とびひ・水イボ・手足口病 子どもの皮膚感染症が夏に増える理由を専門医が解説
皮膚科医・野崎誠先生に聞く「夏の肌トラブル対処法」 #2 とびひ・水イボ・イボ・手足口病・アトピー性皮膚炎
2023.07.17
皮膚科医:野崎 誠
「手足口病」は便の中にウイルスが排泄され続けるので要注意
手足口病も、ウイルス性の感染症の一種です。咳やくしゃみによって感染する飛沫感染や接触感染のほか、便の中に排泄されたウイルスによっても感染します。
【症状】
共通した症状として多いのは、手のひらや足の裏、口の中にポツポツした水ぶくれのようなものができることです。数ミリ程度の血豆のようなポツポツで、中には血ではなくて白っぽい膿が溜まっています。
症状には個人差がありますが、強い痛みを感じる人もいます。手足口病という名前ですが、全身の病気なのでひじやひざ、お尻などにもできます。
手足口病になっても、子どもは比較的元気なことが多いでしょう。しかし、口の中に水ぶくれができると痛くて食事や水分が取れなくなることがあります。また、ウイルスの種類によっては爪がポロポロと剝がれ落ちることがありますが、時間とともに新しい爪が生えてもとの形に戻っていくのであまり心配はいりません。
【治療】
手足口病には特効薬がないため、特別な治療法はありません。経過観察を行いながら、その都度、症状に対処していくことになります。なお、皮膚の症状が治まってからも、しばらくの間は便からウイルスが排出され続けるため注意が必要です。オムツ替えで便が手につくことがきっかけで感染することもあるため、親御さんはしっかり手洗いをすることが重要です。
「アトピー性皮膚炎」は夏場に汗をかいて湿疹が悪化することも
アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う湿疹が良くなったり悪くなったりを繰り返す皮膚の病気のひとつです。
年齢にもよりますが、アトピー性皮膚炎も汗をかく夏場に悪化しやすい傾向があります。皮膚自体が未熟な未就学児の場合、乾燥しやすい冬場に悪化する傾向がありますが、小学生くらいになると夏場に汗をかいて湿疹ができて、アトピー性皮膚炎が悪化する子どもが多い傾向があります。
【症状】
アトピー性皮膚炎の症状は、人によってさまざまです。カサカサして乾燥しているタイプから、ジュクジュクした汁が出るタイプ、皮膚が乾燥して硬くなるタイプまで多くの症状や段階があります。
【治療】
治療法としては、ステロイドや抗ヒスタミン剤などを中心とする薬物治療、清潔に保つためのスキンケア、ストレスや食物アレルギーなどの悪化要因を取り除くことなどが基本になります。スキンケアでは「洗う」、「流す」、「保湿する」の基本の3ステップを大切にして、汗をきれいに洗い流すことを意識しましょう。
他の皮膚トラブルと同じで、エアコンなどを使って気温・湿度をコントロールすることと、通気性の良い衣服を身につけることも効果的です。
なお、アトピー性皮膚炎で、目をよくかいている子どもは、眼科を受診しておくと安心です。かゆみから目の回りをこすることで、白内障や緑内障、網膜剝離などを起こしてしまうことがあるからです。年に1回は、眼科を受診するようにしましょう。
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手足口病は、回復した後も、便にウイルスが排出され続けるとは驚きでした。
アトピー性皮膚炎は、スキンケアと並行して環境のコントロール、そして眼科の受診も治療のスケジュールに入れておきましょう。
夏に起こりやすい子どもの皮膚トラブル。次回3回目では、「じんましん」、「オムツかぶれ」、「あせも」、「虫刺され」について、引き続き、野崎先生に解説していただきます。
取材・文/横井かずえ
撮影/土居麻紀子(野崎誠先生)
横井 かずえ
医薬専門新聞『薬事日報社』で記者として13年間、医療現場や厚生労働省、日本医師会などを取材して歩く。2013年に独立。 現在は、フリーランスの医療ライターとして医師・看護師向け雑誌やウェブサイトから、一般向け健康記事まで、幅広く執筆。取材してきた医師、看護師、薬剤師は500人以上に上る。 共著:『在宅死のすすめ方 完全版 終末期医療の専門家22人に聞いてわかった痛くない、後悔しない最期』(世界文化社) URL: https://iryowriter.com/ Twitter:@yokoik2
医薬専門新聞『薬事日報社』で記者として13年間、医療現場や厚生労働省、日本医師会などを取材して歩く。2013年に独立。 現在は、フリーランスの医療ライターとして医師・看護師向け雑誌やウェブサイトから、一般向け健康記事まで、幅広く執筆。取材してきた医師、看護師、薬剤師は500人以上に上る。 共著:『在宅死のすすめ方 完全版 終末期医療の専門家22人に聞いてわかった痛くない、後悔しない最期』(世界文化社) URL: https://iryowriter.com/ Twitter:@yokoik2
野崎 誠
山形大学医学部卒業、国立成育医療研究センター皮膚科(小児皮膚科)などを経て2013年、「小児皮膚科」・「一般皮膚科」を専門とする『わかば皮膚科クリニック』を開院。 一般向け、教育機関向け講演活動などにも力を入れており、乳幼児から思春期・成人の皮膚の病気に関する正しい情報の啓発活動に努めている。 わかば皮膚科クリニック http://www.wakaba-hifuka.com/
山形大学医学部卒業、国立成育医療研究センター皮膚科(小児皮膚科)などを経て2013年、「小児皮膚科」・「一般皮膚科」を専門とする『わかば皮膚科クリニック』を開院。 一般向け、教育機関向け講演活動などにも力を入れており、乳幼児から思春期・成人の皮膚の病気に関する正しい情報の啓発活動に努めている。 わかば皮膚科クリニック http://www.wakaba-hifuka.com/