えがしらみちこ 「はじめました えほんやさん」第9回

えがしら みちこ

※この記事は、講談社絵本通信(2019年4月)掲載の企画を再構成したものです。
 
こんにちは。絵本作家のえがしらみちこです。

暖かい日が続いたかと思うと、急に寒くなる時期ですね。
先日きた強烈な寒気の日には、ついにお客さんが1人も来ない、という体験をしてしまいました。
「絵本が1冊も売れない日はなかった」と発言したばかりだというのに……寒さは商店街の敵!

開店休業状態

お花見と絵本

3月~4月は桜の季節です。
「えほんやさん」から徒歩2分くらいの場所にある三嶋大社には、3月下旬に咲く枝垂れ桜から4月上旬に咲くソメイヨシノまで、15種類の桜が200本あり、屋台も並ぶため花見の人がたくさん集まるという話を聞きました。

年始の初詣ラッシュを体験した私たちは、きっと4月もたくさんくるぞと踏んで、いつもより仕入れの冊数を増やして待機。

ドキドキそわそわ準備していたのですが……。

予想は大きく外れ、入店してもしばらく店内を見渡してそのまま出て行く人ばかり……。
桜を見た後は、絵本を読む気分にはならないのかなぁ。セレクトがはまらなかったのかしら。
と、モヤモヤする数日でした。

お陰で、大量に発注した絵本が、カフェスペースに山積み状態です。ゴールデンウィークにはたくさん出てくれるかな、と期待しつつ、購買意欲を予想する難しさが身に染みています。

「どの絵本が欲しい?」と聞くことについて

お子様連れのお母さんがよく口にする「どの絵本が欲しい?」という言葉、私も娘が小さい時に言ってしまっていたのですが、そこから始まるやりとりで、お互いが幸せな結末になることって少ないのかも……と考えさせられます。

この言葉、ほんとによく聞こえてきます。

子どもが選んだ絵本に対して「それは、字が多いから難しいかも……」とか「それは、小さい子向けの絵本だから……」と言って結局は、親が選んだ絵本を買っちゃったり、買わないで出て行く方の多いこと!

そういう小さなやりとりでも不完全燃焼感が溜まったり、「ママは私が選ぶものを受け入れてくれない」と思ってしまうのではないかな……と、客観的に見ていて少し悲しくなる時もあります。

でも、私もやっちゃってました。
結局、「自分がOKだと思う絵本を選んで欲しい」「自分に適した絵本を、自分でわかっているはず」と、よく分からない期待をしていたのだなと思うのです。
それに気づいてからは、「どれが欲しいって聞いたのに、買わなくてごめんね。」と言うようにしたのですが「どの絵本が欲しい?」と、聞いたからには、それを受け入れたほうがいいのよね、と思っています。


そう言いつつ、お菓子を買う時も、スーパーで選ばせておきながら、最終的には口をだしている未熟者です。

子育てって、人間力が鍛えられるなぁと「えほんやさん」にみえるお客様からも学ばせていただいています。

『すずちゃんののうみそ』作者の竹山美奈子さんトークイベント

最近、テレビでも話題になっている『すずちゃんののうみそ』という絵本。
『すずちゃんののうみそ』
文:竹山美奈子 絵:三木葉苗 監修:宇野 洋太 岩崎書店
これは、自閉症スペクトラムのすずちゃんのお母さん(竹山美奈子さん)が、娘さんと同じ保育園に通うお友達に、自閉症のことをわかってもらうためにつくった紙芝居が元になってできた絵本です。

竹山美奈子さんは「えほんやさん」のある静岡県三島市にお住まいで、お店にもよく遊びに来てくださっていました。
4月2日が自閉症啓発デーということで、竹山さんから読み聞かせの際にお話しさせて欲しいと申し出があったのですが「せっかくだから、トークイベントもしましょう!」ということで原画展も計画し、とんとん拍子でイベント開催まで進んでいきました。


「えほんやさん」が始まって、2回目のトークイベントでした。

「えほんやさん」でトークイベントをする竹山さん

絵本をつくることになったきっかけや『すずちゃんののうみそ』を読み聞かせした後の子どもたちの反応、そしてみんなから逆に教えてもらったことなど、学ぶことがいっぱいの1時間半でした。

なにより竹山さんのお人柄が素敵で、みなさんもきっと好きになったんじゃないかなという空気が漂っていました。


前回は私がトークをしたので、客観的に見られていなかったのですが、終始アットホームな雰囲気で、20名規模のトークイベントは、一体感やあたたかさが「えほんやさん」らしくて良いなと思いました(自画自賛)。



