子どもの「乗り物酔い」 酔いにくい体質や環境を作る予防法・対処法 専門医がわかりやすく解説

耳鼻咽喉科専門医・細野研二先生に聞く「子どもの乗り物酔い」 #3 ~予防法と対処法編~

ほその耳鼻咽喉科 院長:細野 研二

予防法⑤:慣れの促進(日常生活)

乗り物に乗る直前ではなく、長期的な視点でできることもあります。1つ目の方法が「酔いにくい体質を作ること」です。

「乗り物酔いは、『自分が今どういう状態で、どういう位置にいるか』を認識する『空間認知』の障害が原因だと考えられています。スポーツや遊びで動きや刺激を経験したり、乗り物に乗る機会が増えたりすることで情報の処理能力が成長し、空間認知機能を鍛えられることで、酔わない体になっていくと考えられていくでしょう。

具体的には、鉄棒やシーソーなどの公園の遊具を使っての遊びや前転・後転運動、ブランコ、水泳などの運動は平衡感覚を養うことに効果的です」
(細野先生)

さまざまな動きを経験しておくことで、乗り物に乗ったときに「この動きは体験したことがある!」と情報を処理しやすくなります。

2つ目は、「慣れの促進」です。どのようなアプローチをするのか細野先生に解説してもらいます。

「先に述べた予防策を行った上で、車に乗る練習を繰り返します。まずは自家用車に5分くらい乗るところから始めましょう。5分乗って大丈夫だったら、次は10分に延ばします。そうして少しずつ『酔わなかった! 大丈夫だった!』という成功体験を子どもに積み重ねてもらい、自信をつけてもらうのです」(細野先生)

この練習をする際、ママパパに気をつけてもらいたいことがあると細野先生。

「揺れや加速・減速は、乗り物酔いにつながりやすくなってしまいます。練習では、できるだけカーブの少ない道を選び、急ブレーキや急発進を避けた穏やかな運転を心がけてください」(細野先生)

それでも酔ってしまった場合の対策

細野先生に伝授してもらった対策をしても子どもが酔ってしまった場合、どうすればいいのでしょうか。

「さまざまなケースがあると思いますが、自家用車の場合、車を停められる状況なら停車してください。車外に出て軽く体操をしたらベルトや衣服をゆるめ、しばらく休息をとりましょう。

高速道路などですぐに外に出られないときは、ベルトや衣服をゆるめ、窓を開けて換気をします。景色を追うことがしんどい場合、目を閉じて外からの情報をシャットアウトしましょう。

さらに、座席で横になったほうがいいです。体を支える面積が増えて安定し、体勢を低くすることで横揺れを感じにくくなります。そのまま眠れたら、なおいいですね。

電車や新幹線なら、通路を歩いて気分を変えるのもいいですね。ミント系のアメやガムが食べられるなら、舐めたり、嚙んだりすることで乗り物酔いが改善される可能性があります」
(細野先生)

吐きそうなときは、我慢せず吐くことでムカつきが抑えられると言います。

「子どもがいつ吐いてもいいように、乗車前に吐ける準備をしておきましょう。中身が見えないエチケット袋やタオルなどを用意しておき、『いざとなったら、ここに吐いていいからね。酔い止めも飲んだし、タオルもあるから大丈夫だよ』と伝えておくと、子どもの安心感につながります」(細野先生)

乗り物に酔いにくくするための準備も大切ですが、酔ったときの対処法を押さえておくと、いざというときに慌てずに対処できます。

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4回目は、「コクリコ編集部員が実際にやってみた&試してみたい乗り物酔い対策」について伺います。

取材・文/畑 菜穂子

乗り物酔い連載は全3回。
1回目を読む。
2回目を読む。
4回目を読む。(公開時よりリンク有効)

24 件
ほその けんじ

細野 研二

Kenji Hosono
ほその耳鼻咽喉科 院長

ほその耳鼻咽喉科 院長。日本耳鼻咽喉科学会専門医。 奈良県立医科大学卒業。2021年よりほその耳鼻咽喉科を開院。2023年より医療法人華美会理事長も兼務。 日本耳鼻咽喉科学会認定 補聴器相談医、日本耳鼻咽喉科学会認定 騒音性難聴担当医、日本がん治療認定医機構 がん治療認定医、厚生労働省認定 補聴器適合判定医、身体障害者福祉法第15条指定医、難病指定医。 ほその耳鼻咽喉科 https://hosono-ent.com/

ほその耳鼻咽喉科 院長。日本耳鼻咽喉科学会専門医。 奈良県立医科大学卒業。2021年よりほその耳鼻咽喉科を開院。2023年より医療法人華美会理事長も兼務。 日本耳鼻咽喉科学会認定 補聴器相談医、日本耳鼻咽喉科学会認定 騒音性難聴担当医、日本がん治療認定医機構 がん治療認定医、厚生労働省認定 補聴器適合判定医、身体障害者福祉法第15条指定医、難病指定医。 ほその耳鼻咽喉科 https://hosono-ent.com/

はた なおこ

畑 菜穂子

ライター

1979年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーに。主にWEBメディアで活動中。子育て、性教育、グルメ、企業の採用案件などの取材・執筆を行う。多摩地域で、小学生の娘(2012年生まれ)、夫と暮らす。 Twitter @haricona

1979年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーに。主にWEBメディアで活動中。子育て、性教育、グルメ、企業の採用案件などの取材・執筆を行う。多摩地域で、小学生の娘(2012年生まれ)、夫と暮らす。 Twitter @haricona