前頭葉の発達ピークは10代! 脳科学的に子どもの「ならいごと」を検証
発達のピークは部分で違う! 「幼児期の脳」基礎知識〔細田千尋先生インタビュー 第1回〕
2021.06.10
医学博士・認知科学者・脳科学者:細田 千尋
私自身、3人の小さな子を持つ母親です。毎日、仕事と育児に大忙しの日々を送っています。
昨今の教育事情も知ってはいますが、“科学的に見るとおかしな話”が世の中にはたくさん流布していると感じています。
例えば、“育脳”。幼い頃から右脳を鍛えてクリエイティブにしなければならない、という話を聞いたことがある方もいらっしゃると思いますが、右脳を育てるというのは科学的に言えばあり得ません。
そしてクリエイティビティを高めるならいごとの確立したエビデンスベースがあるかと言えば、恐らくありません。というのも、脳は発達の黄金期のような時期が場所によって違うんです。
まず、生まれてすぐから発達するのが、物を見ることを司っている『後頭葉』です。そして音を聞く能力に関わる『側頭葉』が発達し、周りからかけられる様々な言葉を理解し始めます。
最後に、脳の前の方にある『前頭葉』が発達していきます。ここは人とのコミュニケーション能力や、社会性、理性などを司るところ。このように、脳は基本的に後ろから前へと発達していくため、『前頭葉』の発達ピークが一番ゆっくり、というわけなのです。
ちなみに年齢で言うと、『後頭葉』が0歳~4歳くらいに発達のピークを迎え、体の感覚を認識したり、いろいろな複雑な動作などをする『頭頂葉』のあたりは3歳~5歳くらいにかけてピークがくると言われています。
多くのお父さん、お母さんは、知的な能力の高い子どもを育てたい、という希望があると思いますが、それに関連する場所である『前頭葉』は、10代から思春期まで発達し続けるのです。
一般的に「体操やピアノなどの運動学習は早期にやらせた方がいい」と言ったりしますが、これは、運動を担う運動野を含む『頭頂葉』が3歳~5歳くらいに発達のピークとなることが根拠と考えられます。
確かに、この時期にピアノや体操などを正しく教わると技術的な習得のしやすさはもちろんあると思います。ただ、知能の発達に結びつくという科学的エビデンスは今のところありません。