読書感想文を最後に残さない! 本好きになる「読書ゲーム」を家族でやってみたら…

作家・書評家 印南敦史さん「読書ゲームメソッド」#4 ~小学生レポート編~

作家・書評家:印南 敦史

墓場の挫折本たちは静かに見守って

⑤のミッションは「挫折本の墓場」を作ること。子どもたちの本棚の中枢に、このような挫折本を並べて「まだきちんと読んでないであろう墓場本ゾーン」を設けてみました。「読んでない本たち、ここら辺に置いておこうね」と一言添えて。

子どもたちが本棚をいじっているとき「そろそろあの本、読まないかな~」と墓場本エリアを静かに思ってみているけれど、なかなか手を伸ばさないもの。

よくよく見ていると、子どもは「好きな本ばかり何十回も繰り返し読む」といいう事実が明らかに! 

「何度も同じ本を読まないで、墓場から拾ってやってくれ~」と干渉したくなる気持ちをぐっとこらえて見守っています。

「たとえばショートショートしか読まない子がいたとしても、読み続けていくうちにパターンがわかってきて、その結果『もっと長いお話が読みたい』と思うかもしれない。

興味が湧けば、自分から“読むべきもの”を探すことでしょう」(印南さん)

それでも子どもに特定の本を勧めたい場合には「『読みなさい』ではなく、“同じ本好き同士の、同じ目線”で語ることが大切」と印南さんは教えてくれます。

「親自身が、『感動しちゃったから、語らずにはいられない!』という姿勢を見せればそれがきっかけになるかも。でも、“それ以上”は要求しないこと。

墓場の挫折本は、読むかもしれないし、読まないかもしれない。

どちらにしても子どもの自主性は重視すべきで、大人にできることはそこまでです」(印南さん)

読書ゲームの効果? 友達と本の話をするように

夏休みの感想文のための読書習慣定着に向け、水面下で読書ゲームにトライしてきた我が家。約1ヵ月経ち、すこしずつその成果があらわれてきたように思えます。

長男はお気に入り本を見つけた様子。本を読み終わったあと、友達に薦めてみたら「俺も読みたい」、「私にも貸して!」となったそうで、レンタルする順番を熱心にノートに書いていました。みんなからの感想を聞くのもとても楽しいよう。

長男のお気に入りは『キャプテンはつらいぜ』(作:後藤竜二/講談社刊)。「この本面白いよ」と言える友人関係って素敵だなぁと思ってみていました。

漫画『SLAM DUNK(スラムダンク)』しか読まなかった次男も、すこしずつ活字の本を読むように。何より、「読みたい本」がリクエストできるということは「本が読みたくなってきている」という証(あかし)!

子どもたちのその気持ちに寄り添いつつ、一定の距離を保ちながら、家族で楽しく「読書ゲームメソッド」を続けていけたらと思います。

そして、今年の夏は、計画的に“読書感想文”を終わらせたいところです!

印南敦史(いんなみ・あつし)
作家、書評家。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年、東京都生まれ。広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、音楽雑誌の編集長を経て独立。さまざまなメディアで書評欄を担当し、読書量は年間700冊以上。2020年には、“日本で一番”を認定するサイト「日本一ネット」において「書評執筆本数日本一」に認定された。読書や文章技術、音楽に関する著書多数。

取材・文/遠藤るりこ

印南敦史さんが、子どものいる家族向けに執筆した『読書する家族のつくりかた 親子で本好きになる25のゲームメソッド』(星海社)。大人も子どもも、読書を“ネタ”としてゲーム化しながら楽しめるメソッドが盛りだくさん。きっと、親子で本を好きになるヒントが見つかるはず。

※印南敦史さん「読書ゲームメソッド」インタビューは全4回。

#1 小学生の「不読者」30%時代 子どもの読書量を増やす“読書ゲーム”とは?
#2 本の1%が印象に残れば大成功 「悪口ゲーム」で子どもの読書コンプレックスをなくす
#3 朝読書から本の墓場?まで 夏休みに子どもを読者好きにするスゴいテクニック

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いんなみ あつし

印南 敦史

作家・書評家

作家・書評家。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年、東京都生まれ。広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、音楽雑誌の編集長を経て独立。 もともと超・遅読家だったものの、ビジネスパーソンに人気のウェブ媒体「ライフハッカー[日本版]」で書評を担当することになったのをきっかけに、大量の本をすばやく読む方法を発見。土日祝日を除く毎日書き続けている同サイトの連載「印南敦史の毎日書評」は、2022年8月で11年目を迎える。 「東洋経済オンライン」「ニューズウィーク日本版」「サライ.jp」「マイナビニュース」などでも書評欄を担当し、年間700冊以上という読書量を誇る。2020年には、“日本で一番”を認定するサイト「日本一ネット」において「書評執筆本数日本一」に認定された。書評以外の記事も、「文春オンライン」「論座」「e-onkyo music」などに寄稿。 著書に『「書くのが苦手」な人のための文章術』(PHP研究所)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)、『読書する家族のつくりかた 親子で本好きになる25のゲームメソッド』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(以上、星海社新書)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『遅読家のための読書術』(PHP文庫)などのほか、音楽関連の書籍やエッセイなども多数。

作家・書評家。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年、東京都生まれ。広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、音楽雑誌の編集長を経て独立。 もともと超・遅読家だったものの、ビジネスパーソンに人気のウェブ媒体「ライフハッカー[日本版]」で書評を担当することになったのをきっかけに、大量の本をすばやく読む方法を発見。土日祝日を除く毎日書き続けている同サイトの連載「印南敦史の毎日書評」は、2022年8月で11年目を迎える。 「東洋経済オンライン」「ニューズウィーク日本版」「サライ.jp」「マイナビニュース」などでも書評欄を担当し、年間700冊以上という読書量を誇る。2020年には、“日本で一番”を認定するサイト「日本一ネット」において「書評執筆本数日本一」に認定された。書評以外の記事も、「文春オンライン」「論座」「e-onkyo music」などに寄稿。 著書に『「書くのが苦手」な人のための文章術』(PHP研究所)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)、『読書する家族のつくりかた 親子で本好きになる25のゲームメソッド』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(以上、星海社新書)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『遅読家のための読書術』(PHP文庫)などのほか、音楽関連の書籍やエッセイなども多数。

えんどう るりこ

遠藤 るりこ

ライター

ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe

ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe