「自由進度学習」は小学校低学年から実践できる! テーマ設定・計画・発表まで子どもたちが決める驚きの内容

【小学校教育2.0】名古屋市立矢田小学校の挑戦#1「2年生のプロジェクト型学習」

友だちとの関わりで学びがより楽しく

実際に施設に訪問するまで準備に取り組んだ授業数は、約12時間。かなり長い時間ですが、子どもたちは時間配分を考えながら、しっかりと準備を行いました。

まちたんけんでは一生懸命質問し、真剣にメモしました。  写真提供 矢田小学校
記録写真も忘れずに取りました。  写真提供 矢田小学校

そして、「まちたんけん」を実施後は、わかったことや感じたことをまとめて発表するために、再度グループで話し合っていきます。

「発表についても、やり方を含めて子どもたちが自由に決められるようにしました。その結果、6つのグループすべてが異なる方法を採用しました。

紙人形を作って発表していたグループ、ロイロノート(アプリ)を活用したグループ、クイズを行ったグループなど、それぞれがしっかり自分たちで考えて、工夫していることが伝わってきました」(中川先生)

保護者の前での発表。アプリを使ってクイズを行っています。  写真提供 矢田小学校
人形劇形式の発表を行うグループもありました。  写真提供 矢田小学校

自分たちでアイデアを出し合って形にし、しっかりとアウトプットする。低学年とは思えない学習を展開できたのは、「グループで友だちと関わり合いながら進めていることも大きい」と中川先生は話します。

「子どもたちは友だちと一緒に取り組む、学習すること自体が大好きですから、『こうしたらいいんじゃない』『こっちのほうが面白そう』などと積極的に意見を出しやすい環境が生まれます。

子どもたちは終始主体的に学習に取り組みました。  写真提供 矢田小学校

さらに、グループワークを続けるなかで、話し合いを引っ張る子もいれば、口数は多くないけれど面白いアイデアを考える子、決まったことをしっかりとプリントに書き込む子など、それぞれの長所を生かした役割分担が自然と生まれてくるんですね。

こうした各々の特徴がグループのなかで発揮され、それが学習の楽しさを引き出し、さらには発表の工夫などの成果物にもつながっていったのではないでしょうか」(中川先生)

模造紙にぎっしりと内容をまとめて発表するグループ。  写真提供 矢田小学校

「身につけたい力」も子ども自身が考える

矢田小学校が実践するプロジェクト型学習には、もう一つ、特徴的な取り組みがあります。

それは、子どもたちが自分自身で、「どんな力を身につけたいのか考える」というものです。

ここでいう「身につけたい力」とは、「たし算ができるようになる」や「●●の仕組みについて理解している」といった教科の目標とは異なるものです。

矢田小学校では、子どもたちが「知りたい」「やってみたい」ことに出合ったときに、それを自分で掘り下げ探究していくために必要となる力を重視し、「わくわく学習で身につけたい力」として設定しています。

例えば、
・「わくわくを見つける力」=したいことや、つぎにやりたいことを見つけることができた
・「わくわくを計画する力」=ゴールにむかって今日のめあてを自分でたてることができた
・「自分で調べる力」=必要なことを本やタブレットでしらべたり、友だちにきいたりして、調べることができた
などがあります。

実際に子どもたちが自己評価したプリント。  写真提供 矢田小学校

「『どんな力を身につけたいのか』を単元の最初に考え、終わったあとに振り返ることで、子どもたちはただ何となく授業に取り組むのではなく、自分の学びがどんな成果につながるのかを考える習慣がつきます。

定期的に『こんな力がついたな』と振り返ることで、子どもたちが学びの意味を実感しやすくなるとも感じています。

こうした積み重ねが、高学年になったときに行う『自分の興味・関心を探究してくプロジェクト型学習』を行う力や自信につながっていくのではないかと考えています」(中川先生)

自分の力で学びを進め、友だちと協力してわかりやすく伝える。プロジェクト型学習の要素を生活科に取り入れることで、2年生でもこうした学びを展開できることがよくわかりました。

第2回では、1年生でも行っている「プロジェクト型学習の要素を取り入れた生活科」の詳細、成果、子どもたちの変化についてうかがいます。

─◆─◆─◆─◆─◆─◆
名古屋市立矢田小学校
名古屋市東区に位置する公立小学校。児童数は451名、18クラス(2022年5月1日現在)。名古屋市の2つの事業、ナゴヤ・スクール・イノベーション事業(2019年度〜)、子どもライフキャリアサポートモデル事業(2018〜2021年度)のモデル校として活動。
ナゴヤ・スクール・イノベーション事業では、子どもが自ら問いを立て、見通しをもって課題に立ち向かっていく力の育成を目指し、「プロジェクト型学習(PBL)」及び「プロジェクト型の要素を取り入れた教科学習」を実践している。

取材・文 川崎ちづる

『【小学校教育2.0】名古屋市立矢田小学校の挑戦』の連載は、全3回。
第2回を読む。
第3回を読む。
※公開日までリンク無効

47 件
かわさき ちづる

川崎 ちづる

Chizuru Kawasaki
ライター

ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。

ライター。東京都内で2人の子育て中(2014年生まれ、2019年生まれ)。環境や地域活性化関連の業務に長く携わり、その後ライターへ転身。経験を活かし、環境教育や各種オルタナティブ関連の記事などを執筆している。WEBコラムの他、環境系企業や教育機関などのPR記事も担当。