2022.04.22

ブックマーク

『星の王子さま』の星に咲いた、4つのトゲをもつ花のチョコレートを作ろう

読んで楽しい、作っておいしいエッセー&レシピ 児童文学キッチン#05

児童文学作家の小林深雪さんと、お菓子研究家の福田里香さんのかわいい本『児童文学キッチン お菓子と味わう、おいしいブックガイド』から、読んで楽しい、作っておいしい、エッセー&レシピを厳選してお届けします。

第5回目は、サン=テクジュペリの『星の王子さま』から。小さな王子さまが遠い自分の星に残してきてしまった小さな花を作りましょう。花の、けなげな四つのトゲも、チョコレートでつけて。(「児童文学キッチン」のほかの記事を読む)

王子さまは、わがままな花のもんくをやさしくきいて、夜はガラスのおおいをかけてあげました。(撮影/青砥茂樹)

王子さまの星に咲いた、 四つの小さなトゲをもつ花のチョコレート(福田里香)

<そして、花に最後の水をやり、ガラスのカバーをかけてやろうとしたとき、王子さまは、いまにも泣きだしそうになっていた。
「さよなら、お別れだね。」
 王子さまは花に言った。
 花は答えなかった。
「さよなら……。」
 王子さまはくりかえした。
 花は、コホンと、せきをした。風邪をひいていたわけじゃない。> 
『星の王子さま』より

『星の王子さま』とわたしが出合ったのは小学校三年生のとき。

サン=テグジュペリが自ら描いた挿絵も素敵で、フランスに憧れを募らせる時期と重なったこともあり、ついにはフランス語版の朗読LPレコードも買いました。

大人になって読み返すと、こんなに印象の違う話も珍しい。暗喩や示唆、皮肉、寓話が込められていたり、一つのエピソードを何通りにも読み解けると感じたり。

なかでも花の印象は鮮烈で、きっと自分の人生にも思いあたるはず。

大人になったあなたは、王子さまの心境になったり、花の立場になったり。どんな人生の機微を読み取るのでしょうか。

遠くにあるようで近くにある特別な世界(小林深雪)

<「砂漠があんなにきれいなのは、どこかに井戸をかくしているからだよ……。」
「秘密を教えよう。とてもかんたんなことだ。心でなければ、ものは見えないってことさ。かんじんなことは、目では見えないんだ。」>
『星の王子さま』より

よけいなものが、いっさい省かれている本です。そのぶん、一行が重くて深い。

だから、読み終わったあと、気になった言葉を自分の心の奥深くにしまっておきます。

言葉は種です。

そのときは、意味がよくわからなくても、心にまかれた種が、数年後に芽を出して、
「あ! そういうことだったんだ!」
と、心に花を咲かせることがあるのです。

親戚が本屋さんだったので、ときどき、母に連れていってもらい、そこで、好きな本を選んで買っていいことになっていました。絵本でも漫画でも雑誌でもお料理の本でも、好きなものを選んでいいのです。それがほんとうに楽しみでした。

親から本を読むことを強制されたことは、一度もありません。「この本も、おもしろいのよ。」と言われることはあっても、最終的には、買う本は、子供たち(兄と姉とわたし)だけで選びました。

だから、肩の力を抜いて、気軽にいろいろな本が楽しめました。兄の選ぶ少年漫画も、姉の選ぶ少し大人っぽい詩集も、わたしが選ぶムーミンも、同時期に同じように楽しめたのは、とても幸せなことでした。

『星の王子さま』も、そうやって、自分で選んだ本です。かわいいタイトルとイラストにひかれて手に取ったのですが、読み始めたら、とても考えさせられる内容で驚きました。

「読書感想文が苦手。」「課題図書が嫌い。」

以前、小学校訪問をしたとき、子どもたちは口をそろえてそう言っていました。わたしには、その理由がよくわかります。

「がんばって読まなくちゃならない。上手な感想を書かなくちゃいけない。」という緊張と重圧が、子供を本嫌いにさせてしまう。それは、ほんとうにもったいない。

子ども時代大好きだった本を、大人になってから再び手に取ると、なつかしさに胸が高鳴ります。そして、読み返してみると、新しい発見があります。

それは、思いがけないところから、心地よい風が吹いてきたような気持ちなのです。

それを、ぜひ、みんなにも味わってほしいなと思うのです。(小林深雪)

