子どもがひとりのときに被災! 【子どもの防災】対処法を防災士・どろだんご先生が解説

防災士・どろだんご先生に聞く、「子どもの防災」 前編 ~子どもがひとりで被災したときの対処法~

防災士・砂場研究家:どろだんご先生

災害時に家族が必ずしも一緒とは限りません。子どもがひとりのときに被災したら、どのように対応させればよいのでしょうか?  写真:maroke/イメージマート

近年、1年をとおしてして地震や台風など、さまざまな自然災害の回数が増えています。

災害が起こるタイミングは、家族が一緒のときとは限りません。子どもだけでの登下校中や、おともだちと遊んでいる最中に災害が発生したら、どう対処するように教えたらいいのでしょうか。

今回は、防災士の資格を持ち、子ども向けの防災セミナーなどを数多く行っているどろだんご先生に、子どもと一緒に考える防災・減災について教えてもらいました。

(全2回の前編。後編を読む

今回教えてくれたのは……

どろだんご先生
防災士・砂場研究家として活動中。2011年の東日本大震災時、災害救助で被災地に入り、災害に向けて各人が日頃から備えることの重要性を実感。防災士の資格を取得し、防災・減災に関するさまざまな活動を行っている。

登下校中に地震が起きたら?

──学校の登下校中、もしくは子どもが一人で外にいるときに地震が起きたら、子どもたちはどうすればよいでしょうか。

どろだんご先生:地震が発生すると、自動販売機や電柱、屋根瓦、窓ガラス、看板など倒れてくるもの、落ちてくるものがたくさんあります。こういった危険がある場所からはできるだけ距離を取って離れて、身を守りましょう。小学校の登下校中であれば、ランドセルで頭を守るといった工夫もできると思います。

また通学に、子ども一人で電車やバスを利用していることもあると思います。そういったときは周りで子どもを連れている大人を探し、「僕(私)、一人なんですけど、一緒にいてもらえませんか?」とお願いしてみましょう。「いいよ」と答えてもらえる可能性が高いです。災害時はひとりで行動しないことが大切です。

家族の顔写真を持ち歩こう

登下校中の被災に備えて準備しておきたいのが、家族全員の顔が分かる集合写真です。

子ども一人で避難所に行って「お父さんはどんな人?」「お母さんはどんな人?」と尋ねられた際、言葉では説明がうまくできなかったとしても、写真一枚1枚あれば一目瞭然。家族を探すためのとても有効な手段です。

ランドセルのポケットなど、普段は目立たない場所で構わないので、家族の写真を入れておくようにしましょう。

一人で家のなかに閉じ込められたとき

──家のなかで子どもが一人で閉じ込められてしまったときの対処法を教えてください。

どろだんご先生:一人の不安から、声を上げて助けを求めがちなのですが、子どもの場合はとくに体力に限界があります。大きな声を上げて「助けてください!」と言い続けると、体力を消耗してしまいます。

体力はいざというときのために取っておきたいので、できるだけ自分の声を使わずに助けを求めることが大事です。

そのためのアイテムとしておすすめなのが、防災ホイッスルや防犯ブザーです。防犯ブザーは普段からランドセルに付けているものでOK。電池があるかぎり鳴らせます。

人間の耳にいちばん届きやすい3150Hzの音が出る、「防災防犯ホイッスル」(サイコール)。少しの息でもしっかりハッキリ音が響くので、小さな子どもでも使いやすい。

どろだんご先生:防犯ホイッスルは、“小さな力で吹いて、遠くまで耳に届きやすい音”が出るものが多く販売されています。これもランドセルに付けておくと安心ですね。

そして付ける前に一度、実際に吹いてみましょう。どんな音がして、どれくらい遠くまで聞こえるのか、家族で試してみてください。そういった“実践”の経験が、災害時、とても役に立ちます。

固いものを叩く 懐中電灯を点滅させる

どろだんご先生:ホイッスルなどがない場合は、お鍋の底を棒など固いもので叩きましょう。これもわりと高い音が出て、遠くまで響きやすいです。

また日中であれば、鏡で太陽光を反射させ、チラチラと光らせるという方法も人目につきやすいです。

夜に助けを求めたいときは、懐中電灯を点滅させると、生存の知らせになります。

コンパクトサイズの懐中電灯。小さな力でスイッチをON、OFFできるものならば、子どもも無理なく使える。

どろだんご先生:それでも助けが来ない場合、また建物の上階にいる場合は、窓が開くなら「○号室です。助けてください」とメモした紙を窓から外に落としましょう。側を通った人に気づいてもらい、救助がくる可能性が上がります。

さらに反応がないようであれば、「○○マンションの○号室にいます。助けてほしいです」と書いたメモを紙飛行機にして飛ばせば、より遠くの人に届く可能性が出てきます。

これは子どもだけでなく、大人にも応用できる知識なので、保護者の方はぜひ覚えておいてくださいね。

入浴中に地震が起きたとき

──小学生になると、一人でお風呂に入るようになります。子どもが一人で入浴中に地震が来たときは?

