『夢水清志郎』シリーズは累計360万部、『都会(マチ)のトム&ソーヤ』シリーズは累計200万部、『怪盗クイーン』シリーズは累計120万部を超え、子どもから大人まで幅広い世代に愛される作家・はやみねかおる先生。
2021年7月には、『都会のトム&ソーヤ』の実写映画が公開され、その人気はさらに急上昇。
そして『怪盗クイーン』がなんと初の劇場アニメに! 2022年6月17日、『怪盗クイーンはサーカスがお好き』が全国公開となりました!
『怪盗クイーン』は、美しくも気まぐれで“蜃気楼(ミラージュ)”の異名をもつクイーンが、常に冷静で武道の達人でもあるジョーカーと、人工知能のRDをパートナーとして、世界を舞台にさまざまなものを盗んでいくストーリー。
今回、映画公開を記念して、原作者のはやみねかおる先生にインタビュー。前編では、劇場アニメに寄せる想いについてたっぷりお話いただきました。
(全2回の前編。後編は6月18日公開)
アニメ化は浮かれないよう用心していた!?
作家生活32年。ジュブナイルミステリーの第一人者として、読者をワクワクさせ続けてきたはやみねかおる先生。子どものころから、はやみね先生の作品を読み続け、大きくなったという人も多く、“はやみね世代”が誕生しているほどです。
はやみね先生は、作家になる前、小学校教師をされていたという経歴の持ち主で、教師と作家の二足のわらじを10年ぐらい履き続けた後、作家業に専念。教師時代は、授業の後に自作の物語を話していたと言います。
そんなはやみね先生に、まずは『怪盗クイーン』の映画化についてお話を聞きました。
――『怪盗クイーン』シリーズが劇場アニメ化になるというお話を聞いたときはどんなお気持ちでしたか?
はやみねかおる先生(以下、はやみね先生):「アニメになるんだ!」と、とても嬉しかったですね。ただ、せっかくお話をいただいても、途中でダメになる可能性があるかもしれないと思い、あまり喜びすぎて後でガッカリするのだけはやめようと用心していました(笑)。
映像化に際しては楽しみな気持ちが大きく、不安といえば、私の独特なクセのある文章を映像化するのは難しいかもしれない……というところ。アニメ製作スタッフの方々が「こんな原作の映画、もう作りたくない!」とイヤにならないか、それがいちばん心配でした(苦笑)。
――オンラインで、アフレコ現場もご覧になったそうですね。
はやみね先生:はい。皆さんの仕事ぶりに、「すごいなぁ」と感心しきりでした。物語の状況に沿って「そのときはこういう気持ちで」、「ここは間を空けて」など、音響監督さんがリクエストし、声優の方々はその注文にすぐ応じながらアニメーションに合わせてセリフを読み、的確に表現されるんです。
文字で書いてあるだけのセリフに命を吹き込んでいくという作業は、見ていてとても新鮮でしたし、「さすがプロだな」と感動しました。
大和さん、加藤さん、内田さんの声でセリフが脳内再生されるように
――クイーン役を大和悠河さん、ジョーカー役を加藤和樹さん、RD役を内田雄馬さんと、豪華なキャストが注目を集めています。
はやみね先生:クイーンというキャラクターは、小説に「とても美しい」という描写があるのですが、美しく華麗なだけでなく、おちゃめな部分も大和さんがリアルに表現してくださって、とても嬉しかったですね。
加藤さんは、以前にご出演されていたドラマ『乾杯戦士アフターV』シリーズが大好きでずっと拝見していたので、「あのブルー役の方や!」と大喜びでした(笑)。淡々とクールな雰囲気をジョーカーでも出してくださり、もう最高でしたね!
RDに関しては、人間のキャラクターではないので、演じるのも難しいのではないかと思っていたのですが、とても絶妙なバランスで演じてくださり、素晴らしかったです。
――はやみね先生は、小説を書かれる際に、キャラクターたちの声をイメージしたりしたことはあったのでしょうか?
はやみね先生:いえ、普段は音やビジュアルはまったく浮かばず、イメージをひたすら文章で書いていくタイプです。でもアフレコで3人の声を聞かせていただいてから、原稿を書くときはあの3人の声でセリフが脳内再生されるようになりました。
皆さん、本当にとても自然に演じてくださっていて、私の中にも皆さんの声がキャラクターの声としてスッと入ってきました。
――ご自分が書いてきた物語やキャラクターが、アニメーションとして立ち上がっていくのを見るのは、どのような感覚でしたか?
はやみね先生:素直に嬉しかったですね。またキャラクターたちのアクションや動きを視覚的に見せていただけたのは、勉強になりました。逆にアニメーションの動きを文章で表現するとなったら、本当に難しいだろうなと思いましたね。
今回、劇場アニメのノベライズをしていただいたのですが、サーカスのアクションシーンの描写を読んでから、自分が書いた原稿を読み返し、「こう書かなければいけなかったのか」と反省しました(笑)。