子どもと家事を楽しむには「親の余裕」が不可欠! 負担を減らして心を軽く!

家事研究家・佐光紀子「幼児の家事デビュー」の教え 第3回

佐光 紀子

余裕がないときこそ子どもと「家事シェア」をする

時間に余裕がないときでも、手伝ってもらえることはあります。「これ大変だからちょっと手伝ってもらいたいな」というと、「ママは今、大変なんだ」というサインが子どもに伝わって、子どもは手伝ってくれようとします。ほかにも、子どもが何かこぼしてしまったとき、「ママ、今日はとてもくたびれちゃって拭けないから、拭いてくれると嬉しいな~」と言うと、拭いてくれることもあるでしょう。

調子が悪いときや疲れているとき、どうしても苦手な家事があれば、それも率直に伝えていいと思います。

私も過去に、すごく調子が悪くて、保育園から子ども二人を連れて帰っただけで、動けなかったことがありました。そのとき、当時年長だった長男が、私の代わりにピザ店に電話をかけ、注文してくれたんです。もちろん脇で私が一つ一つ指示しながら、ですが。

いざというとき、子どもは親を助けてくれます。親が子どもを「世話しないといけない」と思い続けると、すごくつらいと思うんですけど、そうではなく「一緒に生活する」という気持ちで、肩の力を抜いてみると、嘘のように心が軽くなります。

不得手な家事があれば「苦手」だと正直に話す

またあるときは、疲れている中、苦手なアイロンがけを頼まれたこともありました。そのときは「やってもいいけど、ママはアイロンが苦手なの。かけている間、不機嫌になってもいいならやるよ」と答えたら、長女は、自分でかけた方がいいと判断したのでしょう。以降、自分でアイロンをかけるようになり、今ではアイロンの達人です。

自分がラクになるために「アイロンは自分でかけて」と言うのではありません。ただ正直に、苦手なことは苦手と打ち明けることで、子どもたちも、「自分ができなくてもしょうがないし、ママもできなくてしょうがない」と思えて、結果的にお互いフランクな気持ちで家事に向き合えるようになるのです。

子どもが料理への興味を高められる絵本2冊

たとえば、次の本を読み聞かせながら、一緒に過程を楽しむことも一つの方法です。
おすすめは『フェリックスの手紙』シリーズのお料理本です。これはレシピも載っていて実際に料理を作れる絵本なんです。子どもと読んでから、一緒に作ってみてはどうでしょう。中には初めて出会うようなレシピもあって、「ナニコレ!?」と子どもと大笑いしながら作ったりして(笑)。一緒に見て、どんなものがあるのか、お買い物に行ってみたりしても楽しいでしょうね。

『フェリックスの料理ブック―くいしんぼうのフェリックスとソフィーが集めた世界24カ国37レシピと4通の手紙付き』(話:アネッテ ランゲン、絵:コンスタンツァ ドロープ、訳:栗栖 カイ/ブロンズ新社)

私が子どものころすごく好きでよく読んでいたのが、土井勝さんの『お料理しましょう3』(著:土井勝/日本放送出版協会)。これを読んで、自分で作ってみておもしろいと思って買い物に行ったことがありました。この本はもう絶版になっていますが、読んで実際に作ってみたいと思わせるような、簡単な作り方まで載っている本はおすすめですね。ただ、一緒にお料理をするのは、やはり心の余裕と時間の余裕があるときに限られそうです。

『お料理しましょう3』(著:土井勝、絵:川本哲夫/日本放送出版協会)は残念ながら現在は絶版。1970年に発行された。

家事の目的は、家族が居心地いい状態で暮らすためですよね。親が不機嫌になって家庭内がピリピリしては、本末転倒です。ほどほどにラクをして心の余裕を持ち、できた余裕で、子どもが生活の技術を身につけるための“入口”を用意する。それくらいの気持ちで、長い目で子どもの家事力を育てていきたいですね。


構成/桜田容子

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さこう のりこ

佐光 紀子

ナチュラルライフ研究家・

1961年、東京都生まれ。国際基督教大学を卒業後、繊維メーカーや証券会社で翻訳や調査に従事後、フリーの翻訳者に。本の翻訳を機に、重曹や酢などの自然素材を使った家事の研究を開始。 2002年に『キッチンの材料でおそうじする ナチュラルクリーニング』(ブロンズ新社)を上梓する。その後、『もう「女の家事」はやめなさい――「飯炊き女」返上が家族を救う』(さくら舎)など、家事の負担を軽減する著書を多数執筆。 近著は、家事シェアを円滑に進めるコミュニケーション方法などを説いた『なぜ妻は「手伝う」と怒るのか 妻と夫の溝を埋める54のヒント』(平凡社新書)。プライベートでは、2021年6月時点で社会人として活躍する三児を育てた母でもある。

1961年、東京都生まれ。国際基督教大学を卒業後、繊維メーカーや証券会社で翻訳や調査に従事後、フリーの翻訳者に。本の翻訳を機に、重曹や酢などの自然素材を使った家事の研究を開始。 2002年に『キッチンの材料でおそうじする ナチュラルクリーニング』(ブロンズ新社)を上梓する。その後、『もう「女の家事」はやめなさい――「飯炊き女」返上が家族を救う』(さくら舎)など、家事の負担を軽減する著書を多数執筆。 近著は、家事シェアを円滑に進めるコミュニケーション方法などを説いた『なぜ妻は「手伝う」と怒るのか 妻と夫の溝を埋める54のヒント』(平凡社新書)。プライベートでは、2021年6月時点で社会人として活躍する三児を育てた母でもある。