女性の「更年期」で9割が不調! 上手に付き合うための「知る・動く・話す」とは

パパママの更年期#1 ~ママの更年期・基礎知識編~

更年期トータルケアインストラクター:永田 京子

更年期による不調は本当にさまざまで、その症状は200~300種類ともいわれています。  写真:アフロ

「女性は40歳の誕生日を迎えたら、改めて心と身体を大事にしようと意識してもらうといい」と話すのは、更年期トータルケアインストラクターとして活動する、永田京子(ながた・きょうこ)さん。

永田さんが更年期に関する活動を始めたのは2014年。活動を始めたきっかけのひとつには、母親の更年期障害に直面した経験があったからと永田さんは話します。

「私の母親は、更年期障害からうつ病になってしまったんです。当時の私は思春期真っ盛りの高校生で、母をおもんばかる余裕もなく、結局、母とは一緒に暮らせないほど深刻になってしまいました」(永田さん)

そんな経験から、更年期で悲しい思いをする女性を減らしたいと、サポート活動を開始。すべての女性が避けて通ることはできない更年期について、永田さんに聞く“立ち向かい方”とは。

※1回目/全4回

●PROFILE 永田京子(ながた・きょうこ)
更年期トータルケアインストラクター。更年期を迎える女性の健康サポートを目的とした団体「ちぇぶら」を設立。1000名を超える女性たちの調査協力を経て“更年期対策メソッド”を研究・開発・普及に務める。国内外で講演を行い、述べ5万人が受講している。

身体の変化に怯えない心構えを

「私が活動を始めた10年前(2014年)は、“更年期”という言葉を聞くだけで嫌な気持ちになる人がたくさんいました」と話す永田さん。

当時の日本では更年期はオープンな事柄でなく、女性にとってネガティブなイベントとして捉えられていました。

「更年期って、英語では“the change of life”と言うんです。この時期を、人生を変えるターニングポイントだと考えれば、身体の変化におびえずに乗り越えていけますよ」(永田さん)

永田さんが提唱する更年期とうまく付き合うポイントは3つ。

①正しく知ること(知る)
②運動をすること(動く)
③周囲の理解を得ること(話す)


「まずは、更年期を正しく知ることです。自分の身体に何が起こるのかわからないから怖いし、不安になる。女性は人生を通して、ホルモンのジェットコースターに乗っていると考えてください。

女性ホルモンは思春期に上昇し初潮を迎え、10代の終わりから30代の性成熟期前期に安定します。妊娠をすると女性ホルモンは増加し、出産前にはピークに達し、出産をするとガクンと急降下します。

30代後半から少しずつ減少して、40代半ばごろからは急下降していきます。そして、閉経を迎えて更年期が過ぎると、女性ホルモンはほぼ“ゼロ”になるのです」(永田さん)

女性ホルモン(エストロゲン)量とライフサイクルのグラフ。人生を通してホルモンのジェットコースターに乗っている女性。ガクンと下がる山場が、閉経を前後に挟んだ10年間の“更年期”だ。  作成:講談社コクリコ、参照:オムロン式美人

講演でこのような女性ホルモンの変化について話すと、「こんなに変化しているなんて知らなかったと、驚く女性が多い」と永田さんは続けます。

「女性ホルモンがなくなっていく過渡期である更年期が訪れると、女性の身体にはいろいろな変化が起こります。何が起こるのかを知っているだけで、心構えができるはずです」(永田さん)

更年期の代表的な不調としては、ほてりやのぼせ、動悸、息切れ、疲れやすい、頭痛、腰痛、肩凝りなどなど。女性たちが更年期に感じている不調は、なんと200~300種類にのぼるというデータも!

「精神面での不調もさまざまです。眠れなくなった、気分が落ち込むようになった、怒りっぽくなったなど、人の数だけ症状があるもの。程度もそれぞれですが、『肉体的・精神的な不調が何もなかった』というのは全体の1割ほどで、ほとんどの女性が更年期には何らかの変化や不調を感じているのです」(永田さん)

“変化や不調が起こるのが当たり前”というのを覚えておくこと。そして、その不調の原因となっているのが、ホルモンの揺らぎであることを心に留めておきましょう。

運動につながるきっかけ作りを

「普段からの運動の効果もあなどってはいけません。身体を動かすことで、更年期症状が緩和されることはもちろん、この時期にしっかり筋力・体力づくりをしておくと、更年期を終えた後の人生の豊かさにつながっていくんです。

自分はまだ20代だから早いかな、もう40代を過ぎてしまったから遅いだろう、なんてことはありません! 早すぎることも遅すぎることもないので、これを読んだ今から運動を始めてくださいね」(永田さん)

とは言え、毎朝ウォーキングするなどと、ハードルが高い目標を設定する必要はありません。「身体を動かすための、小さなきっかけ作りをするんです」と、永田さん。

「朝起きたらカーテンを開けて、大きく伸びをする。そうして血流が良くなって気分が良くなると、『天気がいいから散歩にでも行こうかな』、『いつもより少し遠いスーパーまで行ってみよう』なんて、意識や行動が広がっていきます」(永田さん)

