『泣いちゃいそうだよ』“凜ちゃんと広瀬くんの出会いのパフェ”を作ろう

小林深雪×福田里香 “児童文学キッチン” #11

児童文学作家の小林深雪さんと、お菓子研究家の福田里香さんのかわいい本『児童文学キッチン お菓子と味わう、おいしいブックガイド』から、読んで楽しい、作っておいしい、エッセー&レシピを厳選してお届けします。

11回は、小林深雪先生の「泣いちゃいそうだよ」シリーズ(青い鳥文庫)から。福田里佳先生があの二人のパフェのレシピを作ってくれました。乙女心炸裂です!


(「児童文学キッチン」のほかの記事を読む)
(撮影/青砥茂樹)

パフェ(福田里香)

〈あっけにとられた、次の瞬間。
大量の桜の花びらが、雪みたいにわーっと、空から降ってきた。
見上げると広瀬が木の枝を、わさわさ、揺らしている。
そして、こう叫んだの。
「小川。中学二年進級、おめでとう!」
むせるような桜の甘い香り。
次から次へと降ってくる祝福の花びら。
わたしの髪に、肩に、制服に、薔薇色の花びらが降りつもっていく。〉

『泣いちゃいそうだよ』(小林深雪/作   牧村久実/絵  講談社青い鳥文庫)より
満開の桜の下、新しいクラスに出遅れた凜ちゃんを、意外な方法でなぐさめた広瀬くん。

がんばれでも、くよくよするなでもなく、「おめでとう」と言ってくれるって、一番心に届きます。

客観的に桜を見れば、香りは淡いし、花びらはほぼ白い。しかし凜ちゃんは、降ってくる桜の花びらを「甘い香りで、薔薇色だ。」と感じます。

これは現実ではなく彼女の主観なのです。桜も薔薇に……そう、香りや色すらと違って感じるほど、強い歓喜が凜ちゃんを包んだのだ、と小林深雪さんは書いたのです。

彼女の小説の白眉、少女まんが成分を一番感じる秀逸な乙女表現です。

桜の花の塩漬けと薔薇の花びらのゼリーで、その気持ちを形にしました。

だって、涙は塩っぱくて甘い。(福田里香)

涙ぐむときは心が動いているとき。それは、生きている証(小林深雪)

〈想像してみること。心を見ること。表面だけに、まどわされないで、どんな人でも、自分と同じように、泣いたり、悩んだり、傷ついたりするっていうことをわかってあげること。人の痛みを理解すること。そして、間違えても、許してあげること。〉

『泣いちゃいそうだよ』(小林深雪/文 牧村久実   講談社青い鳥文庫)より
文章を書くことは嬉しい。

でも、ときには苦しい。

だから、誰かに読んでもらえる喜びを、大切にしたい。

歌をうたうことは楽しい。

でも、うたいたくないときだってある。

だから、きいてもらえることの喜びを、大切にしよう。

自分の気持ちを伝えられること。

そして、その気持ちが伝わったことをたしかめられること。それは、ほんとうに幸福なこと。言葉は人と人の間に、虹の橋をかけてくれるものだと思います。
 
でも、人の目にさらされるということは、予想外のことも、たくさんおこります。

たとえば「この本が面白いよ!」と書くと、「読んだけどちっとも面白くなかった!」と、クレームをつけてくる人が、必ずいます。

かといって、最初から、それを想定して、「この本を、わたしは面白いと思うけど、読む人によっては面白いと思わないかもしれません。」と書いたら、そんなことは、書く必要のない文章になってしまいますよね?