どろだんご先生:昔は「建物が歪んでドアや扉が開かなくなる恐れがあるから、なるべく早く開けるように」と言われていました。ですが、お風呂場は洗い場が濡れていて、滑って転倒したり、頭を打ったりするリスクが高いので、慌てて浴室から出ないのがいちばんです。

バスタブのふちをしっかりつかんで、揺れがおさまるのを待ちましょう。手近なところに洗面器があったら、頭にかぶるといいですね。浴室を出るのは、揺れがおさまってからです。

バスタブの残り湯は、備蓄用としてそのまま残しておきます。ただこのお湯を、トイレを流すのに使ってはNG! 地震では、下水の配管が壊れるケースが非常に多く、その状況で残り湯を使ってトイレを流すと破裂した下水管から漏水、復旧にさらに時間がかかる原因となります。

「残り湯は備蓄用ではあるが、トイレの排水には使わない」が、現在のスタンダードです。下水管が破裂していないことを確認してからでなければ、水を流せないということを覚えておきましょう。

家族バラバラで被災したとき

──家族の居場所がバラバラというタイミングで、被災するケースもありますよね。

どろだんご先生:普段から、有事の際はどこに集合するかを、家族であらかじめ決めておきましょう。居住地域で指定されている小学校や中学校などの避難所があるので、そういったところを集合場所にするのが分かりやすく、安心です。

家族と連絡を取るにあたっては、スマートフォンの電話回線が繫がらない可能性も高いので、NTT東日本の災害用伝言ダイヤル(171)を活用したいところですが、日頃使わない番号だけに思い出せないというお子さんも多いでしょう。

そういった事態に向けて備えておくといいのが「三角連絡法」。居住地域が被災して家族間の連絡が取りづらい場合、祖父母やいとこなど遠方の親族を緊急連絡先にして、彼らに「自分は元気です○○にいます」と伝言する方法です。

お子さんには、家族の連絡先と共に、遠方親族の連絡先もメモで持たせておくといいと思います。

噂話に振り回されない

──災害に遭った際、ほかに気を付けるべきことはあるでしょうか?

どろだんご先生:災害が起きると、さまざまな情報が飛び交います。その中には、出どころが怪しい情報も……。

家族でそういった話をした際に、「それは、デマなんじゃないの?」と、家族内で声をかけあえるといいですよね。噂話に振り回されないよう、家族で気を付けてもらえたらと思います。

また普段から近所の人と挨拶を交わし、顔見知りになっておくことも大事かなと思います。災害の際、「あのお宅には小さなお子さんがいたな」と思い出してもらうことで、助けが来るきっかけになりますし、近所に高齢者がいた場合は声がけをし、助け合って避難所まで移動するといった防災効果もあります。

災害時はこうしたかたちでの助け合いもとても大事です。

───◆──◆───

子どもがひとりで被災したときの対処法を、どろだん先生に教えてもらいました。普段から家族内で被災したときの集合場所を確認し合う、ホイッスルの吹き方、紙飛行機の折り方は何度か試しておくといいですね。

次回後編では、子どものための防災リュックの中身について、引き続きどろだんご先生に教えてもらいます。

撮影/安田光優
取材・文/木下千寿

「子どもの防災」後編を読む

どろだんごせんせい

どろだんご先生

Drodangosensei
防災士・砂場研究家

2011年の東日本大震災時、災害救助で被災地に入り、災害に向けて各人が日頃から備えることの重要性を実感。防災士の資格を取得し、防災・減災に関するさまざまな活動を行っている。 また、世界2700ヵ所以上の砂場を巡り、砂場を安心して誰もが遊べる場所にするためのアドバイスやプロデュースを行いながら、砂の粒子、設計、水場、衛生管理、清掃方法など、さまざまな角度から砂場の研究をする砂場研究家。 土や砂にふれる楽しさをもっと知ってもらいたいという思いから、「ピカピカのどろだんごづくり」のワークショップを全国で開催中。 これまでのワークショップへの参加人数は子どもから大人まで、合わせて3000人超。子どもたちから呼ばれているあだ名は「ドロシー」。 https://sunaba-inc.com/

  • facebook
  • x
  • Instagram
  • youtube
  • tiktok

2011年の東日本大震災時、災害救助で被災地に入り、災害に向けて各人が日頃から備えることの重要性を実感。防災士の資格を取得し、防災・減災に関するさまざまな活動を行っている。 また、世界2700ヵ所以上の砂場を巡り、砂場を安心して誰もが遊べる場所にするためのアドバイスやプロデュースを行いながら、砂の粒子、設計、水場、衛生管理、清掃方法など、さまざまな角度から砂場の研究をする砂場研究家。 土や砂にふれる楽しさをもっと知ってもらいたいという思いから、「ピカピカのどろだんごづくり」のワークショップを全国で開催中。 これまでのワークショップへの参加人数は子どもから大人まで、合わせて3000人超。子どもたちから呼ばれているあだ名は「ドロシー」。 https://sunaba-inc.com/

きのした ちず

木下 千寿

ライター

福岡県出身。大学卒業後、情報誌の編集アシスタントを経てフリーとなる。各種インタビューを中心に、ドラマや映画、舞台などのエンターテイメント、ライフスタイルをテーマに広く執筆。趣味は舞台鑑賞。

福岡県出身。大学卒業後、情報誌の編集アシスタントを経てフリーとなる。各種インタビューを中心に、ドラマや映画、舞台などのエンターテイメント、ライフスタイルをテーマに広く執筆。趣味は舞台鑑賞。