2021.04.12

「自宅でモンテッソーリを実践できますか」子育て相談 モンテッソーリで考えよう!

第16回

著者:田中 昌子

子育て中は、日々、悩みや困りごとがありますね。そこで、「モンテッソーリで子育て支援 エンジェルズハウス研究所」所長で、たくさんのお母さま、お父さまの相談にのってこられた田中昌子先生にお話をお伺いしました。ちょっとした工夫で、子どもたちに大きな変化が起こるモンテッソーリの考え方は、目からうろこが落ちることがいっぱいです。子育て中の人、必読です!

※この記事は、講談社絵本通信掲載の企画を再構成したものです。

専門家でないと、無理なのでしょうか

2歳10ヵ月の女の子です。モンテッソーリについて最近知り、子どもの自立する力を育てるという点に大変に興味をもちました。さっそく自分の子にも試してみようと思いましたが、私が提示をすると、子どもは「やりたいやりたい!」とすぐに手を出してきて、提示をみてくれません。案の定、やり方を見ていなかったので上手にできず、すぐにあきらめてしまいます。
興味のあることを教えてあげようとしているのですが、親だと甘えて、自分でできることでも「ママがやって」になってしまいます。
モンテッソーリ教育はやってみると難しく、親ではなく専門家でなければ無理なのでしょうか。毎日通うモンテッソーリ園には入れることができませんが、せめて週1回でもモンテッソーリ教室に入れたほうがいいのかしらと悩んでいます。

質問者さんがモンテッソーリ教育に出会えたことを嬉しく思います。モンテッソーリ教育に出会うと、多くの方が感動し、ご家庭でお試しになります。すぐにうまくいく場合もありますが、なかなかうまくいかない、というご相談もたくさんいただきます。

「餅は餅屋」ということわざもあるくらいですから、専門家に任せるのが一番という考え方にも一理あります。最近は子どもの教育についても、その考え方をあてはめて、英語は大事だから英語教室、音楽も必要だからピアノ教室、運動もさせておきたいから体操教室と水泳教室、という具合に、多くの習い事を低年齢からさせている方も増えているようです。

モンテッソーリ教育についても、その道のプロ、きちんとしたモンテッソーリ教師の資格を持ったベテランの教師に預けてしまったほうがいいのでしょうか。

生活すること、生きることそのもの

これについて述べる前に、モンテッソーリ教育とは何かという原点に戻って考えてみる必要があります。

モンテッソーリ教育については、最近になって知名度がアップし、マスコミから注目を集めたり、さまざまな書籍が出版されたりしています。ただ、多くの情報が氾濫する中で、モンテッソーリ教育とは、「教具」「提示」「お仕事」であると考えている人が大半になってしまっているのではないかと感じています。
 
質問者さんも、提示をしてみたけれどうまくいかなかったとおっしゃっていますから、いくつかの書籍をお読みになり、ネット上のブログなどから情報を得て、試されたのでしょう。

もちろん提示は、当連載の第4回でも触れたように、モンテッソーリ教育において子どもにやり方を伝えるために、とても優れた方法です。また教具やお仕事も、他の教育方法にはない重要な部分であることは間違いありません。

もしも、モンテッソーリ教育が「モンテッソーリ教具を準備し、大人が提示をし、子どもがそのままそれをお仕事としてすること」であるならば、週1回1~2時間のモンテッソーリ教室に通わせて、プロの手にお任せするのも、それなりの意味があるでしょう。

ただ、残念ながらそれだけではモンテッソーリ教育とは言えませんし、自動的に自立した子どもになってくれることはまずありません。なぜならモンテッソーリ教育とは、生活することであり、もっと言えば生きることそのものだからです。

ですから、私が監修した本のタイトルは『こどもせいかつ百科』であり、目次をご覧になるとおわかりになりますが、朝起きてから夜寝るまで、どのように子どもを援助していくか、が描かれているのです。

日々の生活の中で実践する大切さ

モンテッソーリ教育には5つの分野(領域)がありますが、すべての土台となっているのが「日常生活の練習」という分野です。モンテッソーリは「日常生活の練習」について、著書の中で以下のように説明しています。

「子どもの家」では、ほんとうの日常生活が繰り広げられるからです。ここでは家事がすべて、子どもたちに任されます。子どもたちは「家庭の義務」に熱中し、最新の注意をもって実行し、一人一人が落ち着きと品位をそなえるようになります。 
(『子どもの発見』 マリア・モンテッソーリ著 中村勇訳 日本モンテッソーリ教育綜合研究所刊)

「子どもの家」というのは、モンテッソーリがローマの貧しい地域に初めて開いた施設の名称です。「子どもの家」の在校時間についてモンテッソーリは、冬は9時から17時まで、夏は8時から18時までという長い時間が必要であるとも述べているほど、日々の生活の中で実践するということを大切に考えていました。

朝起きてするタオルたたみ 3歳8ヵ月

ですから良いモンテッソーリ園ほど、保護者教育にも力を入れており、保護者対象のマザーコースや定期的な勉強会を開いています。私もいろいろなモンテッソーリ園でお話させていただく機会がありますが、園の先生方とご家庭の保護者が車の両輪のように子どもを良くサポートしていくことが、一番重要だと感じています。

残念ながらモンテッソーリ園には通えないようでしたら、やはり生活をともにするお母様が、モンテッソーリ教育についてしっかりと理解し、お子さんの援助をしていくことが大切です。

私の勉強会にいらっしゃる方の8割は、質問者さんと同じように、モンテッソーリ園に通わせたくても通わせられないという方です。最初からうまくいかないのは当たり前ですが、学ぶことでお母様方が良き援助者に変わっていかれることは、この25年間、多くの事例を見せていただきましたので、まずはご安心ください。

次のページへ子どもが提示を見てくれないのには理由が…
28 件