だから、書くことには、勇気が必要です。それと、強い心。信念とか覚悟のようなもの。

そして、それと同じように、人から「すごい。」と言われたくて、がんばって書くこともだめなのです。「こんなに持っているのよ。」と、持っているリボンを何百もつけたら、こっけいになってしまいます。気負いすぎても、うまくいきません。
 
自分のやってきたことは、自分がいちばんよく知っているのだから、自分を信じて平常心でいる。過剰な批判や過剰な賞賛に、踊らされないようにする。批判と同じように、成功も大きなストレスですから。

心を静かにして、いつでも文章が書ける状態を長くつくりだせる。そういう人が、「プロの文章家」になれるのだと思います。

『泣いちゃいそうだよ』は、これから、人生の大海へ出ていく子どもたちへ送るエールです。そして、いつでも子どもの心を失わない「あなた」へ贈る手紙です。(小林深雪)

塩っぱくて甘い、桜と薔薇の泣いちゃいパフェを作りましょう

材料(2人分)

小さなグラス 4個
80ml前後の容量のプリン型4~6個

●塩桜のゼリー
粉ゼラチン 1袋(5g)
水 大さじ1+250ml
桜の花の塩漬け 3輪

●薔薇のゼリー
粉ゼラチン 1袋(5g)
水 大さじ1+250ml
ハーブティー用のドライローズ 5輪
レモン果汁 小さじ1
砂糖 大さじ2

[フィリング]
生クリーム 100ml
いちご 8粒
砂糖 小さじ1
コーンフレーク 適量
市販のバニラアイスクリーム 120ml
パウダー 適量
黒蜜 適量
市販のチョコレートソース 適量
アラザン 適量
作り方

 塩桜 のゼリーを作る。容器に水大さじ1を入れ、粉ゼラチンを振り入れ、ふやかす。

  小鍋に水250mlを入れ、軽く沸騰させて火からおろす。1を混ぜて完全に溶けたら、桜を加える。用意したプリン型にそそぐ。

  薔薇のゼリーを作る。容器に水大さじ1を入れ、粉ゼラチンを振り入れ、ふやかす。

  小鍋に水250mlを入れ、軽く沸騰させて火からおろす。ドライローズを混ぜて、小鍋にふたをして5分むらす。

 4を再度火にかけ(ゼラチンをきれいに溶かすため、沸騰させないこと)、軽く湯気が立ったら火からおろす。3を混ぜて完全に溶けたら、レモン果汁と砂糖を混ぜる。用意したプリン型にそそぐ。
*このとき、ドライローズの花びらのきれいなものだけを数枚ずつ入れる。

 2と5をトレーにのせて、冷蔵庫で2時間ほど冷やして固める。

  グラスに盛りつける。生クリームは、泡立て器で8分立てにして、星型の口金をつけた絞り出し袋に入れておく。

  小さなグラスを2個用意し、コーンフレーク、きざんで砂糖と和えたいちご、アイスクリームを順に入れる。一方には抹茶パウダーをふるって黒蜜を、もう一方にはチョコレートソースをかける。

  8の上に生クリームをグラスのふちまで絞る。

10   9の抹茶と黒蜜のグラスには、塩桜のゼリーをのせる。チョコソースのグラスには、薔薇のゼリーをのせる。
*ゼリーの抜き方:型をぬるま湯にさっとつけて、ゼリーと容器の間に竹串を差し入れて空気を入れてやると、つるりと抜ける。

11  10のゼリーの上に生クリームをちょこんと絞り、アラザンを飾る。2個のグラスを1のお皿にのせる。これで1人分です。

「泣いちゃいそうだよ」についてのあれこれ(小林深雪)

明るく素直な凜、我慢強い優等生の蘭、強がりで弱みを見せるのが苦手な真緒、お笑い系女子の彩、男の子みたいな真琴、内気で真面目な泉、無邪気で天真爛漫な双子の七星など、いろんな女の子たちが主人公になって登場するシリーズです。友情、恋、部活、受験、家族。女の子の毎日には泣いちゃいそうなことがいっぱい! これは、あなたの物語です。
『泣いちゃいそうだよ』
著:小林 深雪 絵:牧村 久実 講談社青い鳥文庫

2006年にシリーズがはじまってからずっと、小中学生からの熱い支持がある「泣いちゃい」シリーズの記念すべき第1巻。スピンアウトを収録したアンソロジーなども含めると、「泣いちゃい」関連本はなんと45冊もあるのです!

