子どもが自分で調べ、学ぶために大切な「楽しさ」

【スペシャル対談】ゆる言語学ラジオ✕川上徹也(後編)

川上さん:
いやでもね、そういうバカバカしい知識って、けっこう大事だと思うんですよ。

テラバイトの話に比べるとバカバカしさは弱まるけど、じつは僕、大学のときは霊長類学をずっと勉強していたんです。それで、「ニホンザルの社会構造の研究」で、ずっとフィールドワークに出たりしていたんですね。

べつに、その経験がなにかコピーライターの仕事に役立ったとか、そういうことはないです。ただ、なにか特定のことに興味を持って、自分で情報を集めたり、調べたり、まとめたりする力って、これから大事になるんじゃないかなっていう気はしてます。

水野さん:
まあたしかに、僕が小学生のときに夢中になって練習してた難しい漢字も、だからなにかの役に立ったってわけじゃないですね。

ただ、それが原体験になって、言語学を研究するようになって、出版社で働くようになって、言語学をテーマにしたYouTubeをやり始めた……って意味では、まったく無意味でもないです。

川上さん(左)と春仲さん(右)
(撮影:講談社児童図書出版部)

堀元さん:
その流れでいうとね、やっぱり「楽しい」って大事な要素ですよ。

川上さんのこの『もえとかえる ことばのふしぎ大冒険』でも、それまではカエルに日本語のふしぎを教えてもらっているだけだった主人公の女の子・もえちゃんが、最後は自分の力で「ひらがな・カタカナ」の由来を調べることに挑戦してるじゃないですか。

これ、いきなり「ひらがな、カタカナの由来を調べなさい」ってカエルからいわれたら、絶対イヤだと思うんですね。

でも、カエルから日本語のいろいろなおもしろいふしぎを教えてもらって、「日本語っておもしろいかも」って徐々にもえちゃんも考えはじめるじゃないですか。それで最後、自発的に「自分で調べてみる」っていうくだりになるのが、物語として素晴らしいなと。

で、この、もえちゃんが自分で調べるために何十冊も本を調べて読んでいる描写があるんですけど、これってふだん、「ゆる言語学ラジオ」で水野がやってることと同じなんですよね。

『もえとかえる ことばのふしぎ大冒険』より

水野さん:
オノマトペについて話すために、そのテーマの本を30冊くらい読むとかね。

堀元さん:
そうそう。好きなことだったら楽しくしゃべるし、そのためだったら本を30冊読んだりするのも苦じゃなくなる。

「ゆる○○ラジオ」みたいな感じで、身内同士でもいいんですけど、なにか自分の興味のあることについてゆるく発表する場をつくるっていうのは、大事なんじゃないかなあって思っていますね。

次のページへ 子どもが夢中になっていることを潰さない重要性
24 件