子どもの思春期「成長ホルモン」VS.ママの更年期「女性ホルモン」 ホルモン難関期に「しておくべきこと・いけないこと 」 

パパママの更年期#2 ~ママの更年期・解決と治療編~

更年期トータルケアインストラクター:永田 京子

あらゆる不調が増えるママの更年期、子育てとの折り合いの付け方を更年期トータルケアインストラクターの永田京子氏に教わりました。  写真:maruco/イメージマート

幅広い更年期サポート活動を続ける、更年期トータルケアインストラクターの永田京子さん。2014年からの10年にわたる活動で、さまざまな更年期の女性と関わってきました。

晩婚・高齢出産化が進むなか、「自身の更年期と、子どもの思春期・反抗期が重なってしまってどうしようもない」と悩む女性たちも。子どもは成長ホルモン、母親は女性ホルモンと、互いのホルモンが急激に変化する時期、心が不安定な母子がぶつからずに過ごすにはどうしたら良いのでしょう。

また、たくさんの失敗や成功をもとにした、更年期に「やっておくこと」、「してはいけないこと」も指南。更年期障害の治療法と合わせて、お話を伺います。

※2回目/全4回(#1を読む

●PROFILE 永田京子(ながた・きょうこ)
更年期トータルケアインストラクター。更年期を迎える女性の健康サポートを目的とした団体「ちぇぶら」を設立。1000名を超える女性たちの調査協力を経て“更年期対策メソッド”を研究・開発・普及に務める。国内外で講演を行い、述べ5万人が受講している。

間違いやすい病気と更年期の治療法

さまざまな不調を感じる更年期には、間違いやすい病気があります。

「太りやすい、疲れやすい、動悸がするなどの症状は、この時期の女性に多い甲状腺の疾患と症状が似ています。どこか普段と違うなと思ったら、『更年期だから』と早合点せず、まずは婦人科にかかることをお勧めします」(永田さん)

更年期は月経周期も変わることが多く、なにか他の病気による不正出血を見逃しているケースも。

「個人差はありますが、閉経が近づくにつれて月経周期は短くなったり、長くなったりと乱れてきます。出血量が不安定になったときも、そのままにしておかず一度婦人科で診てもらうと安心です」(永田さん)

身体の変化や不調を感じたときには、診察によって病気の可能性をつぶしていくことで、「原因が更年期だったら、更年期としての付き合い方ができる」と永田さんは続けます。

「更年期の症状は千差万別で、200~300種類あるとも言われています。ホットフラッシュといった有名な症状だけでなく、頭痛や肩こり、目の乾き、うつ気分などさまざまあります。

もし、40歳を超えていて、なにか複数の症状が出ている場合は、それぞれの専門の診療科だけでなく婦人科受診を視野に入れてみると、医療機関の受診にかかる遠回りを減らせることがあります」(永田さん)

実際に婦人科で“更年期障害”と診断された場合には、大きく分けて2つの治療法があります。

「まずは、HRTと呼ばれるホルモンを補充する治療法があります。塗り薬やシール、飲み薬などで、女性ホルモンを補充する治療で、欧米ではスタンダードです。

一昔前は、体内に女性ホルモンを投与するなんて、自然に反していてよくないのじゃないか、なんて言われていましたが、今では徐々に浸透してきたように感じます。

また、更年期の諸症状に効く漢方薬もあります。漢方薬は自分の体質に合わせて最適なものを選ぶのがコツ。『更年期の友人が勧めてたから』などでなく、漢方薬を扱っている専門の医療機関で、自分に合ったものを処方してもらうのがおすすめです」(永田さん)

何より、「しんどい症状は、我慢するよりもまず受診してほしい」と永田さん。

「不調が更年期障害によるものなら適切なケアがあるし、違う病気だとしたら早期に発見して治療することができます。不調の原因がわかることで一歩前進できますよね」(永田さん)

子育て難関期と更年期の兼ね合い

永田さんのもとへ訪れる女性たちの中には、自身の更年期と、子どもの思春期・反抗期が重なるといったケースもあります。

「思春期と更年期で、ホルモンが不安定な人間同士が一つ屋根の下にいたら、問題が起こらないわけがないですよね。娘と取っ組み合いのケンカになった、会話ができなくなったなど、子どもとの付き合い方が難しくなることがあります」(永田さん)

まずは、「ホルモンの変化や身体の成長について、あらかじめ家族で話し合っておくことができれば良いですね」と永田さん。

これから起こるお互いの心と身体の変化について、問題が起こる前に情報を共有することができれば、事態の悪化は避けられそうです。

「更年期vs.思春期で、家族間では解決できないことが出てきたら、専門家に相談する方法もあります。子どもを取り巻く相談機関はたくさんありますから、第三者の意見を仰いでもいいのではと思います。

あと、親としてできることは『過干渉になりすぎない』ことですかね。思春期の子どもに言いたいことは山ほどあるでしょうが、不機嫌を真正面から受け止めていたら、こちらの身ももたない。

