ぴったり靴で背が伸びる!? 子ども靴の履き方鉄則とサイズの選び方

3万人以上の足をみた専門家・伊藤笑子氏に聞く「子どもの足育」#4~靴の履き方&買い替えの目安編~

合同会社フェルゼCEO・マスターシューアドバイザー:伊藤 笑子

子どもが自分で靴を履きたがるようになったら、親は根気よく適切な靴の履き方を教えたい。  写真:アフロ
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ヨーロッパより300年以上遅れて靴文化が入ってきた日本。前回お伝えした上履き文化に象徴されるように、社会全体の子ども靴への意識はまだ低く、多くの子どもたちが足の変形に悩まされています。

靴選びと並んで大切なのは、靴の履き方や買い替えのルールです。足育の第一人者で子ども靴の専門家である伊藤笑子(いとう・えみこ)さんに教えてもらいました。

※これまでを読む(#1#2#3

30年以上、子どもの足育と高品質な靴の普及に努める伊藤笑子さん。  Zoom取材にて

つま先トントンはNG! 「かかとをぐっ」が履き方の鉄則

靴を履くとき、大人も子どももついやってしまうのが“つま先トントン”。立ったまま急いで履き、つま先をトントンして「いってきまーす」という毎日になりがちです。それは草履や下駄など鼻緒のある履物の履き方なんです。

イヤイヤ期に入るころから、子どもは自分で靴を履きたがるようになります。この時期から子どもに根気よく伝えたいのが適切な履き方です。

子ども靴の専門家である伊藤笑子(いとう・えみこ)さんに、履き方のポイントについて伺いました。ポイントは“かかとをぐっ”です。

知っておきたい「靴の履かせ方」  画像提供:フェルゼ

①「ベリベリ、がばっ」
面ファスナーのベルトをはがして緩め、靴のベロ部分を押し上げて履き口を大きく広げ、足を入れます。

②「つま先上げて」
床面にかかとをつけ(保護者が履かせる場合は手を添えて)、つま先を上げます。

③「かかとをぐっ」
かかとを靴のカカト部分にぐっと合わせます。「かかとトントン」と教えると、子どもは“トントン”の響きと動作に気を取られがち。トントンしている間にずれてしまいます。かかとを靴に押しつけフィットさせるための言葉選びも大事。

④「ひっぱってペタ」
面ファスナーのベルトは、横(反対側に)しっかり引っぱって、“折り返してペタ”のターンバックを忘れずに。足首側のベルト→つま先側のベルトの順で。

「2歳半ごろから、練習すればだんだん上手に履けるようになります。きちっと座って履くことを覚えると、立っていても上手に履けるようになります。

足育活動を始めた25年前は、靴の履き方を擬音と動作とを連動させて覚えてもらおうと『かかとトントン』と教えてきました。ですが、子どもたちがそれで靴をきちんと履けているか毎回確認してみると『トントン』している間に足が靴の中でずれているんです。トントンしすぎてかかとがいたくなる子もいました。

『トンは一回でいいよ』と言ってもトントンしちゃうんですよね。それで本来の目的である『足のかかとと靴のカカトを合わせる』ということがきっちりできるように、まずは『つま先を上げて』『かかとをぐっ』に変えて覚えてもらっています。


そして、さらに大切なことは、子どもが靴を履くときに急かさないこと。急いでつま先トントンで履くと、かかとを踏んでしまいます。そうすると永遠に靴が足に合いませんよね(笑)」(伊藤さん)

買い替えサインは残り7ミリ以下! 4ヵ月ごとに確認を

買い替えのタイミングは、子どもが「きつい」と訴えてからでは遅すぎるようです。

「子どもが“痛い!”と言ったときは、すでに靴がかなり小さくなってサイズアウトしている証拠です。

子どもは、足のゆびを10ミリくらい縮めなければならないくらいきつくて限界になったころにようやく“痛い”と言い出します」(伊藤さん)

特に足の成長が著しい3歳までは、1年で12~14ミリも足が大きくなります。そのため、5ミリ刻みの靴の場合、4ヵ月ごと年間3足は買い替えが必要に。

大人の感覚からしてみれば「最近、買ったばかりなのに」となってしまいそうですが、ボロボロになっていなくても、重要なのは足と靴の“サイズ”の関係です。

「見かけは大丈夫そうでも、定期的に中敷きを取り出して足を乗せて確認してみてください。

春に買った靴は夏にはサイズアウトしていることがほとんどです。4月に買ったら8月に必ずサイズチェックをする。カレンダーに書き込んでおくといいですね」(伊藤さん)

買い替えの目安は、中敷きと足の間の余裕が残り7ミリ以下になったら。

「7ミリを『大き過ぎでは?』と思う親御さんも多いですが、そもそも靴を購入する際、「つま先の余裕10ミリを目安に買う方が多く、それでは『捨て寸+成長寸』が取れていないため、十分な余裕があるとは言えません」と伊藤さんは指摘します(#2参照)。

子どもの足の伸びしろを考えると、今までのどこかで見た知識は上書きして、「あと7ミリも」ではなく、「もう7ミリしか」という感覚を持つ必要があります。

“いつも左右反対に履く”はぶかぶかのサイン?

左右反対に履き続ける子は、靴のカカトがぶかぶかというサインかもしれません。

「長年の観察の中で、左右逆に履く子どもさんはゆるい靴を履いている場合が多いことが分かりました。ゆるい靴を反対に履くと靴が脱げにくくなるんです」(伊藤さん)

子どもなりに「左右反対に履けば脱げにくいんだ!」という感覚を覚えてしまうと、その履き方が習慣に。反対に足にぴったり合う靴を左右反対に履くと、「履きづらくて気持ち悪い」という感覚が芽生える子どももいると言います。

左:ベルトを外さずに脱ぎ履きできるくらいかかとまわりの大きい靴はすぐに履き崩れてぶかぶかの脱げやすい靴に。右:ベルト2本でぴったり固定している靴は変形せず。ベルトを外さないと履けない構造が、“きちんと履く”の習慣に。  写真提供:伊藤笑子

ぴったり靴で背が伸びた!? 子どもたちの変化

あまり歩きたがらない、すぐに抱っこをせがむ、姿勢が悪い──。こうしたお悩みの原因は、足と靴の関係にあるかもしれません。

自分の足にぴったりな靴に出合えた子どもは、驚くほど変わるそうです。「かかとが脱げない」「背が伸びた」と心から喜んで走り回る子どもたちの様子を、伊藤さんは目の当たりにしてきました。

「『あれ! 背が伸びたね』と親御さんたちが驚かれます。かかとが外反(内倒れ)して、まっすぐ立てず姿勢が崩れてしまっている状態から、適切な靴を履くことによって、かかとが真っ直ぐになり、ひざも伸びて、骨盤も正しいポジションにしてあげると、背が伸びたと感じるようです。

いかに今まで不自然な姿勢で歩いていたかということです。ヒト本来の自然な姿勢はからだを動かしやすくしてくれます」(伊藤さん)

小さい子どもは走り回って喜びを表現するそうです。

「すごく分かりやすい子は『かかとに靴がついてくる!』と言って喜びます。履いた瞬間、ピっとスイッチが入ったかのようにとにかく走り回る子もいます(笑)。ベビーカーで来た子が、歩いて帰りたがるようになったこともありましたよ」(伊藤さん)

足に合った高品質の靴に変えただけで、姿勢と歩幅が見事に改善した子ども。この子は4歳児ですが、靴を変えてからは本当によく歩くようになったと言います。  写真提供:フェルゼ
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