とびひ・水イボ・手足口病 子どもの皮膚感染症が夏に増える理由を専門医が解説
皮膚科医・野崎誠先生に聞く「夏の肌トラブル対処法」 #2 とびひ・水イボ・イボ・手足口病・アトピー性皮膚炎
2023.07.17
皮膚科医:野崎 誠
夏場に増える子どもの皮膚トラブル。2回目では、特に悪化しやすい「とびひ」「水イボ」「イボ」「手足口病」「アトピー性皮膚炎」について、主な症状と対処法を『わかばひふ科クリニック』院長・野崎誠先生に解説していただきました。
(全3回の2回目)
野崎誠(のざき・まこと)
山形大学医学部卒業、国立成育医療研究センター皮膚科(小児皮膚科)などを経て2013年、「小児皮膚科」「一般皮膚科」を専門とする『わかば皮膚科クリニック』を開院。
一般向け、教育機関向け講演活動などにも力を入れており、乳幼児から思春期・成人の皮膚の病気に関する正しい情報の啓発活動に努めている。
「とびひ」は非常に感染力が強い感染症の一種
「とびひ」とは、皮膚の表面に雑菌が繁殖して起こる感染症です。火事で火がどんどん燃え広がる様子に似ていることから、「とびひ」と呼ばれています。
原因となる細菌は、黄色ブドウ球菌や溶血性連鎖球菌(溶連菌)などで、その名のとおり、非常に感染力が強く、細菌を触った手で別の場所に触れると、数時間で触った場所にもとびひがうつります。
とびひは年齢関係なく、どの年代の子どもにも起こります。あせもや虫刺され、湿疹を引っ搔いてまうことで、二次感染としても起こることがあります。
【症状】
とびひの症状は、主に水ぶくれから始まります。皮膚の表面に膿を持った水ぶくれが何個もでき、その後、水ぶくれが破れると中からグシュグシュした膿が出てきます。この膿が皮膚の他の場所に触れることで、次々と別の場所にうつっていきます。
感染力が高いため、1日に何個も水ぶくれができて、中から膿が出てくるのを見つけたときは、すぐに病院を受診して治療を開始しましょう。
【治療】
とびひは感染症なので、起きてしまった場合は抗生剤の塗り薬や、飲み薬で治療するのが基本です。また、皮膚の表面に菌が増えて起こるため、とにかく洗って流すことも有効です。皮膚の表面を常に清潔な状態に保ちましょう。
エアコンを上手に使って室温をコントロールすることも重要です。汗をかいてしまうと汗をつたって細菌が広がっていくので、エアコンを使ってしっかり温度・湿度をコントロールしましょう。
「水イボ」は幼児に多くみられるウイルス性の感染症
水イボは、保育園・幼稚園児くらいの年齢に多くみられるウイルス性の感染症です。水イボは自然に治るため、放置して基本的に問題はありません。
ただし、タオルやビート板などを介してうつることがあるため、水イボが出ている間はプールに入ることができません。そのため、健康上の問題というよりは、プールに入れないなど社会活動上の問題から、治療することがあります。
【症状】
皮膚に数ミリ程度のポツポツとした丸いイボができます。痛みもかゆみもなく、放っておいても数ヵ月ほどで自然に治っていきます。
【治療】
治療法はシンプルで、専用の器具やピンセットなどで、イボをつまんで取り除きます。取り除くときには、痛みを感じることがあるため、痛みを和らげるために麻酔入りのテープなどを使うこともあります。
1つのイボを取っても、次々と他のイボが出てくることがよくあります。そのため、すべてのイボを取り終わるためには、根気よく治療を続けることが必要です。
魚の目やタコと間違われやすい「イボ」
イボも、ウイルス感染によって起こる病気です。目に見えないほどの小さな傷から皮膚の中にウイルスが入り込み、それが増殖するとイボになります。
サッカーやバスケットボール、格闘技、水泳など、激しく体重移動するスポーツや裸足になる機会が多いスポーツをしている子どもによく起こります。また、海やプールなどで裸足になる機会が多い夏場は、イボが増える傾向があります。
【症状】
皮膚が硬く盛り上がって、小さな出来物のようなイボが現れます。特に足の裏にできることが多いため、魚の目やタコなどと間違われることがよくあります。
しかし、幼稚園・保育園児から小学生くらいの年齢で、足の裏に小さなポコッとした出来物ができたら、それは多くの場合、イボと考えたほうがいいでしょう。
【治療】
魚の目やタコとは異なり、イボはウイルス性のものなので放っておけばどんどん大きくなり、家族など他人にもうつります。そのため、できるだけ早い段階で治療したほうがいいでしょう。
イボの治療には、液体窒素を使ってイボを凍らせる凍結療法や外用薬による治療、ヨクイニンと呼ばれる生薬の内服治療などさまざまな方法があります。イボは再発しやすいため、根気よく治療することが大切です。