子どもに多い摂食障害「神経性やせ症」 脳・身長・骨・内臓のあらゆる成長を妨げる身体への影響とは[専門医が解説]

#2子どもの摂食障害「神経性やせ症」~身体への影響と治療~

内科医・一般社団法人日本摂食障害協会理事長:鈴木 眞理

神経性やせ症の子どもに見られる3つのサイン

──親として「これはおかしいかも」と気づくために、どんな特徴に注目すべきでしょうか。

鈴木先生:子どもの神経性やせ症には以下のような特徴があります。

①「やせたい」とは言わないのに、やせるための行動を続ける
大人の場合は「やせたいから食べない」と明言することが多いのですが、子どもの場合はそうとは限りません。「やせるのはよくないよね」「私はちゃんと食べてるよ」と、やせたい気持ちを否定することさえあります。

しかし実際には、こっそり食事の量を減らしたり、運動を必要以上に頑張ったりと、日常的に“やせるための行動”を取り続けます。

②「お腹が痛い」「気持ち悪い」など、身体症状としてあらわれる
神経性やせ症の子どもは、心理的な問題を「体の不調」として訴えることがあります。こうした訴えは内科的な病気と誤解されやすく、「まさか摂食障害だとは思わなかった」と驚くご家庭も少なくありません。

③食事制限を長期間にわたって続ける
一度決めた食事ルールを厳格に守り、「揚げものは食べない」「甘いものは絶対に口にしない」など、徹底的に制限するようになります。もし、そのこだわりが何ヵ月も続いていたら「ちょっとおかしいかも」と思ったほうがいいです。

“体重だけではない”やせがもたらす深刻な影響

──神経性やせ症は、子どもの体や心にどのような影響を及ぼすのでしょうか。
鈴木先生:ただ体重が減るだけにとどまりません。特に子どもは心身ともに発達の途中にあり、成長を大きく妨げてしまいます。
具体的には以下のような影響があります。
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・身長が伸びない
・初潮の遅れ・月経の停止
・骨密度の低下(将来的な骨折リスクの増加)
・脳の萎縮(思考力・集中力の低下や、ぼんやりした状態)
・年齢相応の情緒や社会性など、精神面の成長の遅れ
・歯の喪失
・低栄養による肝機能障害など、臓器機能の低下
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重篤なケースは命にかかわるため、状況に応じて入院治療が必要となることもあります。

子どもの命を守るため、標準体重の65%以下になると入院が検討され、55%以下になった場合には必須となる。 出典:『摂食障害がわかる本 思春期の拒食症、過食症に向き合う』
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〈入院判断の目安〉
・標準体重の55%以下:入院が必須とされるライン。
・標準体重の65%以下:入院が検討されるライン。他の状況を含めて総合的に判断される。

年齢ごとの標準体重の目安。この表と比べて、極端に体重が少ない場合は注意が必要。 出典:『摂食障害がわかる本 思春期の拒食症、過食症に向き合う』

入院が必要になる割合は、大人よりも子どものほうが多いのが実情です。それは、今まさに発達段階だからこそ、「子どものころの栄養不足」が「一生にかかわる問題」へとつながってしまうためです。

神経性やせ症の治療とは?

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