2022.01.23

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子育ては計画通りにならない 我が子の生きる強さと個性を信じる親になる方法

東大教授・遠藤先生に聞く「子どもの褒め方・叱り方」#5 子どもの個性を伸ばし方

東京大学大学院教授:遠藤 利彦

「子どもの個性を伸ばすのは、少しずつでも成長している変化を認めてあげることです」(遠藤先生)。  写真:アフロ

よその子と比較をしてはいけないと思いながらも、つい「うちの子はおしゃべりが遅いかも」、「運動が苦手かも」、など考えてしまいがちです。

しかし、東京大学大学院教育研究科教授で教育心理学者の遠藤利彦先生は、「親の計画通りでなくてもいつか子どもが輝く日を、その子のペースに合わせて待つことが大切」だと言います。

最終回となる連載5回目は、「個性のある子どもを育てる」ことについてお話を伺います。
(全5回の最終回。#1#2#3#4を読む)

少しずつでも子どもの変化を認めてあげること

――これまでの連載で、“子どもには、それぞれ個性があり、成長のスピードもそれぞれ”ということが遠藤先生からのお話で理解できました。

ただ、親としては、“子どもの困難をなるべく取り除いてあげて、スムーズに生活できるように”と、つい焦ってしまうのが本音です。

遠藤利彦先生(以下、遠藤先生)「子どもの個性を大切にすること。そして社会のルールを守ること。これらが両方とも大事なのは確かです。ただ、

“他の子どもと比べてできない”
“落ち着きがない”
“ルールが守れない”

などとジャッジをするのではなく、“昨日より今日はできた”というように、子ども自身の変化に目を向けてあげることで、その子の個性を生かして成長を促すことができるはずです。

いつも忘れ物をしていたけれど、今日は連絡帳にメモをしてきたとか、週3回はお友達とケンカをしていたのに、今週は1回しかケンカをしていない、などというように、子どもの中での小さな変化を見つけて褒めてあげることで、個性を持ちながら社会に適応していけるようになります。

なんでも素早く習得する子もいれば、ゆっくりじっくり習得する子もいます。でも、変化のない子どもはいません。

少しずつでも成長をしている。その変化を認めてあげることが必要です。そういう関わりを辛抱強く続けていくことで、いつか子どもは集団に上手にフィットしていけるでしょう」

子育てはその子らしい花を咲かせることを楽しむこと

――世の中には、子育てに関するたくさんの情報が溢れています。どれが正しくて、また、どれが自分の子どもに合う情報なのか。情報が多すぎて、取捨選択をすることも大変な状況です。

親にとって、情報が多いことは便利である一方、とても振り回されやすい時代になっていて、親としてどうあるべきか、ということに悩んでいる方も多いと聞きます。

遠藤先生が思う“親としての心構え”のようなものはありますか?

遠藤先生「子どもの学習と、発達に関する研究の第一人者であるアリソン・ゴプニックさんという方が書いた『The Gardener and the Carpenter(庭師と大工)』(「思い通りになんて育たない:反ペアレンティングの科学」森北出版)という本があります。

この本で、ゴプニックさんは、多くの親は子どもと接するときに大工として関わろうとすることが多いと言います。

つまり、あらかじめ完成が見えていて、その形に近づけるように設計図通りに事を進めようとするんですね。

例えば3歳になったらこれをやらせて、その次4歳になったら、5歳になったら……と、子どもに働きかけていく。

しかし、それが計画通りに進まなかったら親は焦ってしまい、出来るようになるために、さらにあれこれ与えて、完成形に子どもを近づけようと躍起になります。

でも一方で、庭師はどうでしょうか? 草木に元気がないと思ったら、水や肥料をあげる。陽が当たり過ぎていると思ったら、日陰に運びますよね。

その時々の状況で、必要なものを見極め、与えてあげるのが庭師です。そうやってケアして気長に待っていると、ある日突然、思いもよらない場所にとても美しい花を咲いているのを見つけることができます。

必要なときに与え、守り、そして子どもに合わせて待つこと。つまり、コブニックさんは、親は庭師のような心持ちでいればいいと説いているのです。

私もこの考えには深く同意しています。

どんな子でも思いもよらないタイミングで、驚くほどきれいな花を咲かせてくれます。

親はその美しい花を見かけたときに、一緒になって喜んであげる。そしてこの感性を親が持つことが大切だと思っています。

子育ては、親が思う計画通りではなくても、いつかその子らしい花を咲かせることを楽しみに待つ。

これが親の出来ることであり、子育ての楽しみなのかもしれません」

子どもを愛おしく思い、心も体も健やかに育って欲しい。

そう願う気持ちは、親であれば誰しもが持っているでしょう。だからこそ、なるべく痛い目に合わないようにと必要以上に手をかけてしまうものです。

でも、遠藤先生のお話を通して、子どもの生きる強さと個性を信じてあげるということの大切さを強く感じました。
遠藤先生、ありがとうございました。

取材・文/知野美紀子

遠藤利彦教授のインタビューは全5回です。

えんどうとしひこ

遠藤 利彦

東京大学大学院教授・教育心理学者

東京大学大学院教育学研究科教授、同附属発達保育実践制作学センター(Cedep)センター長、心理学博士。 山形県生まれ。東京大学教育学...

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