みなさんにアンケートのご協力をいただいたので、一部をご紹介……

★自閉症の方だけでなく、全ての方に当てはまる部分も多く、特に今、0歳児の子育てをしている私としては、嬉しい内容ばかりでした。
「同じってうれしい、違うってたのしい」この言葉は、とても響きました。子どもにも伝えていきたいと思います。

★障害のある子も、健常な子もいろいろレベルがあるということを改めて知りました。
「困った子」ではなく「困っている子」という表現の仕方で、認識が強まりました。日常的に少しずつでも触れていきたい課題です。

★障害について理解できている気でいましたが、今回お話を聞いてぜんぜんわかっていなかったな、と思えました。
とてもわかりやすくて、お話を聞けてよかったです。



トークイベントが終わって数日してからも「もう一度聞きたい」「知り合いにぜひ聞いてほしい」というご感想をいただいたので、嬉しくなってまた企画させていただくことにしました! ※終了しています。
 

えがしらみちこの絵本

お気に入りのワンピースきて、あたらしいおくつをはいて、じゅんびできたよ、いってきまーす。

『はるかぜさんぽ』
作:江頭路子 講談社
お気に入りのかさもって、ながぐつはいて、カッパ着て、じゅんびできたよ、いってきまーす。

『あめふりさんぽ』
作:江頭路子 講談社
おひさまがさんさんと照る、夏のいちにち。あーちゃんがおさんぽで出会ったのは?

『さんさんさんぽ』
作:江頭路子 講談社
秋のつめたい風のなか、おさんぽで出会ったのは、どんぐり、みのむし、まっかなおちば……。『はるかぜさんぽ』につづく、人気シリーズ。

『あきぞらさんぽ』
作:江頭路子 講談社
お気に入りのマフラー巻いて、帽子にてぶくろ、ブーツをはいて、じゅんびできたよ、いってきまーす。

『ゆきみちさんぽ』
作:江頭路子 講談社
「ねえママ、おばけの音が、きこえるの」夜、こうちゃんは、おばけがこわくてねむれません。チクタク、チクタクの音は、なんのおばけ? カタカタ、カタカタの音は、なんのおばけ? 

『ねんねのうた』
作:江頭路子 講談社

えがしら みちこ

Michiko Egashira
絵本作家

1978年、福岡県生まれ。熊本大学教育学部卒業。水彩を使用した透明感のある画風が特徴。絵本に『あめふりさんぽ』『さんさんさんぽ』『ゆきみちさんぽ』『はるかぜさんぽ』『ねんねのうた』『クリスマスのおとしもの』、『いちねんせいの1年間 わたし、もうすぐ2ねんせい!』(文・くすのきしげのり)『せんそうしない』『ありがとう』(ともに文・谷川俊太郎)『はこちゃん』(文・かんのゆうこ 以上すべて講談社)、『おたんじょうケーキをつくりましょ』(教育画劇)、『なきごえバス』(白泉社)、『いろいろおてがみ』(小学館)、『しいちゃんおひめさまになる』(アリス館)、『あのね あのね』(あかね書房)、『あなたのことが だいすき』(原案・西原理恵子 KADOKAWA)など、装画と挿絵に『あかりさん、どこへ行くの?』(フレーベル館)、『さくら 原発被災地にのこされた犬たち』(金の星社)などがある。雑誌や教科書などの挿絵も多く手がけている。2018年、子育てママパパの居場所にと、静岡県三島市に絵本専門店「えほんやさん」をオープン。代表もつとめている。 http://www.tenkiame.com/

1978年、福岡県生まれ。熊本大学教育学部卒業。水彩を使用した透明感のある画風が特徴。絵本に『あめふりさんぽ』『さんさんさんぽ』『ゆきみちさんぽ』『はるかぜさんぽ』『ねんねのうた』『クリスマスのおとしもの』、『いちねんせいの1年間 わたし、もうすぐ2ねんせい!』(文・くすのきしげのり)『せんそうしない』『ありがとう』(ともに文・谷川俊太郎)『はこちゃん』(文・かんのゆうこ 以上すべて講談社)、『おたんじょうケーキをつくりましょ』(教育画劇)、『なきごえバス』(白泉社)、『いろいろおてがみ』(小学館)、『しいちゃんおひめさまになる』(アリス館)、『あのね あのね』(あかね書房)、『あなたのことが だいすき』(原案・西原理恵子 KADOKAWA)など、装画と挿絵に『あかりさん、どこへ行くの?』(フレーベル館)、『さくら 原発被災地にのこされた犬たち』(金の星社)などがある。雑誌や教科書などの挿絵も多く手がけている。2018年、子育てママパパの居場所にと、静岡県三島市に絵本専門店「えほんやさん」をオープン。代表もつとめている。 http://www.tenkiame.com/