【限界ごはん】料理家・コウケンテツさんに届く「料理を作るのがしんどい」というママたちの悲鳴

コウケンテツさんも作りたくないときがある 「限界ごはん」 #1 家庭内での家族の役割

料理家:コウケンテツ

料理家・コウケンテツさん。3児のパパとして、子育てや家事に多忙な日々を送っています。

「世界を見比べても、日本のママは本当にがんばっている。毎日のごはん作りもがんばりすぎているぐらい。だから、これ以上がんばらなくていいと思うんです」

とは、料理家・コウケンテツさん。コロナ禍の真っ只中(2020年)に出版した、初のエッセイ本『本当はごはんを作るのが好きなのに、しんどくなった人たちへ』(ぴあ)で、このような想いを綴っています。

「それに、料理家の僕だって、毎日のごはん作りはしんどいです」とも。

2023年現在。コロナ禍を経て、世の中が平常に戻りつつある今、YouTubeで180万超ユーザーに向けて料理を発信するコウさんのもとへ届く声は、果たして変わったのでしょうか? 

コウケンテツさんに聞く、作りたくないときの「限界ごはん」。

1回目はコロナ禍前後で家庭内での家族の役割は変わったのかについてお話しいただきました。


(全6回の1回目。2回目~4回目はオリジナルレシピあり)

「家庭のごはん」が限界を迎えたコロナ禍を経て

──コウさんのところに寄せられる家庭の「ごはん作り」への声は、コロナ禍の前後で変わったのでしょうか?

コウケンテツさん(以下、コウさん):それが、あまり変わらないんです。

僕が、料理の仕事を始めてから、「料理を作る楽しさ」や「作る喜び」の声と同じぐらい、実は「料理を作るのがしんどい」というみなさんの、悲鳴のような声も届いていました。

「僕のレシピがみなさんを追い詰めているのではないか」。そう思ったこともありました。

しかし2020年、「このコロナ禍が、もしかして今までのおうちごはんの状況を変えてくれるのかもしれない」という気持ちが生まれました。

というのも、在宅ワークが普及したことや、外出が制限されたことで、家族が顔を合わせている時間が長くなり、食事の時間を一緒に持つことができるようになったからです。そして、それがよい方向にいきそうな兆しが、当時はありました。

それまでは、帰宅したらテーブルに並ぶごはんを食べるだけだったパパも、ママが料理をする過程を見たり、知ったりする機会ができたし、パパ自身が料理をする機会も増えました。

夫婦がお互いに、感謝の気持ちや思いやりの気持ちを持ち、相手のことを尊重できるようになる。そしてそれが根付いていく。

コロナ禍は、困難なこともたくさんありましたが、そんなふうに家庭の風通しをよくする機会になるのではないか? と、当時は思っていました。

「家庭の中での、パートナーとの役割分担は永遠のテーマですよね」(コウさん)

手ごわい固定概念をフラットにするには?

──しかし現実には、それはなかなか難しかったということですか?

コウさん:はい。ステイホームが解除され、仕事や生活が元どおりになった今、皆さんのご家庭の現状はどうですか? 前に戻ってしまったというおうちも多いのではないでしょうか。むしろ、さらにワンオペに拍車がかかったというケースも耳にします。

もちろん、コロナ禍がきっかけで、家事をやるようになったという男性の方も増えたとは思いますが、正直まだまだ少数派です。

コロナ禍という大きな出来事ですら、家事の役割をフラットにするのが難しかった。僕は、もっともっと、家庭内の仕組みが大きく変わるかと思っていたけど、現在のママ友たちの声を聞いても、僕の見通しは淡い期待に過ぎなかったのかなと、今は思っています。

ただ、ポジティブな変化もちゃんと起きていて。そう肌で感じられるのは、コロナ禍の中で開始した僕のYouTubeチャンネルで、直接皆様の声を聞くことができるようになったからです。

コウさんのYouTubeチャンネル『Kohkentetsu Kitchen』は、毎週新作を配信中。「寄せられたコメントは、必ず読んでいます!」(コウさん)

