子連れで行ける! 豊洲市場「マグロの競り」を間近で見学してみた

謎のハンドサイン「手やり」とは? 子連れで行く注意点もご紹介

マグロの競り! 解説付き&至近距離で見る裏ワザ

マグロの競りを見る方法は2種類あります。1つは豊洲市場の水産卸売場棟2階にある見学者通路から見る方法。誰でも予約なしで見られ、通路には場内の音声がライブ放送されています。

もう1つはマグロ競り場とつながる中2階にある、大物(マグロ)卸売場内の見学者デッキから見学する方法。こちらは毎月抽選の完全予約制で、透明のガラス1枚を隔てた場所から、競りの様子を見られます。しかも解説付き! 我が家はこちらの方法で見学しました。

◆見学抽選の申し込み方法
・「豊洲市場マグロせり見学事前抽選」のホームページから翌月の見学日を選んで申し込みます。

豊洲市場マグロせり見学事前抽選

・手順の詳細は、東京都中央卸売市場のホームページから見られます。

東京都中央卸売市場

◆注意点
①参加者全員の身分証明書が必要。子どもの場合は保険証などを持参する。

②集合時間が午前5時30分なので、交通手段を事前に調べておく。

初めて競りを間近で見た意外な子どもの反応

我が家の子どもたち(&夫)は、年末によくテレビ放送されているマグロ漁師のドキュメンタリーが大好き。もちろんお寿司のネタもマグロが大好き。

自宅から豊洲までは片道1時間半。日帰りできる距離ですが、今回たまたま竹芝に泊まる機会があったので「せっかくだから早朝にできる体験はないか」と見つけたのが、豊洲市場でのマグロ競り見学でした。

竹芝のホテルを5時に出発し、タクシーで豊洲市場へ。都内の道路も早朝はスイスイ。午前5時30分の集合時間には余裕で到着しました。集合場所は市場の管理施設棟の3階「PRコーナー」という小部屋。

受付で当選メールと家族全員の身分証明書を提示し、時間まで待ちます。この日は案内が2回に分かれていたようで、少し待ち時間が長かったです。

厳重に入り口が分かれています。受け付け時だけでなく、見学者デッキに行く階段の手前でも、当選メールを確認されました。
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驚いたのは警備の厳重さ。トイレに行ってPRコーナーに戻ってきただけで、警備員さんに「予約のかたですか?」と確認されてしまうほど。ちなみにほかの参加者は、私たち家族ともう1家族を除いて、全員が外国のかた。英語を浴びながらの待ち時間は、国内にいながら海外旅行気分を味わえました(笑)。

私たち家族と、子連れのもう1家族は、長年築地市場で果物の仲卸業者をしていたかたに案内してもらいます。案内のかたは、市場にかんする話題が豊富で、出発前から子どもでも飽きないよういろいろな話をしてくださいました。

番号のついた帽子をかぶった買い手の手に注目! 懐中電灯や手鉤(てかぎ)を持っています。

中2階の見学者デッキに着くと、目に飛び込んできたのはガラス越しに転がっているというか横たわっているというか……整然と並ぶマグロたち。「背の順に並んでてかわいいね」とは娘の談。クロマグロ、ミナミマグロ、メバチマグロなど、お寿司屋さんで聞いたことのある名前ごとに、セクションが分かれています。

印象的だったのは、魚屋さんのような匂いがすること。スーパーの魚売り場しか知らない子どもたちは、マスク越しでも感じるその匂いに、少し戸惑ったそうです。

この日は11月でも異例の寒さだったので、家族全員冬用コートを着ていたのですが、それで正解。魚が傷まないよう、場内は冷蔵庫並みの気温なのだそう。夏に見学されるかたは、防寒着を準備したほうがよさそうです。

「チリン、チリン、チリン」

卸売業者(魚を売る人)の振鈴を合図に、ゴロンと転がされたマグロの間を歩いていた買い手たちが集まってきました。卸売業者が市場に響く良い声で何かを言っています。「歌みたいだね」と言いながらも、子どもたちの耳と目は釘付けです。

真ん中の台に乗って手を挙げているのが、卸売業者のかた。左右の茶色の帽子のかたも卸売業者で、値段や買い手の名前を記録しています。

買い手たちは「手やり」というハンドサインのような方法で数字を示し、そのマグロを買う値段を示します。

何が起こったのか分からないうちに、いちばん高い値段で買う人が決まったみたい。卸売業者の1人が値段を記録します。もう1人の卸売業者は、買った人の名前を別の紙に書いてマグロにペタッと貼り付け、これで1つのマグロの競りが終了。これをマグロの数だけ繰り返し、約1時間で競りが終了します。

息子が案内のかたに質問します。「あのマグロに載っている丸いのは何ですか?」

「あれはマグロの断面を見せて鮮度を確かめられるようになってるんだよ。スプーンを持っていって、すくって食べて味を確認してもいいんだ。競りが始まるまでは、いろいろな方法で『目利き』をして、できるだけいいマグロをいい値段で買うのが仕事なんだよ」

目を輝かせる子どもたち。「スプーンですくって食べていい」というフレーズしか聞いていないのでは……。

解説を聞いてから注意深く見ていると、「目利き」の時間では、断面を懐中電灯で照らしたり、手鉤(てかぎ)で刺してみたりして、脂のりや品質をチェックしているのがわかりました。手鉤(てかぎ)とは、木製の柄の先に金属でできた「かぎ」がついた道具です。マグロの身に刺して品質を確かめたり、ひっかけて運んだり、さまざまな用途に使っていました。

ところで私の率直な感想は、イメージしていたよりも静かに進行すること。

「競りというと、もっと怒号が飛び交って熱気がムンムンしているイメージだったけれど、わりと淡々と進むんですね」と言うと、案内のかたが答えてくれました。

「それは築地市場のときのイメージかもしれないね。豊洲に移転してから荒っぽいことがなくなった。日本一警備員の多い市場なんじゃないかな。衛生面もすごくよくなったしね」

正直に言うと、豊洲市場は築地市場やほかのアジアの市場と比べると「市場」というより、「ビル」とか「工場」という感じで、ちょっと拍子抜けしました。一方で、清潔感があって食の安全を実感できたり、子連れ家族や外国のかたなど、不慣れな人たちも訪れやすい雰囲気だったりするのはとてもよいことだと思いました。

ちなみに小5息子がもっとも食いついたポイントはこちら。

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