シリーズ累計10万部“季節の絵本”を生み出した作家・えがしらみちこの、これまでとこれから

えがしらみちこさん『あめふりさんぽ』10周年記念インタビュー

ライター:加治佐 志津

えほんやさんのこと、これからのこと

──2018年10月には、静岡県三島市に絵本専門店「えほんやさん」をオープンされました。絵本作家と絵本専門店代表の兼務でお忙しいかと思いますが、どんな気持ちでえほんやさんを始められたのでしょうか。

私は九州で生まれ育ったんですが、娘が生まれて間もないころに、夫の仕事の都合で三島に引っ越してきました。土地勘もなく、知り合いもいないなか、赤ちゃんを抱えての新生活。まだ仕事も少なかったので、社会との接点も少なくて、昼間は家で赤ちゃんと二人きり。子育てにまつわる情報もなかなか入ってこなくて、最初は心細い思いをしました。

そんな経験もあって、子育て中のお母さんお父さんが子連れで気軽に立ち寄れて、子育ての情報を得られる、拠りどころとなる場所がもっとあったらいいのにな、と思うようになったんです。

また、絵本作家として活動する中で、福岡の「子どもの本の専門店エルマー」さんや、東京・三鷹の「よもぎBOOKS」さんのような地域密着型の絵本専門店と出会って、私もいつかこういうお店を開きたいなという気持ちも芽生えてきました。

そのときは、もっと先の夢として漠然と思い描いていただけだったんですが、絵本作家・宮西達也さんのギャラリーの隣が空き店舗になったのをきっかけに、急に夢が現実味を帯びてきて。私より少しあとに出産して母となった妹が「お店をやるなら手伝いたい!」と言ってくれたのも大きかったですね。

クラウドファンディングなどを通じてたくさんの方々に応援していただきながら、2018年10月にえほんやさんをオープンすることができました。妹は今、えほんやさんの店長を務めてくれています。

──コロナ禍もありました。

オープンして1年ちょっとでコロナが流行って自粛生活が始まって……そのころはもう、ただただ必死でしたね。ただ、コロナの影響で来客数は減ったんですが、オンラインで利用してくださるお客さんが増えたり、SNSでつながる方々も増えたので、それはよかったのかなと。コロナが明けてからは、三島に観光を兼ねていらして、えほんやさんにも立ち寄ってくださるという方も結構いらっしゃって。リアルとオンライン、それぞれのよさを生かしていけたらいいなと思うようになりました。
三島市の広報誌の表紙を飾る。
──最後に今後の展望を聞かせていただけますか。

2024年4月に「絵本のまち三島」宣言式があって、私も立会人のひとりとして同席させていただきました。「水の都 三島で子育て」というキャンペーンでもイラストを担当しています。自分のできることで、地元・三島に恩返ししていけたらと思って。日々の暮らしや、人との出会いも大切にしていきたいですね。

絵本作家としては、ずっと手元に置いておきたいと思ってもらえるような作品を生み出していきたいです。『あめふりさんぽ』をはじめとする「おさんぽ」シリーズも、親子での散歩の思い出とともに、大切にしていただけたらうれしいです。
『あめふりさんぽ』えがしら みちこ
『はるかぜさんぽ』えがしら みちこ
『さんさんさんぽ』えがしら みちこ
『あきぞらさんぽ』えがしら みちこ
『ゆきみちさんぽ』えがしら みちこ
40 件

えがしら みちこ

Michiko Egashira
絵本作家

1978年、福岡県生まれ。熊本大学教育学部卒業。水彩を使用した透明感のある画風が特徴。絵本に『あめふりさんぽ』『さんさんさんぽ』『ゆきみちさんぽ』『はるかぜさんぽ』『ねんねのうた』『クリスマスのおとしもの』、『いちねんせいの1年間 わたし、もうすぐ2ねんせい!』(文・くすのきしげのり)『せんそうしない』『ありがとう』(ともに文・谷川俊太郎)『はこちゃん』(文・かんのゆうこ 以上すべて講談社)、『おたんじょうケーキをつくりましょ』(教育画劇)、『なきごえバス』(白泉社)、『いろいろおてがみ』(小学館)、『しいちゃんおひめさまになる』(アリス館)、『あのね あのね』(あかね書房)、『あなたのことが だいすき』(原案・西原理恵子 KADOKAWA)など、装画と挿絵に『あかりさん、どこへ行くの?』(フレーベル館)、『さくら 原発被災地にのこされた犬たち』(金の星社)などがある。雑誌や教科書などの挿絵も多く手がけている。2018年、子育てママパパの居場所にと、静岡県三島市に絵本専門店「えほんやさん」をオープン。代表もつとめている。 http://www.tenkiame.com/

1978年、福岡県生まれ。熊本大学教育学部卒業。水彩を使用した透明感のある画風が特徴。絵本に『あめふりさんぽ』『さんさんさんぽ』『ゆきみちさんぽ』『はるかぜさんぽ』『ねんねのうた』『クリスマスのおとしもの』、『いちねんせいの1年間 わたし、もうすぐ2ねんせい!』(文・くすのきしげのり)『せんそうしない』『ありがとう』(ともに文・谷川俊太郎)『はこちゃん』(文・かんのゆうこ 以上すべて講談社)、『おたんじょうケーキをつくりましょ』(教育画劇)、『なきごえバス』(白泉社)、『いろいろおてがみ』(小学館)、『しいちゃんおひめさまになる』(アリス館)、『あのね あのね』(あかね書房)、『あなたのことが だいすき』(原案・西原理恵子 KADOKAWA)など、装画と挿絵に『あかりさん、どこへ行くの?』(フレーベル館)、『さくら 原発被災地にのこされた犬たち』(金の星社)などがある。雑誌や教科書などの挿絵も多く手がけている。2018年、子育てママパパの居場所にと、静岡県三島市に絵本専門店「えほんやさん」をオープン。代表もつとめている。 http://www.tenkiame.com/

かじさ しづ

加治佐 志津

Shizu Kajisa
ライター

新聞記事やWEBメディアの編集・執筆を経て、2009年よりフリーランスライターに。絵本と子育てをテーマに取材・執筆を続ける。これまでに取材した絵本作家は100人超。漫画家の夫と2013年生まれの子鉄の3人暮らし。

新聞記事やWEBメディアの編集・執筆を経て、2009年よりフリーランスライターに。絵本と子育てをテーマに取材・執筆を続ける。これまでに取材した絵本作家は100人超。漫画家の夫と2013年生まれの子鉄の3人暮らし。