23作品のお菓子がレシピ付きでかんたんに作れる!

『児童文学キッチン  お菓子と味わう、おいしいブックガイド』
文:小林深雪  料理:福田里香  講談社

読んで楽しい、作っておいしい!小林深雪先生の大好きな児童文学作品にインスパイアされたかわいいお菓子を福田里香さんのレシピつきで紹介!
*現在入手困難です。図書館などで探してみてくださいね。
(編集協力/俵ゆり)
こばやし みゆき

小林 深雪

Miyuki Kobayashi
作家

埼玉県生まれ。東京在住。武蔵野美術大学卒。ライター、編集者を経て、1990年作家デビュー。 「泣いちゃいそうだよ」「これが恋かな?」「作家になりたい!」シリーズ(すべて講談社青い鳥文庫)や、 エッセイ集『児童文学キッチン』、『おはなしSDGs /つくる責任つかう責任 未来を変えるレストラン』『スポーツのおはなし/体操 わたしの魔法の羽』、『どうぶつのかぞく/ホッキョクグマ ちびしろくまのねがいごと』『おしごとのおはなし/まんが家 ゆめはまんが家』(以上、すべて講談社)など著書は200冊を超える。 『デリシャス!』『恋人をつくる100の方法』など、漫画原作も多数手がけ、『キッチンのお姫さま』で講談社漫画賞受賞。

埼玉県生まれ。東京在住。武蔵野美術大学卒。ライター、編集者を経て、1990年作家デビュー。 「泣いちゃいそうだよ」「これが恋かな?」「作家になりたい!」シリーズ(すべて講談社青い鳥文庫)や、 エッセイ集『児童文学キッチン』、『おはなしSDGs /つくる責任つかう責任 未来を変えるレストラン』『スポーツのおはなし/体操 わたしの魔法の羽』、『どうぶつのかぞく/ホッキョクグマ ちびしろくまのねがいごと』『おしごとのおはなし/まんが家 ゆめはまんが家』(以上、すべて講談社)など著書は200冊を超える。 『デリシャス!』『恋人をつくる100の方法』など、漫画原作も多数手がけ、『キッチンのお姫さま』で講談社漫画賞受賞。

ふくだ りか

福田 里香

Rika Fukuda
菓子研究家

福岡県生まれ。武蔵野美術大学卒。大学の同級生だった小林深雪さんの書籍に携わったことから、この道に入る。これまでに小林深雪さんの4冊のレシピブック『キッチンへおいでよ』『ランチはいかが?(編集)』、『デリシャス! スイート・クッキング(スタイリング)』、『児童文学キッチン(共著)』(以上、講談社)に携わる。 単著に『民芸お菓子』(Discover Japan)『いちじく好きのためのレシピ』(文化出版局)、『新しいサラダ』(KADOKAWA)、『フードを包む』(柴田書店)、『まんがキッチン』(文春文庫)、『まんがキッチン おかわり』(太田出版)、共著に『R先生のおやつ』(文藝春秋)がある。

福岡県生まれ。武蔵野美術大学卒。大学の同級生だった小林深雪さんの書籍に携わったことから、この道に入る。これまでに小林深雪さんの4冊のレシピブック『キッチンへおいでよ』『ランチはいかが?(編集)』、『デリシャス! スイート・クッキング(スタイリング)』、『児童文学キッチン(共著)』(以上、講談社)に携わる。 単著に『民芸お菓子』(Discover Japan)『いちじく好きのためのレシピ』(文化出版局)、『新しいサラダ』(KADOKAWA)、『フードを包む』(柴田書店)、『まんがキッチン』(文春文庫)、『まんがキッチン おかわり』(太田出版)、共著に『R先生のおやつ』(文藝春秋)がある。