子どもには『必要なときには、いつでも力を貸すからね』と一言伝え、一歩引いて見守るくらいでちょうどいいのかなと思います。何より、母親である自分自身がご機嫌でいることは、家族にとっても大事なことです」(永田さん)

しておくべきこと・やってはいけないこと

更年期を迎える女性たちに、永田さんは「しておくべきこと」と「やってはいけないこと」をこう説きます。

「更年期は、朝起きるまでその日の体調や気分がわからないのも辛いところ。良いとき、悪いときがランダムに訪れるので、良いときにしておくべきこと、悪いときにしてはいけないことを知っておいてほしいと伝えています」(永田さん)

体調が良いときにしておくのは、「好きなコト・モノのリストを作る」こと。

「本当に体調が悪くてしんどいときは、息をすることも精一杯で、自分の好きなことが一切思い浮かばなくなるんです。

こんな曲を聴けば気分が上がる、カフェでコーヒーを飲むとリラックスできる、など、自分の機嫌をどう取っていたのかを改めて確認して書き出して、見えるところに貼っておくといいでしょう。それが目に入って、何か一つでもやれることがあるとしたら、状況は良くなるはずです」(永田さん)

何もかもが嫌になって、「これから自分はもう何もできないのでは」、「永遠に具合が悪いままなんじゃないか」なんて気持ちに陥るのが更年期。

「大切な決断は、体調がいいときにすること! これは皆さんに強く伝えていることです。更年期には必ず終わりがあります。更年期による症状で、このままずっと具合が悪いなんてことはないですから。気分が落ち込むと、ついネガティブな決断をしてしまいがちなので要注意です!」(永田さん)

霧が晴れた次は黄金期が訪れる!

そして、永田さんが必ず伝えていることがあります。

「更年期を過ぎたら、“黄金期”が訪れます。女性ホルモンの不安定さから解放され、男性ホルモンが少し優位になるため心も体もエネルギーに満ちてきます。多くの方が『霧が晴れたように体調が良くなった』、『具合がいつも悪く、あんなに落ち込んでいたのが噓のよう』と、明るい顔をされて黄金期を満喫されていますよ」(永田さん)

女性の更年期には、症状の程度の差があれど、必ず終わりがあります。

「不安と不調の渦中にいると『私の人生、もう来世にしか期待が持てないわ……』なんて、つい考えてしまいますが、必ず『いつの間にか悩みも不調もなくなった』と晴れやかなときが来ます。更年期のその先の黄金期を考えると、人生が楽しみになりませんか。私自身もとっても楽しみにしています!」(永田さん)

更年期は正しく知れば怖くない。ちぇぶらの活動・講演は全国で広がっています。  写真提供:永田京子さん

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次回は、近年話題になるようになった男性更年期について。女性とはメカニズムも症状も全く異なる男性更年期について、正しい知識と対策を知っていきましょう。引き続き永田京子さんと、男性更年期専門の泌尿器科医・今井伸先生へお話を伺います。

取材・文/遠藤るりこ

●関連サイト
ちぇぶらホームページ
・YouTube「ちぇぶらチャンネル」
・Instagram nagatakyoko_jp
・X(旧Twitter) @nagatakyoko
・LINE ちぇぶら

※「パパママの更年期」は全4回(公開日までリンク無効)
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ながた きょうこ

永田 京子

Kyoko Nagata
更年期トータルケアインストラクター

更年期トータルケアインストラクター。株式会社ウェルネスシアター代表取締役。演劇活動後、ピラティスや整体・経絡、リフレクソロジーなどを学び、出産後の母子のサポートを8年行う。その活動の中で、40代の女性たちの声や、自身の母が更年期障害でうつになった経験から、更年期を迎える女性の健康サポートを目的とした「ちぇぶら」を設立。 医師のもと女性の健康や更年期を学び、1000名を超える女性たちの調査協力を経て“更年期対策メソッド”を研究・開発・普及。全国の企業や医療機関、自治体、海外などで講演を行い、国内外で述べ5万人が受講している。 2018年はカナダ・バンクーバーで開催された国際更年期学会で日本での取り組みを発表。現在は「生きがい」研究にも力を入れている。「ちぇぶら」は更年期を英語でいう“the change of life”の意。

更年期トータルケアインストラクター。株式会社ウェルネスシアター代表取締役。演劇活動後、ピラティスや整体・経絡、リフレクソロジーなどを学び、出産後の母子のサポートを8年行う。その活動の中で、40代の女性たちの声や、自身の母が更年期障害でうつになった経験から、更年期を迎える女性の健康サポートを目的とした「ちぇぶら」を設立。 医師のもと女性の健康や更年期を学び、1000名を超える女性たちの調査協力を経て“更年期対策メソッド”を研究・開発・普及。全国の企業や医療機関、自治体、海外などで講演を行い、国内外で述べ5万人が受講している。 2018年はカナダ・バンクーバーで開催された国際更年期学会で日本での取り組みを発表。現在は「生きがい」研究にも力を入れている。「ちぇぶら」は更年期を英語でいう“the change of life”の意。

えんどう るりこ

遠藤 るりこ

ライター

ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe

ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe