
親が「子どもに説明」できる 小泉悠氏の「わかりやすい」解説 ウクライナ戦争と多極化する世界とは
東京大学准教授・小泉悠先生に聞く、現代の戦争と国際社会のリアル #2 (2/3) 1ページ目に戻る
2026.03.29
東京大学准教授:小泉 悠
「審判」のいない世界で始まった、終わりのない綱引き
──最近は、ニュースで「グローバルサウス」や「非西側」という言葉をよく耳にします。なんだか世界がバラバラに動いていて、以前よりも複雑になっているように思うのですが、今の状況を子どもたちに分かりやすく例えるなら、「みんなが好きな方向にロープを引っ張っている『バラバラな綱引き』になっている」が適しているかなと思うのですが。
小泉悠先生(以下、小泉先生):今の状況を「連鎖型危機」と呼ぶ専門家もいます。かつての冷戦時代は、アメリカとソ連という二つの大きな力が世界を二分し、お互いに睨み合うことで逆に安定を保っていた側面がありました。
しかし今はおっしゃるように、みんなが好きな方向にロープを引っ張る「変な綱引き」の状態、つまり多極化が進んでいます。
アメリカは「世界の警察官」を続ける余裕がなくなり、その隙を突いてロシアが力ずくで現状を変えようとし、中国やインド、そしてグローバルサウスと呼ばれる国々は自国の利益を最優先に動いています。
彼らがどちらの陣営にもつかないのは、西側の掲げる「民主主義を守ろう」という理想よりも、「明日のパンをどう確保するか」「安価なエネルギーをどう確保するか」のほうが圧倒的に切実だからです。
グローバルサウスがロシアを非難しきれない切実な理由
小泉先生:例えば、グローバルサウスの代表格であるインドは、米国、ロシア、中国という大国の間で絶妙なバランスを取る「トライアングル」の中心にいます。ロシアが経済制裁を受けて安く売らざるを得なくなった石油や武器を買い続ける一方で、民主主義陣営として米国とも繫がっている。
彼らにとっての最優先事項は「食えないインド」を脱し、自国の経済を回すことです。ロシアの侵略を批判するよりも、自国の肥料や食糧、エネルギーの安定供給を確保することのほうが、数億人の国民の命を預かる政府にとっては「正解」になってしまうんです。
小泉先生:そして、こうした「バラバラな世界」では、あちこちで小さな火が噴きやすくなります。ロシアが北朝鮮から砲弾を買い、イランのドローンを使ってウクライナを攻撃する。それに対してアメリカが支援を絞れば、また別の場所で均衡が崩れる。誰もが自分の利益のためにロープを引くため、綱引きは終わることなく連鎖してしまうのです。
大国同士が直接ぶつかる全面戦争は何としても避けようという「抑制」は働いていますが、非常に危うい世界の中に私たちは立っていると言えます。
































