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子どもに多い摂食障害「神経性やせ症」 脳・身長・骨・内臓のあらゆる成長を妨げる身体への影響とは[専門医が解説]
#2子どもの摂食障害「神経性やせ症」~身体への影響と治療~
2025.08.10
内科医・一般社団法人日本摂食障害協会理事長:鈴木 眞理
治療は時間も労力も必要
──治療はどのように進んでいくのでしょうか。
鈴木先生:体重を増加させて合併症を予防する「身体の治療」と、過度の完璧主義や苦手な対人関係を改善する「心理面の治療」の両面が必要です。
脳が飢餓状態ではこだわりがさらに強くなって心理的治療の障害になるので、まず身体状況のリスクを評価し、栄養改善を優先させながら、「支持的精神療法」と呼ばれる対応をしていきます。
ここでは成長曲線などの客観的なデータを使って、現状の深刻さを具体的に伝えることで、「身体がちゃんと育っていないよ」「この状態ではしたいことができないよ」と治療の動機づけをおこないます。また、子ども自身に「食べると体があたたかい」と気づかせ、良い行動を促していくのです。
精神面では、治療の経過でその子どもの抱えるストレスや課題を聞き取り、解決方法を習得させていきます。子どもは、家族の影響を受けやすいので、家族の不安も解消しながら、家族が一番の理解者で応援者になるように支援します。
このほか治療法には、以下のようなものもあります。
●認知行動療法
「自分は太っている」「食べたらすぐ太る」「自分はやせていなければ価値がない」「食べたら動かなければならない」など体型や体重のコントロールに対する思い込みを修正していく心理療法です。偏った認知を整えることで、行動を変え、病気の改善を目指します。
●家族療法(FBT)
保護者が専門家の支援を受けて、治療チームのメンバーとなり、食事と運動の管理を通じて体重増加をめざす自宅での治療法で、入院医療費が高額な欧米で発展しました。本人が食事を強く拒否することも多く、保護者が6ヵ月から1年ほど根気よく支え続けなければなりません。治療のために、仕事を休まなければならない場合もあります。
●行動制限療法
入院治療で行われる方法で、最初はあらゆる行動が制限されます。そうすることで、自分の体や心の声を聴く練習になります。食事量の増加に伴って、それらの行動制限が解除されていきます。
〈参考文献〉
中里道子.摂食障害の基礎と臨床 摂食障害の精神療法
chromeextension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/
https://smapg20110918.up.seesaa.net/image/article2028729.pdf
認知行動療法と家族療法は、臨床心理士などの専門家が必要なため、対応できる病院はまだ限られているのが現状です。
いずれにしても、神経性やせ症の治療には多大な時間や労力がかかっています。
────◆────◆────
では、もし子どもが「やせたい」と言い出したとき、親はどう声をかけるべきでしょうか。
次回は、神経性やせ症から子どもを守るために親ができること、そして回復に必要なかかわり方についてくわしく解説してもらいます。
取材・文/牧野未衣菜
おすすめの本はこちら
鈴木眞理先生の監修『摂食障害がわかる本 思春期の拒食症、過食症に向き合う』(講談社)。思春期に多い拒食症や過食症について、原因から治療、家族や学校の対応までをイラストとともにやさしく解説。摂食障害が「心の問題が食に現れた病気」であることを軸に、本人の心理や回復のプロセス、家族ができる関わり方を丁寧に紹介しています。「もしかして……」と感じたとき、周囲の理解と支援の第一歩となる一冊です。

●鈴木眞理(すずき まり)PROFILE
内科医・医学博士。長崎大学卒業後、元・跡見学園女子大学心理学部臨床心理学科特任教授。政策研究大学院大学名誉教授。現在、一般社団法人日本摂食障害協会理事長。
連載は全3回 (※公開時よりリンク有効)

牧野 未衣菜
1992年生まれ、千葉県出身。子育てや教育関係を中心に、フリーランスライターとして活動中。 また、教育NPOでユーススタッフとして子どもの支援活動にも携わる。現在は二児(姉妹)の母として、育児にも奮闘中。
1992年生まれ、千葉県出身。子育てや教育関係を中心に、フリーランスライターとして活動中。 また、教育NPOでユーススタッフとして子どもの支援活動にも携わる。現在は二児(姉妹)の母として、育児にも奮闘中。
鈴木 眞理
医学博士。長崎大学卒業後、東京女子医科大学、米ソーク研究所などで臨床・研究に従事し、1987年に摂食障害の専門外来を開設。治療実績は1500例を超える。 政策研究大学院大学教授を経て名誉教授。跡見学園女子大学心理学部臨床心理学科特任教授を歴任。現在は一般社団法人日本摂食障害協会理事長として、治療・研究・啓発・家族支援に取り組む。 『摂食障害がわかる本』(講談社)を監修、著書に『乙女心と拒食症』(インターメディカル)など。 ・一般社団法人日本摂食障害協会
医学博士。長崎大学卒業後、東京女子医科大学、米ソーク研究所などで臨床・研究に従事し、1987年に摂食障害の専門外来を開設。治療実績は1500例を超える。 政策研究大学院大学教授を経て名誉教授。跡見学園女子大学心理学部臨床心理学科特任教授を歴任。現在は一般社団法人日本摂食障害協会理事長として、治療・研究・啓発・家族支援に取り組む。 『摂食障害がわかる本』(講談社)を監修、著書に『乙女心と拒食症』(インターメディカル)など。 ・一般社団法人日本摂食障害協会