家族の役に立つ喜び

──コウさんのYouTubeチャンネルには、180万以上の登録ユーザーから、いろいろな声が寄せられていますね。

コウさん:そうなんです。みなさんから寄せられるコメントやメッセージは、本当にありがたくて。読みながら、いつも感動しています。

先日いただいたメッセージなのですが、僕の本を読んだことで、家庭科の先生を目指したという方がいらっしゃいました。実際に今、高校で家庭科の授業を持っているそうです。
「中高生向けのレシピも公開してください」というメッセージも一緒にいただき、若い世代を育てている方からのコメントに、僕もやる気をもらいました。

また、まったく料理をしたことのなかった大学生の男の子が、僕のYouTubeを観て、料理を作る楽しさに目覚め、さらに「料理を作ることで、家族の役に立つうれしさを感じた」というコメントをいただきました。

この“家族の役に立つうれしさ”というのが、すごくポイントだと思うんです。というのも、社会に出て働いて、仕事で自分の能力を活かす喜びがある一方で、家庭の中で、家族に貢献できる幸せや楽しさもあります。

料理を作り上げる達成感や、家族が喜んでくれるうれしさというのは、家庭料理ならではのこと。他では味わえない経験です。

「YouTubeでいただいたコメントを読むのが、最近の楽しみのひとつです」(コウさん)

即効性のあるレシピで「作りたくない」を乗り切る

──一方、パートナーが料理に目覚めてくれるのを待っている間でも、毎日の食事作りは発生しています。毎日、毎日、お腹は空きますしね。

コウさん:そう、ごはんは毎日食べないとエネルギーが切れてしまいますよね。

「もう1歩も動きたくないけれど、ごはんを作らないといけない」、それに「疲れているからこそ、簡単に、おいしいものを食べたい」。

あと、こういった状況のときって、お惣菜や、インスタント、冷凍食品や出前などに頼るのも良いと思うのですが、逆に手作りのものが食べたいという気持ちもありますよね。作ることで自己肯定感も上がりますし、なにより罪悪感も生まれない。

今回、「限界ごはん」というテーマで、コクリコ用に新レシピを考えました。

できるだけシンプルな手順と時短でおいしくなるように、工程もなるべく省けるよう、YouTubeチャンネルのレシピより、正直すごく考え抜きました(笑)。

というのも、簡単な料理ほど、実はおいしくするのが難しいんですよ。そもそも料理は、手順や工程が複雑になるほど、おいしくなる部分があるからです。

連載4回目では、和えるだけで仕上げるレシピをご紹介しています。ぜひ、お楽しみに。

コウさん:今回の「限界ごはん」のレシピ作成で、気をつけたのは次の3点です。

①材料・調味料はご家庭で常備していそうなもの。
②工程は3ステップ以内。
③食べ応えのある主菜と副菜であること。

各レシピに使う食材も、入れ替えればアレンジできるように幅を持たせています。

「料理を作るんだ」と難しく考えず、

「手でちぎっていい」
「混ぜたらできる」
「蒸したらできる」

そんな気軽な気持ちで作っていただけたらと思います。

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次回からは、コウさんが提案する「限界ごはん」のレシピをお届けします。

2回目のレシピのテーマは、「包丁いらず、まな板いらず」。
子どもも喜ぶ「レタスの肉みそのっけ丼」と、「鶏のタンドリーチキン風」のレシピをご紹介します。鶏肉をたっぷり使った、たんぱく質たっぷりのレシピをどうぞお楽しみに。

撮影:土居真紀子
取材・文/上坂美穂

コウケンテツさんの「限界ごはん」は全6回(2~4回はレシピ公開)
2回目を読む(レタスの肉みそのっけ丼&鶏のタンドリーチキン風)。
3回目を読む(白身魚の中華レンジ蒸し&豚しゃぶともやしのおかずナムル)。
4回目を読む(サーモンときゅうりのにんにくごま和え&アボカドとツナのカレーサラダ)。
5回目を読む
6回目を読む
(※5回目は2023年6回目は8月18日公開。公開日までURLリンク無効)。

『まねっこシェフ ふわふわ! スクランブルエッグ』著:コウケンテツ(主婦の友社)
こうけんてつ

コウケンテツ

料理家

料理家。旬の素材を生かした手軽でおいしい家庭料理を提案し、テレビや雑誌、講演会など多方面で活躍中。また30か国以上を旅し、世界の家庭料...

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