子どもに髪の毛を寄付する「ヘアドネーション」約1000個達成! 医療用ウィッグを届けた先の「想定外の課題」とは?

寄付された髪からウィッグを作る「ヘアドネーション」 ~後編~

目指すのは「必ずしもウィッグ」を必要としない社会

──まさに、「誰のためのウィッグか」が問われる場面ですね。

渡辺さん:そうなんです。本人の意思が、完全に置き去りにされてしまっている。しかもウィッグって、実はとても不便なんですよ。特に夏場は蒸れるし、暑いし、かゆくなる。

私たちはよく、「家に帰ったら、靴を脱ぐより先にウィッグを外す」という話を聞きます。マスクを取るより、ランドセルを下ろすより、最初にウィッグを放り出す。

それだけ、ストレスがあるということなんです。

イラスト/古屋あきさ
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──ジャーダックの今後の展望を教えてください。

渡辺さん:私たちが目指すのは、「ウィッグを使ってもいいし、使わなくてもいい」という、当たり前の自由がある世界です。

これまでジャーダックは、髪の毛を集めて、ウィッグを届けてきましたが、本当の目的は、その先にある「必ずしもウィッグがいらない社会」です。

ウィッグをつけてもいいし、つけなくてもいい。そんな「選択の自由」が保障された社会こそ、「誰にとってもほどほどに心地よい社会」になるのではないでしょうか。

だからこそ今後は、「ウィッグがあるかないか」にとらわれない、「あなたはそのままで大丈夫だよ」と伝えられるような社会づくりにもかかわっていきたいと思っています。

───◆───◆───

ウィッグを届けることは、目的ではなく通過点。最終的に目指すのは、「ウィッグをつけても、つけなくてもいい」と心から言える社会であることを教えていただきました。

そのためにも、まずはヘアドネーションやウィッグを必要とする子どもたちがいることについて、私たち一人ひとりが知ることから始めるのが重要なのかもしれません。

取材・文/横井かずえ


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ヘアドネーションの送り先
〒531‐0072
大阪府大阪市北区豊崎3‐8‐18
NPO法人JHD&C事務局
宅配便記載用電話番号:06‐6147‐5316
*お電話でのお問い合わせには対応しておりません
*個別の到着確認はできませんので「追跡サービス」付きの発送方法をおすすめします。

NPO法人JHD&C(ジャーダック)
Japan Hair Donation & Charity。通称ジャーダック。2009年、日本で初めてヘアドネーションを専門に行う団体として活動スタート。頭髪に悩みを持つ18歳以下の子どもたちに無償提供をしている。今まで届けたウィッグは約1000個。
https://www.jhdac.org/

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よこい かずえ

横井 かずえ

Kazue Yokoi
医療ライター

医薬専門新聞『薬事日報社』で記者として13年間、医療現場や厚生労働省、日本医師会などを取材して歩く。2013年に独立。 現在は、フリーランスの医療ライターとして医師・看護師向け雑誌やウェブサイトから、一般向け健康記事まで、幅広く執筆。取材してきた医師、看護師、薬剤師は500人以上に上る。 共著:『在宅死のすすめ方 完全版 終末期医療の専門家22人に聞いてわかった痛くない、後悔しない最期』(世界文化社) URL:  https://iryowriter.com/ Twitter:@yokoik2

医薬専門新聞『薬事日報社』で記者として13年間、医療現場や厚生労働省、日本医師会などを取材して歩く。2013年に独立。 現在は、フリーランスの医療ライターとして医師・看護師向け雑誌やウェブサイトから、一般向け健康記事まで、幅広く執筆。取材してきた医師、看護師、薬剤師は500人以上に上る。 共著:『在宅死のすすめ方 完全版 終末期医療の専門家22人に聞いてわかった痛くない、後悔しない最期』(世界文化社) URL:  https://iryowriter.com/ Twitter:@yokoik2