
子どもに髪の毛を寄付する「ヘアドネーション」約1000個達成! 医療用ウィッグを届けた先の「想定外の課題」とは?
寄付された髪からウィッグを作る「ヘアドネーション」 ~後編~
2025.09.10
「この髪の毛、もったいないね」という会話がきっかけ
──ジャーダックを立ち上げたきっかけを教えてください。
渡辺貴一代表(以下、渡辺さん):私はもともと美容師なのですが、私ともう1人の美容師の2人で2009年に立ち上げました。
立ち上げたきっかけはすごくシンプルです。美容師をやっていると「この髪の毛、もったいないね。ウィッグでも作れたらいいのにね」という会話が、本当によくあります。
特に、腰くらいまで髪を伸ばした人が「もう飽きたから切っちゃおうかな」って、バッサリいくときなど、全国どこの美容室でも、きっと同じような会話がされていると思います。
でも、当時の日本には、髪の毛を寄付してウィッグを作って、それを無償で届ける団体はひとつもなかった。それで、「じゃあ、自分たちでやってみようか」という、本当にそのくらい気軽な思いで始めたのが最初でした。

渡辺さん:それともうひとつ。美容室は、全国になんと約27万軒あるんですよ。その数はコンビニの約5倍以上(令和5年度衛生行政報告例の概況)。そのなかで、自分たちが新しく美容室をオープンさせるなら、なにかひとつ意味があることをしたかったというのもありました。
お金になるようなことじゃないけど、誰もやっていないことは何だろうと考えて、思いついたのがヘアドネーションだったんです。誰もやっていないことに取り組むことで「自分たちの店の差別化ができたら」というのも、正直な動機のひとつでした。
ですので、メディアで「子どもたちの笑顔のために」などと私たちが紹介されることがありますが、正直、そんな崇高な理想から始めたわけではありません。
そしてこの活動が、まさかここまで大きくなるとは想像もしていませんでした。