2022.05.26

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1年生の強~い味方! 「小1の壁」を乗り越える「日曜日」シリーズの魅力とは?

小学生たちが図書館で夢中! シリーズの人気の秘密を読み解く

新学期が始まってもうすぐ2か月。新1年生はそろそろ「小1の壁」にぶつかっているかも。ひとつ上の学年に進級した子どもたちも、新しい環境にまだまだとまどいをおぼえているころかと思います。

子どもたちが小学校に慣れるには、小学校がどんなところか知るのがいちばんの早道かもしれません。そこで、ぴったりの本を紹介します。

村上しいこさんの「日曜日」シリーズは、「音楽室」や「理科室」など、学校の部屋を舞台にした物語で、小学校低~中学年の子どもたちの人気シリーズとして定着しています。

このシリーズの人気の秘密を、大阪国際児童文学振興財団の土居安子さんに教えていただきました。

村上しいこさんの「日曜日」シリーズは、日曜日の学校で、いろいろな部屋の道具たちが活躍する物語です。図書館ではいつも貸出中になっているほど、子どもたちに大人気です。その理由を探ってみたいと思います。

「笑い」の要素がいっぱい

 まずは、何といっても、読みながらゲラゲラ笑ってしまうほどおもしろいこと。

音楽室や給食室、体育館などの道具たちが人間の言葉を話すだけでもおもしろいのに、温泉に行ったり、動物園に行ったりして、人間と会話をします。

その会話は関西弁。人体模型が顕微鏡に「じまんはないけど、じんましんなら、ほらっ。」(『理科室の日曜日』)というようなダジャレもあります。

また、学校の道具たちが突っ込んだり、突っ込まれたりしながら、ユーモラスな会話を繰り広げます。

『音楽室の日曜日』より

「非日常」の学校を想像する

子どもたちの学校生活は時間に追われてなかなかハードです。

けれど、「日曜日」はお休みの日。道具たちが自由に遊ぶ日曜日の学校の様子を知ることで、学校への親しみがわく子どももいるかもしれません。

行ったことのない教室やそこにある道具を知って興味を抱くかもしれません。学校の怪談と同じように、自分たちが通っていない時間の学校を想像する楽しさがこのシリーズにはあります。

「日曜日」シリーズは、2010年の『音楽室の日曜日』でスタートしてから、これまで23巻刊行されています。「音楽室」や「理科室」など、舞台になった学校の部屋は13部屋にのぼります。

1巻目の『音楽室の日曜日』では、「リコーダー」や「シンバル」など音楽室の楽器たちが登場。子どもたちの合唱を聴いて、自分たちも歌ってみたくなった楽器たち繰り広げる騒動が生き生きと描かれます。

「こんな子いるいる」と思える道具たち

シリーズに出てくる道具たちは、みんな個性的。田中六大さんの絵によって、道具が話したり、動いたりすることがとても自然に感じられます。

中には、文句ばかり言ったり、みんなが何か楽しいことをしようとしているときに、うまく仲間に入れなかったり、マイナス要素ばかりが気になる道具がいます。

たとえば、『音楽室の日曜日』に登場するけんばんハーモニカは、カスタネットがみんなで歌を歌おうと言うのに、「自分から歌おうなんて、がっきとしての道をふみはずしんてんのとちゃうか?」「がっしょうしたところで、だれにきいてもらうんや?」「けど、なに歌うんや?」と反対意見を言い続けます。

「わたし/ぼくにも こんなところあるな」とか、「同じクラスの○○さんに似ているな」などと感じる子どもも多くいることでしょう。

『音楽室の日曜日』より

けんかをしてもなかよし。失敗しても大丈夫

道具たちは、時にけんかをしますが、仲直りをします。失敗もしますが、どこか楽天的で前向きに行動し、最後にはめでたしめでたしで終わります。どんな問題が起こっても、「えらい人」に解決してもらうのではなく、話し合いをし、お互いを気づかいながら、道具が自分たちで解決します。

たとえば、『教室の日曜日 パンツをはいた宇宙人』の時計は、大なわとび大会の練習で失敗ばかりをする消火器のことをじゃまにします。道具たちはたまたまやってきた宇宙人に助けてもらって、時計をこらしめようとしますが、宇宙人は間違って光線を使って消火器を消してしまいます。

時計は仲間に消火器につらくあたったのは「しょうかきがしっぱいするのを、みるのがかわいそうで、いややったんや。」と告げ、見つかった消火器に謝って仲直りをします。

 こんなふうに、どんな道具も「なかま」として大事にされる点は、子どもたちが共感する大きな理由だと思います。

『教室の日曜日 パンツをはいた宇宙人』より

道具のほかにも、奇想天外な登場人物がいっぱい

『家庭科室の日曜日』で、おばけが出てきててるてるぼうずと友だちになります。『用具室の日曜日 カミナリこぞうときえたふくろう』には、おかあさんを探しているカミナリこぞうが出てきますし、『資料室の日曜日 ミイラとハロウィン』には、エジプトのミイラが出てきて、ほうたいを巻きなおして欲しいといいます。ほかにも、からす天狗や魔女など、魅力的な登場人物が数多く出てきます。

『資料室の日曜日 ミイラとハロウィン』より

好奇心旺盛で遊びの要素がたっぷり

道具たちは、せっかくの日曜日を楽しく過ごそうと、料理、おでかけ、お泊り会、劇などに挑戦します。時には、道具たちが水泳大会や文化祭やなわとび大会などの学校行事を繰り広げていて、ごっこ遊びをしているような楽しさが感じられます。

道具たちは、おもしろいことをするためには、必死になり、うまくいかないと、あきらめずに、いろいろなアイデアを出して工夫します。困った人がいると、助けずにはいられない優しさも持っています。

読者は、道具たちの失敗を読みながら、自分だったらこうするな、こんなふうにもできるかもしれないと想像することができます。

目が離せない展開

読みやすい文章で、道具たちの身の回りで事件が次々と起こり、「次はどうなるか」と思って読み進めていくと結末まであっという間にひっぱられ、「あーおもしろかった」と終わる展開になっています。

小学校低学年から中学年の子どもが読んでもらっても自分で読んでも楽しいシリーズで、人気はまだまだ続くと思います。見返しに舞台となっている町の地図があるので、これまで読んだシリーズをたどることもできるようになっています。

物語の舞台「せんねん町」の地図

シリーズ累計20万部を突破した「日曜日」シリーズ。最新作は『あそび室の日曜日 町長さんのアイドルコンテスト』は5月26日発売発売。これまでこのシリーズを知らなかった方も、ぜひお手にとってみてください!

『あそび室の日曜日 町長さんのアイドルコンテスト』
村上しいこ・作 田中六大・絵
日曜日のあそび室で、お人形遊びをはじめたおじさん。
あやしいそのおじさんは、なんと、せんねん町の町長さんでした!

むらかみ しいこ

村上 しいこ

Shiiko Murakami
作家

三重県生まれ。『かめきちのおまかせ自由研究』で第37回日本児童文学書協会新人賞、『れいぞうこのなつやすみ』で第17回ひろすけ童話賞、『...

たなか ろくだい

田中 六大

絵本作家

1980年、東京生まれ。挿画に『ひらけ!なんきんまめ』(作:竹下文子/小峰書店)、「日曜日」シリーズ(作:村上しいこ/講談社)、絵本に...

どい やすこ

土居 安子

Yasuko Doi
大阪国際児童文学振興財団理事・総括専門員

読書活動や日本児童文学史に関する研究を行うと同時に教員・司書・ボランティア等に対し読書活動にかかわる研修や、国内外の児童文学作家の講演...

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