花のすがたをチョコレートでお菓子の姿にしてみました(福田里香)

材料(直径6㎝の花1輪分)

小枝(または木製スティック) 1本
板ホワイトチョコレート 40g(約1枚)
フリーズドライのラズベリー 数粒
アラザン 適量

作り方

下準備:小枝はきれいに洗って、よく乾かす。

   トレーにクッキングシートを敷き、小枝を置く。

   板チョコを包丁で細かくきざみ、ボウルに入れる。これを30~35℃の湯せんにかける。湯に手を入れるとお風呂よりぬるく感じるくらいが温度の目安(温度を上げすぎるとチョコが変色するので注意)。ちょっと時間がかかるが気長にスプーンで混ぜて、なめらかに溶かす。

   2をスプーンですくって、ジッパー付きビニール袋に詰める。空気を出して、ジッパーをきっちり閉めたら、袋の底の角をハサミで3㎜切って、絞り出し袋にする(写真右側参照)。

   3を手で持って、1の小枝の先にからめながら、直径6㎝の円形になるように、ぐるぐると絞り出す。小枝に4か所、小さなトゲを絞り出す。

  4の上に、手で粗くくだいたラズベリーとアラザンを散らし、指で軽く押さえる(写真左側参照)。

枝はきれいに洗ってかわかしたものを使ってください。(撮影/青砥茂樹)

   完全に固まったら(寒い場所に置くと早く固まる)、クッキングシートからそっとはがす。グラスに砂糖(分量外)を詰めて、小枝をそっとさす。

*チョコに水が入ると変質するので、湯せんのボウルはチョコのボウルより小さいものにして、絶対に湯が入らないようにする(下の写真参照)。

*作業は25℃以上の温かい部屋でやると、チョコが固まりにくいから、デコレーションがスムーズ。

湯せんのボウルは、チョコのボウルよりも小さいものを選んで。チョコに水が入らないコツです。(撮影/青砥茂樹)

『星の王子さま』についてあれこれ(小林深雪)

アントワーヌ=ド=サン=テグジュペリ(1900~1944)は、フランスの作家。父は伯爵でした。アフリカや南アメリカへの定期便や郵便飛行機のパイロットとして活動したのち、自身の体験をもとに、『飛行士』『夜間飛行』『南方郵便機』などの小説を出版。その後、軍隊に入り、地中海の上空を飛行中に行方不明となります。遺作となったのが、この『星の王子さま』。その生涯もまるで小説のようですよね。なんともいえない魅力的なイラストも作者自身が描いています。

『星の王子さま』
作:サン=テグジュペリ 訳:三田誠広 講談社青い鳥文庫

むずかしい漢字にふりがなつきで、小さいお子さんでも読みやすい児童文庫版。サン=テクジュペリ自身の手になるイラストも収録。

お話から生まれた23のかわいいお菓子がレシピ付きで作れる!

『児童文学キッチン  お菓子と味わう、おいしいブックガイド』
文:小林深雪  料理:福田里香  講談社

読んで楽しい、作っておいしい!小林深雪先生の大好きな児童文学作品にインスパイアされたかわいいお菓子を福田里香さんのレシピつきで紹介!
*現在入手困難です。図書館などで探してみてくださいね。

(編集協力/俵 ゆり)

こばやし みゆき

小林 深雪

Miyuki Kobayashi
作家

埼玉県生まれ。東京在住。武蔵野美術大学卒。ライター、編集者を経て、1990年作家デビュー。 「泣いちゃいそうだよ」「これが恋かな?」...

ふくだ りか

福田 里香

Rika Fukuda
菓子研究家

福岡県生まれ。武蔵野美術大学卒。大学の同級生だった小林深雪さんの書籍に携わったことから、この道に入る。これまでに小林深雪さんの4冊のレ...

小林 深雪さんのおすすめ記事

福田 里香さんのおすすめ記事

児童文学キッチンカテゴリーのランキング
人気記事・連載ランキング