運動器官の発達

ふたつめ、大変重要なのが運動器官です。仰向け寝から寝返り、ハイハイ、つかまり立ち、歩行までを1年余りでしてしまうのです。子どもには自己教育力があることがよくわかる例です。
それぞれの時期に適切な援助ができるような環境があります。仰向け寝の時期には、主に手でつかむものが必要です。「ガラガラ」は一般的ですが、握りやすい素材やリボンに輪を付けて引っ張るものがお勧めです。

輪とリボン

ハイハイの時期には広いスペースとともに、床の素材にも気を付ける必要があります。日本の畳は、海外のモンテッソーリ教師も絶賛する最高の素材です。足の指がしっかりとかかって滑らないので、和室がない家でも、その時期だけは薄い畳を敷きつめてあげるといいでしょう。

畳はハイハイに最適な環境

つかまり立ちの時期には、つかまってもひっくり返らない重いスツールや棚を準備してあげましょう。

つかまり立ちには安全なものを

1歳過ぎて歩けるようになった子どもは自信に満ちあふれています。二足歩行は、誰にも頼らず移動できる手段であり、人間が人間である証でもあるからです。
その自信を失わせることをしてしまいがちなのは大人です。モンテッソーリはこのように述べています。

「だっこしたりするから子どもは歩けないのです。子どもに代わって何かをやってやったりするから子どもは何もできないのです。人生の出発点からすでに子どもに劣等感を与えてしまっているのです。」(『創造する子ども』マリア・モンテッソーリ著 武田正實訳 エンデルレ書店)

魔の2歳児についてお伝えした回でも述べましたが、1~2歳児は自分でやりたい、自立へと強く向かう時期です。うまくできない動き、まだ獲得していない動きをやってみたいのですから、見ている大人はイライラが募ります。大人の生活は忙しいので見守ることができず、急かせるか、代わってさっさとやってしまいます。
それが子どもにとっては大問題なのです。

動きを獲得するというのは、自分で思い通りに筋肉を動かせるようになることですから、誰かが代わってやることはできません。経験しなければできるようにはならないのです。そして肉体と精神は切り離すことができないものですから、やってみることができなかった子どもは、意欲が育たず、やってもらうのを待つしかなくなります。
「やりたいときは、できないとき」だということをぜひ覚えておきましょう。

言語の発達

3つめは、言語です。
赤ちゃんは胎内にいるときからお母さんの声を聞いています。生まれてからは人の言葉というものに興味を持って、口元をじっと見て学んでいます。
モンテッソーリは子どもが言葉を獲得するために、正しく美しい言葉でたくさん話しかける特別な教師が必要であると述べているほどです。

環境にある言葉は母語となり、生涯にわたって思考の手段となり、人間同士の大切なコミュニケーションツールとなります。ですから、まだ話し始めない赤ちゃんのうちから、ゆっくりはっきり優しく言葉をかけてあげましょう。
そして話し始めたら、今度は子どもが多く話せるようにしましょう。
モンテッソーリ教育には、具体物や絵カードを用いた3段階の名称練習(レッスン)があります。

第1段階:大人が「(これは)くま(です)。」と名称を簡潔に言う。3つとも言う。野菜など実物の場合には、名称を言う前に、触ったり匂いを嗅いだりすること。

第2段階:大人が「くまはどれですか?」「しかをください。」など、と名称を繰り返し聞かせて子どもに選ばせる。このとき場所で覚えることを避けるため、場所を移動して繰り返す。

第3段階:大人が「これはなんですか?」と名称をたずね、子どもが名称を答える。わからなかったら、すみやかに第1段階に戻る。

レッスンでは、野菜、果物、動物、生活用品などを用います。最初は五感に訴えるため、3個くらいの実物からはじめ、順次、ミニチュアや絵カードも使うようにしていきます。数も次第に増やしてよいでしょう。

言語教育で使われるミニチュア動物

一般的には、第1、第2段階を飛ばして、いきなり子どもに「これ、何?知ってる?」とたずね、子どもに「わからない。」とか「知らない。」と言わせてから「知らないから教えてあげる。これは、〇〇よ。わかった?」ということが多いのではないでしょうか。
でも、子どもは幼くても自尊心を持っています。知っていることを自信を持って答えたいのです。そのため第3段階は第1、第2段階で答えられそうな場合に行うものです。言葉をしゃべらない子どもでも、聞いて選べるなら、第2段階までは行うことができます。

大切に育てる基本的信頼感

最後に0歳から3歳でぜひとも育てておかなければならない大切なことについてお伝えします。それは基本的信頼感というもので、2つに分けて考えるとわかりやすいでしょう。

1つめは環境への信頼感です。赤ちゃんは胎内という安心で安全な環境に約9ヶ月もいました。ところが生まれてきたこの世界は慣れ親しんだ環境とはまるで違いますから、最初はとんでもないところに来てしまったと思っているのです。モンテッソーリは「誕生の危機」と呼んでいるほどです。

ですから周りにいる人たち、特に親御さんは、身体のお世話をすると同時に、赤ちゃんが身の回りの環境に対して、この世界も良いところ、自分を大切にしてくれる人がいるところ、と感じてもらえるようにすることが大切です。環境とは物的環境ばかりではなく、人的環境も含まれており、それは丸ごと子どもに取り込まれていくものです。

もう1つは自己への信頼感です。これは、1歳頃から育つもので、いろいろなことができるようになった子どもは、自分はできるという自信を持ち、さらに家族やお友達の役に立つことで、自分の価値を見出すことができるのです。やりたがることはぜひやらせてあげて、「できたね」「ありがとう」「助かったわ」と言ってあげましょう。

この基本的信頼感が根底にあることで、子どもは健全に成長し、人格を形成していくことができるのです。かけがえのない最初の3年間を、ぜひ大切に過ごしてくださいね。

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『モンテッソーリで解決!子育ての悩みにいますぐ役立つQ&A 68』(著:田中昌子)

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モンテッソーリで子育て支援 エンジェルズハウス研究所所長

上智大学文学部卒。2女の母。日本航空株式会社勤務後、日本モンテッソーリ教育綜合研究所教師養成通信教育講座卒。同研究所認定資格取得。東京...

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