)に話していましたが、今では必要ないことは話しません。

思春期を経て大人になれば、またいろいろあるわけで、それはもう親である僕にはわからないことだし、知らなくてもいいことはいっぱいあると思う。しゃべってくれているうちが花。ごく短い期間ですよ。

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