ごはん作りは「がんばらなくていい」 料理家・コウケンテツが見つけた「子育ての大切な時間」を味わう極意

コウケンテツさんも作りたくないときがある 「限界ごはん」 #6 子どもへの家事分担の方法

料理家:コウケンテツ

料理家・コウケンテツさん。最終回では、子どものお手伝いについて話してくれました。

日々成長していく子どもたちから学ぶことも多いという料理家・コウケンテツさん。連載最終回となる6回目は、子どもたちのお手伝いと家族の時間について。

コウさんのおうちでは、お子さんたちが小さいころから「お手伝い」を実践し、今では家事の戦力になるほどに! その方法には、子育てのヒントがたくさん隠れていました。


(全6回の6回目。#1#2#3#4#5

長女と餃子を100個包みながらのトーク時間

コウケンテツさん(以下、コウさん):先日、長女と一緒に餃子を作りました。妻が忙しい時期だったので2人でキッチンに並んで。餃子を100個ぐらい包んだのかな。

そうすると、いろんな話ができるんですよね。仕事をしながら、そばで聞いていた妻も、「いろんな会話して楽しそうだったね」って。

娘は年頃のせいか、前ほど学校やお友達のことを話してくれなくなったんですよね。でも、餃子を包んでいる時間は、素直な気持ちも話してくれたり、楽しい話をしたり、とってもいい時間でした。

「普段より会話が弾んで、とてもうれしかったですね」(コウさん)

コウさん:横に並んで話をする、というのは視線が交わらないので話をするにはよい、と聞いたことがありますが、それ以上に、料理を一緒に作ることの効用も感じました。

手順を共有して、親から子へ伝えるというのもあるんですが、同じものを一緒に作ることでの一体感かな。もちろん食べたら美味しいというのがいいですよね。
一緒に料理をすることが、子どもと親の関係も、育てる面があるように思います。

子どもを家事の戦力にする

コウさん:子どもと料理というテーマでいうと、長男が以前にも増して料理に興味が出てきて、今かなりの戦力になっています。先日は、僕のYouTubeチャンネルを見て「オムライス」を作ってくれました。

コウさんのYouTubeチャンネル『Koh Kentetsu Kitchen』より、「誰でもきれいに包める秘技を伝授!おうちで簡単!王道オムライスの作り方」。

誰でもきれいに包める秘技を伝授!おうちで簡単!王道オムライスの作り方/Omelette Rice|Koh Kentetsu Kitchen

コウさん:オムライスは、きれいに包まれていたし、家族の分も全部作ってくれて感激! 隣で料理を教えるのとはまた違う嬉しさがありましたね。

「長男がオムライスを作ってくれて、『YouTubeやっていてよかった!』と思いました(笑)」(コウさん)

コウさん:この自発的な長男の料理に辿り着くまでは、もちろん長い道のりがありました。以前から妻が言っていることなのですが、「子どもにパスを出すようにする」ということが、大きなカギになっていると思います。

そして、子どもがまだ、小さいころから家事の戦力にカウントし続けること。家族の一員として、「この家事をやらなければならない」ということを認識してもらい、少しずつやってもらえるように、パスを出し続けます。

お箸を揃えたりする食事の準備、食器を下げたりする簡単な後片付けなど、なんでもよいのです。「この仕事をお願いします」というパスを、子どものレベルに合わせて出していく。わが家では、小さいころからそれぞれのレベルに合わせて、小さなお手伝いをしてもらい続けてきました。

「助かったよ!」という声かけで子どもの自己肯定感が上がる

コウさん:毎日忙しい親御さんとしては、「私がやったほうが早いから」と、お手伝いをさせることが負担なときもありますよね。でも、未来の即戦力のために、「簡単なことをひとつだけ!」を標語にして、それを続けていくことが大事です。

今回のメニューだと、アボカドを潰して混ぜること(4回目のアボカドとツナのカレーサラダ)や、きゅうりを叩くこと(サーモンときゅうりのにんにくごま和え)は子どもも面白がってやってくれると思います。麺棒でガンガン叩いて褒められることは、なかなかない経験ですよね(笑)。

「きゅうりを叩くときはぜひ手伝ってもらいましょう」(コウさん)

コウさん:ワンオペの状態で、家事を一人でやっていると、味方が誰もいないと感じることが多いですよね。「みんな敵」みたいな気分になってしまう。もちろん「家族も敵」に思えてくる。僕のところには、こんな孤独の悩みを打ち明けてくるママは多くいて。だからこそ子どもに、できる範囲のことを分担してもらう。

そして、子どもがお手伝いをしてくれたら、一言きちんと「助かったよ、ありがとう」とお礼を言ってあげてください。これはとても大事なこと。「家族のために、役に立てた」という成功体験は、子どもの自己肯定感を上げてくれることにもなりますし、それが明日につながります。

「ママパパは手伝ってもらったら、『ありがとう』と感謝の言葉をきちんと伝えましょう」(コウさん)

過ぎていく家族との時間を大切にしたい

コウさん:近頃は、こんなことも思います。時間は有限だし、家族にとって一緒にごはんを食べる時期は、実は限られているなあ、と。

というのも、今は子どもたちが成長してきて、土日も学校や塾に行ったりと、食卓になかなか全員が揃うことがありません。平日は、時間はずれているけど、同じものを食べているという感じです。
土日の夜ごはんは、かろうじて今は一緒に食べられているけれど、この先は未知数。だから今、土日に一緒にごはんを食べられる時間自体が、イベントであり、楽しいひとときとなっています。

以前は、「家族だから一緒に、同時に食べなくては」と思い込んでいて、理想と現実との違いがしんどかったけど、「一緒に食べなくてもいい」という選択肢を持つことで、僕自身気が楽になったところがあります。

5回目でも話しましたが、「ごはんを作らなければ」を「土日は作らない」に変更して、一緒に食べること自体を楽しんでいるのが今です。生活によっては、逆でもいいと思います。「平日作らない」日を作って、「土日は作る」でも。

今、大変なあなたへ 「がんばらなくていい」

コウさん:お子さんが小さくて、子育てに追われているときって、「今が一番大変だけど一番いい時期よ」とか、「一番かわいい時期だから」とか言われることが多いと思います。僕もそうでした。でも言われるたびに「そうかもしれないけど、今、なんとかしてよ!」と、いつも思っていて。

その気持ちを僕は、今でも忘れていないから、「今だけだからがんばって」という、しんどくなる声掛けはしたくないんです。

その一方で、「今、一番いい時期、大切な時間」を味わうために、楽できるところはできるだけ楽にしてほしいと思っています。

がんばらなくていい。ごはん作りも、自分の考え方も。楽にしてほしい。今、子育てをしているすべての方へ、心からそう願っています。

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「がんばらなくてもいい」というコウさんの言葉に、思わず胸が熱くなりました。

しかし、毎日は続いていきます。おなかも空きます。今回のコウさんの「限界ごはん」のレシピ(2~4回)が、日々のごはん作りの手助けに少しでもなりますように。

撮影/土居麻紀子
取材・文/上坂美穂

コウケンテツさんの記事は全6回。
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こうけんてつ

コウケンテツ

料理家

料理家。旬の素材を生かした手軽でおいしい家庭料理を提案し、テレビや雑誌、講演会など多方面で活躍中。また30か国以上を旅し、世界の家庭料...