子どもの「乗り物酔い」 酔いにくい体質や環境を作る予防法・対処法 専門医がわかりやすく解説

耳鼻咽喉科専門医・細野研二先生に聞く「子どもの乗り物酔い」 #3 ~予防法と対処法編~

ほその耳鼻咽喉科 院長:細野 研二

予防法③:酔い止めを飲む(乗車30分前)

直前にする予防法に「乗車30分くらい前に抗ヒスタミン薬などの酔い止めを飲む」があります。

「酔い止めには、市販薬と病院で処方される薬があります。どちらを使っていただいてもいいですが、処方薬は乗り物酔い(動揺病)を防ぐものが少ない。また、子ども用の薬がなく、体重に合わせて錠剤を半分に割るなどの対処が必要なので、ざらつきや苦味が出てしまいます。

一方、市販薬は数種類の薬を配合しているものがほとんどで、味や量が子ども用に調整されています。アメやチュアブルのように水がなくても飲めるタイプもあるので、年齢が低い子や錠剤が飲めない子には特に使いやすいと思います」
(細野先生)

酔い止め薬には、薬の効果に加え、飲んだことで安心感を得られる「プラセボ効果」もあると言います(2回目参照)。

細野先生の元には、学校行事などでバスに乗る前に相談に来る親子が多いと言います。Zoom取材にて。

予防法④:すわり方と車内環境の配慮(乗車中)

乗車中にできることの一つに、「自動車やバスの場合、揺れの少ない座席にすわる」があります。

「自動車の場合は助手席、バスは前方にすわるといいでしょう。助手席や前方の席は進行方向がよく見えるので、『今左に曲がろうとしているな』など、自動車やバスがどういう動きをするかの予測ができるからです。

ただし、助手席にすわるのは、シートベルトを正しく着用できる身長(※)の子どもに限ります」
(細野先生)

(※)JAFでは140cm以上を、国土交通省は150cm以上を推奨(JAFは今後、チャイルドシートの着用を150cm未満に引き上げ予定)

バスは車体が長いので、曲がる際の揺れが大きい後方席にすわると酔いやすくなるそうです。子どもが学校の校外学習などで大型バスに乗る際は、前の席に座れるように先生に相談してみるといいでしょう。

シートベルトを着用するのに身長が満たない場合など、必要に応じてチャイルドシートやジュニアシートを使うことは安全面において欠かせませんが、乗り物酔いの予防にもいいと言います。

「遠くの景色を見ると酔いにくくなるので、窓の外が見えづらいお子さんは目線を上げるという意味でもいいですね。また、頭や体が揺れると酔いやすくなるので、ジュニアシートやシートベルトで固定することも大切です」(細野先生)

「窓を開けて風通しをよくする」「悪臭・高温を避ける」など、車内環境への配慮も大事なポイントです。

「ストレスは、自律神経のバランスを乱してしまう要因の一つです。精神的なストレスもそうですが、『暑すぎる環境』『匂い』など外界からのストレスも関係あります。タバコやガソリンの匂いも乗り物酔いに影響します。

エアコンをつけて温度を下げたり、芳香剤を使って匂いを消したりするなどして、ストレス要因を減らしましょう」
(細野先生)

アロマオイルなど、本人が安心できる香りを持ち歩くのも効果的です。

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