2022.06.18

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『怪盗クイーン』は「夢水清志郎」から誕生? 元教師の人気作家はやみねかおるの世界

『怪盗クイーン』シリーズ著者・はやみねかおる先生インタビュー 後編

©はやみねかおる・K2商会・講談社/「怪盗クイーン」製作委員会

『夢水清志郎』シリーズは累計360万部、『都会(マチ)のトム&ソーヤ』シリーズは累計200万部、『怪盗クイーン』シリーズは累計120万部を超え、子どもから大人まで幅広い世代に愛される作家・はやみねかおる先生。

2021年7月には、『都会のトム&ソーヤ』が実写映画が公開され、その人気はさらに急上昇。

そして『怪盗クイーン』がなんと初の劇場アニメに! 2022年6月17日、『怪盗クイーンはサーカスがお好き』が全国公開になりました!

そこで、映画公開を記念して、はやみね先生にインタビュー。

前編では、劇場アニメに寄せる想いについて。後編では、『怪盗クイーン』シリーズ誕生の秘話や、執筆中の様子についてお話いただきました。

(全2回の後編。前編はこちら

「もっと破天荒に動きたい」とクイーン自身が語りかけてきた!?

©はやみねかおる・K2商会・講談社/「怪盗クイーン」製作委員会

――「怪盗クイーン」というキャラクターは、どのような経緯で生まれたのでしょう?

はやみねかおる先生(以下、はやみね先生):1997年7月に刊行した『ギヤマン壺の謎:名探偵夢水清志郎事件ノート外伝』で、“怪盗九印(くいん)”という軽業師の女性が出てくるんです。あの人の子孫というかたちで、クイーンという名前が出てきたのかなと思っています。

夢水清志郎を書いているわりと早い段階から、“名探偵には怪盗というライバルがいる”というのが頭にありました。そういった意識もあり、「怪盗クイーン」という存在が現れたのかなと思います。

――初作の『怪盗クイーンからの予告状』が2000年9月25日刊行。そこから20年以上、『怪盗クイーン』シリーズを書き続けていらっしゃいます。これほど長く続けられた理由はありますか?

はやみね先生:最初のうちは、読者を驚かせるために、どうトリックを仕掛けるかという、ミステリーの意識が強かったと思います。

しかし2作目『怪盗クイーンの優雅な休暇(バカンス)』を書いているときに、「クイーンは、もっと自由に書いてええんちゃうかな?」という意識が出てきました。

また、クイーンからも「私は、もっと破天荒な行動をしてもいいんじゃないか?」という想いを感じていたんです。そこで従来の作品よりも、ファンタジー要素を多く入れることにしました。

これで読者の方から受け入れられなければ、『怪盗クイーン』シリーズは終わっていたと思いますが、ありがたいことに多くの方に受け入れていただき、ここまで書き続けることができました。

――作品を書き続けるうち、キャラクターに変化を感じた部分はありますか?

はやみね先生:ジョーカーに関しては、最初は“笑えない”キャラクターとして描いていたのですが、いつの間にか「ジョーカーが微笑んだ」というような文章を書いていたんです(笑)。

読者の方からのお手紙で気が付いたのですが、確かめると、確かに彼が微笑んでいて、私も驚きました! その後もジョーカーはときどき微笑しているので、変わったんやなぁと思っています。

RDは、私も知らないところで人工知能の彼女さんを作っていて「なんや!」と思いました(笑)。RDのほうが、クイーンやジョーカーより青春しているんじゃないでしょうか。

©はやみねかおる・K2商会・講談社/「怪盗クイーン」製作委員会

物語の舞台や盗むものを決めれば、あとは3人が動いてくれる

――キャラクターの生みの親ははやみね先生ですが、作品と共にキャラクターも育っていくのですね。

はやみね先生:最初のうちは私が考えて動かすこともあるのですが、ある程度話が進むと、自在に動いてくれるようになります。

今はクイーンたちも、私が物語の舞台や何を盗むかという設定だけ決めて、3人をその場に放り込むと、後は勝手に会話したり動いたりしてくれるので、とてもラクですね。

私のキャラクターでいうとクイーン、夢水清志郎(夢水清志郎シリーズ)、真野萌奈美(モナミシリーズ)の3人だけは、最初から「こういう感じで!」と向こうから言ってくるのをそのまま書いていました。

また、「怪盗クイーン」シリーズの最新作『楽園の名画を追え』では、思いもよらない二人が結婚するということも起こりました。

付き合っているのは薄々感じていましたが、「いつの間に結婚したんだ!?」と驚きましたね。息子や娘から、急に「お父さん、結婚するわ~」と言われた気分でした(笑)。

©はやみねかおる・K2商会・講談社/「怪盗クイーン」製作委員会

――「怪盗クイーン」シリーズを書くうえで、意識していることはありますか?

はやみね先生:“怪盗”というのは、モノを盗む存在です。モノを盗むというのは、悪いこと。私は教師をやっていたということもあり、「悪いことをするキャラクターを主人公に、物語を書いてもいいのか?」ということがずっと引っかかっていました。
原作者のそうした引っかかりを感じて、クイーンも「仕事をしたくない」とソファでゴロゴロしているのかもしれません。

それと例えば、畑の大根を盗んだとしても、犯行声明のカードを残しておき、それを売ったら大根を数百本買えるぐらいのお金になるなど、物語をそうした作りにしているのは、私の“モノを盗む”ことへの引っかかりが反映されていると思っています。

――映画化となった『怪盗クイーンはサーカスがお好き』は今から20年前、2002年3月に刊行されました。当時のことで覚えていることはありますか?

はやみね先生:私は2000年に教師を辞めたのですが、それから1年ぐらい「授業をしたいな」、「今ごろ生徒たちは、何してんのやろ?」などと思ったりして、教職にかなり未練がありました。

その頃、北村薫先生と対談させていただく機会があり、教育や子どもについていろいろとお話しするうちに、「学校の先生でなくとも、子どもたちと関わることはできるし、先生っぽいことだってできるんじゃないか」と前向きな気持ちになったのです。

そこで、教員を辞めてからずっと伸ばしっぱなしだった長い髪を切り、クイーンを書き始めました。

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