“発達特性のある新1年生“のトラブル 親が学校と協力する方法を専門家が解説

発達障害の専門家が語る「発達特性のある子どもの小1プロブレム」#3~学校との協力体制の作り方~

一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN代表・言語聴覚士・社会福祉士:原 哲也

【ステップ①】先生との「作戦会議」

では、先生とより良い話し合いをするためにはどうしたらよいでしょうか。

先生方との関係において大事なのは、先生をプロとして尊重すること、そしてときに感謝を伝えることだと私は思っています。

子どもの問題解決のために配慮をお願いするとき、療育の先生の見解を伝えるとき、「学校の先生を教育のプロとして尊重する」意識を持っていることは大切だと思います。

担任の先生と面談の際、場合によっては、「特別支援教育コーディネーター」や校長先生などにも同席してもらうことで、建設的な「作戦会議」ができることがあります。

特別支援教育コーディネーターとは、保護者や先生、また医療機関などの連絡調整を行ったり、保護者や関係機関に対する学校の窓口としての役割を担う人で、多くの場合、その学校の先生が兼任しています。

【ステップ②】外部の専門家に支援してもらえないか依頼する

学校内の対応では状況が改善しないときは、外部の関連機関を利用するのも一つの方法です。学校の状況を専門的立場から見てもらう仕組みが、2つあります。

・巡回相談員

一つは、巡回相談員による支援です。巡回相談員は、その学校の教員に対し、発達障害を含む障害のある児童への指導内容や方法について助言をします。

臨床発達心理士、特別支援教育士、学校心理士、公認心理師などの資格を持つ「心のケア」のプロや、言語聴覚士や作業療法士など有資格者が担うことが多く、実際、私も巡回相談員として学校を訪問しています。

学校から教育委員会や教育センターに依頼し、外部の支援の必要性があると判断されたら初めて巡回相談員が派遣されます。

保護者がお願いしたいと思ったら、まずは窓口となる前述の「特別支援教育コーディネーター」にお願いします。「巡回相談員というシステムがあるようですが、こうした心配事があるので依頼していただきたいです」というようにお願いします。すると、外部の医療機関、あるいは必要に応じて我々のような療育の専門職を呼ぶことができます。

・保育所等訪問支援

もう一つは、保育所等訪問支援です。これは保護者が行政に依頼し、子どもが集団生活を営む施設へ支援員が訪問する制度で、小学校も対象です。保護者は所得に応じて、利用料を払います。

支援員から子どもと先生に助言をしてもらうことで、学校の状況を客観的に捉え、サポートしてもらうことが可能です。

段取りとしては、保護者がお住まいの市区町村の窓口に行き、「受給者証」を発行してもらったうえで申請します。申請者は学校でなく保護者という点が、巡回相談員とは異なります。

いずれの手段も、保護者が特別支援教育コーディネーターなり行政なりに自分の名前で依頼し、承諾されれば派遣してもらうことになります。そのため、中には、学校に嫌がられないかとためらう保護者もいるかもしれません。

ですが、いずれも、子どもによりよい関わり方をしてもらうための一つの手段です。子どもの充実した実りある学校生活を願う親の思いを伝え、攻撃やあらさがしをするつもりではないことをわかってもらえるようお話しされてはどうでしょうか。

学校の先生方もよりよい教育をしたいと考えています。巡回相談員や訪問支援員によって、専門的、客観的立場から見てもらった結果、学校の体制をよりよくできるなら、それに越したことはないのではないでしょうか。

さらに、先生方にとってとても苦労している状況が、助言を受けたことで先生の子どもの見方が変わり、指導がスムーズになればそれは大きな負担軽減になるはずです。まさに「win・win」です。

実際、私自身が訪問支援員として学校へ訪問した際にも、状況が改善できたと喜んでいただけたことも多くあります。

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