「死にたい」と言う子を否定しない YouTuber葉一が悩み相談で気づいた今の子どもたちはなぜ「生きづらい」のか

シリーズ「不登校のキミとその親へ」#4‐3 教育系YouTuber・葉一さん~子どもたちの悩み~

教育系YouTuber:葉一

とあるイベントで贈られた色紙。「動画を見てくれている子どもたちと直接話す機会は、私にとってとても貴重だし何より楽しいですね」と葉一さん。  写真:日下部真紀

年々、増加し続け、今や小中学生で約30万人にも及ぶ子どもの不登校。現代の子どもたちを取り巻く大きな問題は何なのか。

教育系YouTuberとして子どもたちからあつい支持を持つ葉一さんが感じた今の子どもたちが生きづらい理由を聞きました。

第3回/全4回(#1#2を読む)

●葉一(はいち)プロフィール 
登録者数 199万人(2024年2月現在)の教育系YouTuber。1985年、福岡県生まれ。東京学芸大学卒業後、教材販売の営業、学習塾講師を経験。2012年からYouTubeチャンネル「とある男が授業をしてみた」を開設。小学3年生から高校生に向けた授業動画を配信し大人気に。公式サイト「19ch.tv(塾チャンネル)」ではプリントを無料配布。2児のパパ。

「失敗したら終わり」という思いが強い

今の子どもたちは強い「生きづらさ」を感じている子が多いです。表面的には元気に明るく振る舞っていても、心の中はギリギリのところまで追い詰められている。そのストレスが、不登校やイジメにつながっているケースも多いのではないでしょうか。

2021年9月から、音声プラットホームのvoicy(ボイシー)で「とある男が相談に答えてみた」という悩み相談をメインとした番組を始めました。

そこに寄せられる相談は、勉強や進路のことに加えて、人間関係の悩みやイジメに関することがたくさんあります。「もう死にたい」という書き込みも、10件に1件ぐらいの割合でありますね。

何が子どもたちを追い詰めているのか。私は大きな原因のひとつは、LINEグループを含めたSNSにあると思っています。

子どもたちは「失敗したら人生終わりだ」と感じている。「失敗は成功のもと」という言葉が通じないんです。

クラスで友だち同士のいざこざがあったとします。客観的に見たら、ちょっとしたボタンの掛け違いで「ごめんね」「こちらこそごめんね」で終わりという案件なのに、片方の子がクラスのグループLINEで「こんなこと言われた」と書き込んだとする。そうすると、もう片方の子の悪口がババーッと出てくるんですよ。で、ハブられるみたいな。

ネット上では芸能人や有名人の炎上がしょっちゅう起きていますが、子どもたちの世界でも炎上が身近にあるんです。しかも、悪いことをしたわけじゃないのに、誰かが情報操作みたいな感じでネガティブな情報を流したら、あっという間に悪者になってしまう。いったん「悪」というレッテルを貼られたら、簡単には復活できません。

そんな恐怖心をずっと感じながら生きていくのは、どう考えてもストレスがたまります。悪循環ですが、ストレスがたまると、はけ口を探したくなる。何か理由をつけて「こいつはイジメてもいい」ということにすれば、自分がイジメられる恐怖から逃れられます。

ほかの子どもたちも、イジメを止めに入ったら、自分がイジメられるかもしれない。昔からそういう構図はありましたが、より巧妙に、より深刻になっているように感じますね。

子どもたちがそうなったのは、同じようなことをしている大人を見てきていることも起因していると思います。

「悪者」を見つけては、寄ってたかって叩く。あとから誤解だとわかっても、謝ったりはしない。子どもたちは日々、大人の振る舞いを見ているんです。

「もう死にたい」と相談されたら

「とある男が相談に答えてみた」のコメント欄には、「もう死にたい」だけじゃなくて、具体的に「○月×日に死にます」と書いてくる子もいます。

「そんなことしちゃいけない」と正論で返しても、きっと響きません。しちゃいけないのは、当人もわかってる。わかった上で、そういう選択をせざるを得ないと考えてしまっているんですよね。

現実がつらすぎて「死にたい」という気持ちになるのは、私も昔の自分を思い出すとよくわかります。だから、気持ちを否定することはしたくない。

まずは「僕はあなたに生きていてほしい」と伝えます。「あなたが死んだら、悲しむ人間がここにひとりいる」ということも。

「みんな悲しむよ」だと「そんな人いない」と否定できちゃうんですよ。でも、私の思いの答えは私が持っているので。そのうえで、気持ちに寄り添いながらアドバイスを贈ります。

ひとくくりにはできませんけど、「もう死にたい」と送ってくる子は、止めてほしいという気持ちがどこかにあると私は思っています。本当に心で決めた人は、何も言ってこないと思うので。

だからこそ、どう返すのかが悩ましい。毎回、真剣です。私の言葉で「もう少し生きてみようかな」と思ってもらえることを強く願いながら話しています。

いちばんの宝物は2人の子どもとの時間。「ゲームをするときは本気で戦います。最近、なかなか勝てないんですよね」。  写真:日下部真紀

誰かに「正解」を選んでほしい

子どもたちが「生きづらさ」を強く感じる原因のひとつには、ネットの中に「正解」があふれていることもあると思っています。

勉強のやり方にしても、好きな人に振り向いてもらう方法にしても、検索すれば瞬時にたくさんの「正解」が出てきてしまう。

どれが「本当の正解」かなんて、誰にもわかりません。自分なりの正解を見つけるしかないんだけど、あまりにも「正解」が多すぎて迷ってしまう。まして、おもしろそうだからあえて「正解」以外の方法を選んでみようなんてことは、恐ろしすぎて考えもしません。

学校の先生に今の子どもの特徴は何ですかと聞くと、多くの人が「決められないこと」だと言うんですよね。自分で選んだ選択肢がベストじゃなかったら、あとから別の選択肢のほうが近道だとわかったら、それは子どもたちにとってあってはならない大失敗なんです。

「正解」以外を選んでしまうのが怖いから、たとえば勉強法なら、先生に「こっちにしなさい」と決めてほしい。人に決めてもらえば、あとでふり返って「やっぱり別の方法のほうがよかったかな」と思っても、自分のせいじゃありませんから。映画にしても本にしても、好き嫌いより「おもしろい保証があるか」をまず気にしてしまう。

人生なんて、失敗したり傷ついたりすることの連続ですよね。失敗を受け止めて、どう切り替えるか考えることを繰り返して、少しずつ成長できる。

だけど「失敗しないこと」が最優先で、誰かに「正解」を示してもらってばかりいたら、どうなってしまうのか。そのままの状態で社会に出て行ったら、間違いなく苦労するでしょう。

そんな危機感を強く持っているので、動画で勉強法やテスト前の過ごし方なんかを伝える場合も、「これは選択肢のひとつでしかないよ」という点を強調しています。自分に合うなと思ったらやってみればいいし、ちょっと違うなと思えばアレンジしてもいい。

ずっと言い続けていくことで、自分で選ぶ大切さが伝わればいいなと思っています。

取材・文/石原壮一郎

葉一さんの「不登校のキミとその親へ」は全4回。
第1回を読む。
第2回を読む。
第4回を読む。
※公開日までリンク無効

はいち

葉一

Haichi
教育系YouTuber

登録者数199万人(2024年2月現在)の教育系YouTuber。1985年、福岡県生まれ。東京学芸大学卒業後、教材販売の営業、学習塾...

いしはら そういちろう

石原 壮一郎

コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、数多くの著作や各種メディアで...