
国家試験に合格した発達障害のシングルマザーが苦しんだ「仕事・子育て・勉強」の高すぎる壁
第2回【試験まで約60日】アラフォーADHD&シングルマザーの「リスキリング」~スケジュールの壁~
2025.07.07
週5フルタイム外勤は無理だと悟った実習期間
国家資格「社会福祉士」合格をめざして、2023年春に入学した養成校。学習期間は4月から翌年(2024年)9月までの約1年半。さらにその翌年の2月には国家試験が待ち受けている。
通信制のため、基本的には月1本レポートを提出。そのほか、現場で学ぶ実習が2回、「スクーリング」と呼ばれる対面授業も土日に全9回あった。
私にとって一番の山場は、1年半の間に2回ある実習だった。実習は地域包括支援センターや高齢者施設など、社会福祉士が実際に働く現場に配属され、ソーシャルワーク(社会福祉援助)を学ぶ。合計32日間(連続して24日間と8日間)、朝から夕方まで実習先で過ごすことになる。
30歳からずっとフリーライターとして、自宅でデスクワークが多かった私。毎朝6時に起きて弁当を作り、満員電車を乗り継いで実習先に通う生活はなかなかハードだった。夕方に帰宅するとすぐ食事の準備をしながら息子(小3)の話し相手になり、お風呂に入れて、歯磨きをさせて寝かしつけ……。
家庭業務を終えると、今度は睡魔と戦いながら、手書き指定(!!)の実習日誌にとりかからなければならない。不注意優勢型ADHDの特性を持つ私にとって、手書きは苦手なことのひとつ。数行に1ヵ所は書き損じがあり、毎日、二重線と修正印だらけのレポートを提出することになった。
また、ロングスリーパーで片頭痛持ちでもあるため、8時間は寝ないとダウンしてしまう。毎日「今日こそは21時に寝る!」と決意するのだが、手書きのレポートに1~2時間費やすと、どうしても就寝が23時台、睡眠は6時間ほどになった。
結局、実習先の2ヵ所とも終盤には体調を崩し、休まざるをえない結果に。社会福祉士になれたとしても、週5日のフルタイム外勤の仕事に転職するのは難しいかもしれないと、加齢による体力の衰えも痛感した実習にもなった。
とまあ、肉体的にはハードな実習だったが、実は精神的にはとても満たされていた。
スクーリングで出会った学生と、実習先の職員たちは、仏様のように善意と慈しみに満ちていた。スクーリング中に咳が止まらなくなったときには、学生仲間が「大丈夫?」「無理しないで」と口々に声をかけてくれ、うれしくて思わず涙ぐんでしまった。
実習先の職員は、地域の生活困窮者に対してどうしたら支援の情報が届くか、その人が本当に必要としている支援は何で、どうしたら支援につなげられるかを一生懸命考えている。
ネット上で散見される「自己責任論」(貧困など、自分が今置かれている状況はすべて自分に責任があるという考え)を持つ人は皆無に見え、その姿勢には胸を打たれるばかり。
彼らと時間を共にできたことで、心が浄化され、元気になっていくのを実感した。人への接し方や言葉の選び方も学ぶことができた。今振り返ってみても、本当に貴重な経験ができたと思う。