日課の中に、身体を動かすアクションを組み込むのもおすすめ。永田さんは、ルーティンの中に無理なく取り入れられる「ちぇぶら体操」を提唱しています。

「食事のときに骨盤を起こすことを心がける『骨盤起こしブレックファスト』や、顔を洗うときに上半身を脚の付け根から倒す『洗顔トレーニング』など、意識して普段の生活の中で動くことができる体操を考えています。

台所に立っているとき、パソコン仕事の合間に、信号やエレベーター待ちで、など、今日からできる小さなアクションがたくさんありますよ」(永田さん)

永田さんの講演では、無理なくできる身体の動かし方をレクチャー。ちぇぶら体操として親しまれている。  写真提供:永田京子さん

職場や家庭で周囲の理解を得るには

2021年に、NHKと日本女子大学が共同で行った調査によると、40代から50代の更年期に離職をしたのは男女合わせて約57万人と試算されています。うち、約46万人もの女性が、更年期時期の離職を余儀なくされているのです。

「症状が原因で仕事を辞めざるをえなかったという人は、少なくありません。周囲の理解が進んでいないことが大きな原因ですよね。これは、私たちの活動の課題でもあるのですが、更年期の不調について、まだまだ人に話しづらい環境があると感じています」(永田さん)

永田さんが活動の中で知り合った女性たちにも、「更年期をきっかけに離職した」というエピソードは多くあります。

「不調が原因でこれまでできていた仕事ができなくなってしまう、人間関係に齟齬(そご)が生まれてしまう、など、更年期の仕事のあり方について、さまざまな悩みを聞きます。

更年期に現れる症状についてしっかり話ができて、理解を得られて、支え合いながら仕事ができる環境だったらいいですが、それが難しいのだとしたら、人生で何をやりたいのかを改めて考える時期として、考えを転換させても。

更年期は、これまで無理をしてもできていたことを手放して、自分を大事にしながら社会に貢献できる方法を見つける機会。ちぇぶらの活動で出会った女性たちの中には、思いきってライフスタイルを変えて、起業をした女性もいますよ」(永田さん)

家庭でも同じこと。無理せず臆せず、まずは自身の体の変化や症状を相手に伝えていくことが重要です。

「これまで頑張って走り続けてきた女性たちは『自分だけで家を回さないと』というプレッシャーが大きい。でも、家族の中で明るく更年期について話せて『今日はお母さんしんどいから、お皿洗っておいてね』なんて言えるようになるといいですね」(永田さん)

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この「知る・動く・話す」の3つを知っておけば、対処も管理もしやすくなるのが更年期。「自分をすり減らすことなく、攻めの姿勢で立ち向かいましょう!」と永田さん。次回は、更年期の症状に翻弄されずに乗り越える具体的な心得や、治療法を伺います。


取材・文/遠藤るりこ

【参考】
NHK政治マガジン「更年期離職」キャリア絶たれ…莫大な経済損失も 2022年5月

●関連サイト
ちぇぶらホームページ
・YouTube「ちぇぶらチャンネル」
・Instagram nagatakyoko_jp
・X(旧Twitter) @nagatakyoko
・LINE ちぇぶら

※「パパママの更年期」は全4回(公開日までリンク無効)
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ながた きょうこ

永田 京子

Kyoko Nagata
更年期トータルケアインストラクター

更年期トータルケアインストラクター。株式会社ウェルネスシアター代表取締役。演劇活動後、ピラティスや整体・経絡、リフレクソロジーなどを学び、出産後の母子のサポートを8年行う。その活動の中で、40代の女性たちの声や、自身の母が更年期障害でうつになった経験から、更年期を迎える女性の健康サポートを目的とした「ちぇぶら」を設立。 医師のもと女性の健康や更年期を学び、1000名を超える女性たちの調査協力を経て“更年期対策メソッド”を研究・開発・普及。全国の企業や医療機関、自治体、海外などで講演を行い、国内外で述べ5万人が受講している。 2018年はカナダ・バンクーバーで開催された国際更年期学会で日本での取り組みを発表。現在は「生きがい」研究にも力を入れている。「ちぇぶら」は更年期を英語でいう“the change of life”の意。

更年期トータルケアインストラクター。株式会社ウェルネスシアター代表取締役。演劇活動後、ピラティスや整体・経絡、リフレクソロジーなどを学び、出産後の母子のサポートを8年行う。その活動の中で、40代の女性たちの声や、自身の母が更年期障害でうつになった経験から、更年期を迎える女性の健康サポートを目的とした「ちぇぶら」を設立。 医師のもと女性の健康や更年期を学び、1000名を超える女性たちの調査協力を経て“更年期対策メソッド”を研究・開発・普及。全国の企業や医療機関、自治体、海外などで講演を行い、国内外で述べ5万人が受講している。 2018年はカナダ・バンクーバーで開催された国際更年期学会で日本での取り組みを発表。現在は「生きがい」研究にも力を入れている。「ちぇぶら」は更年期を英語でいう“the change of life”の意。

えんどう るりこ

遠藤 るりこ

ライター

ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe

ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe