熊本発・子どもの「学びたい」があふれ出す プロジェクト型探究学習の中身とは?

【小学校教育2.0】熊本市立弓削(ゆげ)小学校・松永先生の挑戦#1 「学ぶ意欲があふれ出す探究学習」

発表を通して自分の探究が「みんなの探究」へ

探究学習の集大成・最終発表は、メンバー構成、形式ともに子どもたちに委ね、完全に自由としました。子どもたちは各グループでその方法を話し合い、グループで発表するか、個人で発表するかを決めました。

プレゼン用スライドを作成して発表を行ったグループの様子。  写真提供 松永賢斗氏

発表方法も、ポスターや新聞を作って説明する場合もあれば、動画やプレゼン用のスライドを使用するグループ(個人)もありました。

子どもたちが発表のために作成した資料。  写真提供 松永賢斗氏

「多種多様な発表があり、どれも個性が出ていて素晴らしかったのですが、何より驚いたのは、どのグループも、『聞く人にしっかり伝わる発表』になっていたことです。

クイズを取り入れて、参加型の発表にしたグループもありました。  写真提供 松永賢斗氏

『発表の心得』的なことは、授業の冒頭のミニレッスンでも伝えていました。聞く人が興味を持てるように問いかけを入れよう、誤解を生まないように一次情報と二次情報をしっかり分けよう、などでしたが、どのグループもそれらをきちんと実践し、たくさんの工夫が施されていました。

自分たちが一生懸命調べてたどり着いた『答え』だからこそ、どうやったらみんなに理解してもらえるか、わかりやすいか、たくさん考えたんだと思います。その心意気、気迫のようなものを、子どもたちから感じました」(松永先生)

自作のイラストを使って、古墳の周りにさまざまな形のはにわが並べられていた様子を紹介しています。  写真提供 松永賢斗氏

こうした工夫が身を結び、発表を聞いている子どもたちの表情も、真剣そのものだったといいます。

メモを取って発表を聞く子もいました。  写真提供 松永賢斗氏

「聞いている子たちは、発表している内容が、『自分が学んだ内容と、どうつながっているのか』という視点で情報が入ってきているようでした。

だから、ものすごく興味を持って聞いているんです。『まがたま』について調べた子もいたのですが、実際にやってみて、まがたまを作るのは相当大変だということがよくわかっているから、あんなに大きな古墳を作るのはもっと大変だよね、というように、リアリティを持って他のグループの発表に意識を向ける。

その結果、興味や好奇心がどんどん広がっていきます。

自分自身の学びを進めているときも、子どもたちはいきいきと輝いていましたが、他の子の発表を聞いているときもまったく同じなんです。そうなんだ、そんなこともわかったんだ、と目をキラキラさせて、一人ひとりから学びへのエネルギーがあふれ出ていました。

子どもたちの姿を見て、『本来の学び』のあり方を見せてもらったと感じました」(松永先生)

そして、発表後に実施した単元末テストでは、驚きの平均点を叩き出しました。

第2回では、探究学習がもたらした具体的な成果についてうかがいます。

取材・文 川崎ちづる

【小学校教育2.0】熊本市立弓削(ゆげ)小学校・松永賢斗先生の挑戦は、全4回。※公開日までリンク無効

#2 熊本発・探究学習で成績もアップ! 子どもたちに「生きた知識」が身についた理由
#3 熊本発・自由進度学習成功のカギ 子ども同士のコミュニケーションを育てるには?
#4 熊本発・大人の「待つ姿勢」が子どもを育てる 自由進度学習の広がりがもたらすもの

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かわさき ちづる

川崎 ちづる

Chizuru Kawasaki
ライター

ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。

ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。