子どもが「食べるスキル」をあげるために

親たちが子どもの食に対して悩みを持ってしまう背景には、日本の離乳食指導のあり方に問題があると、江田先生は言います。

「離乳食を始める前って、お母さんたちはまず情報を集めますよね。どれくらいの月齢でどんなものを、作り方はこうして、何をどれだけどう食べさせるのか……。とってもていねいに勉強して、気合を入れてのぞもうとします。私自身もそうでした。

でも、離乳食は実際にやってみないとわからないことばかりです。全く口を開けてくれないとか、赤ちゃんが泣いて嫌がる、食べたのに全部吐き出してしまった、なんてこともしょっちゅう。勉強したマニュアル通りに進むほうが少ないです」(江田先生)

何よりも意識をしてほしいのは、離乳食期の目標は何なのかということ。

「私が患者さんたちへ繰り返し伝えているのは、『食べることの目的を改めて考えましょう』というシンプルなものです。離乳食期の食事の目標というのは、
①『必要な栄養を摂ること』
②『食べるスキルを上げていくこと』のふたつ。

日本の離乳食マニュアルでは、必要な栄養摂取や口に入ってからの機能の育ちなど、前者の栄養のことが中心に語られがちで、後者の食べるスキルがないがしろになっているんです。

ですから当院では、適切な栄養を摂ることを前提に、子どもたちの食べるためのスキル全体を上げていくことにも取り組んでいきたいと考えています」(江田先生)

食事メソッド「 手づかみ食べ」を提唱

では、適切な栄養を摂りながら、食べるスキルをつちかっていくのにはどうしたらいいのか。そこで江田先生が提唱するのが、赤ちゃん自身が自分で食べるようになる「手づかみ食べ」という離乳食期の食事の摂り方です。

「手づかみ食べ」は、その名の通り、食材を手づかみして、「赤ちゃんが自分で食べる」食事の方法です。イギリス発祥のBLW(Baby led weaning=赤ちゃん主導の離乳)という食事メソッドを基礎とし、ごはん外来では、神奈川県立こども医療センターの大山牧子先生の制作したパンフレット1〜3(※3)を紹介しながら、楽しく食べる方法や食べる環境の準備、具体的な手づかみ食べの進め方をお伝えしています。
※3=神流川県立こども医療センター偏食外来パンフレット 1たのしくたべよう、2いつどこでたべる?、3いつから・なにをどのようにたべる? 

「『ごはん外来』を始めてから出会ってきた、食べない子、食べているのに体重が増えない子たちに、どういった食事の進め方が適切なのか考えた結果が、“手づかみ食べ”です。手でつかんで食べる食事という表面的な意味合いだけでなく、赤ちゃんが「自分で食べる」ということに主眼を置いています。この自分で食べる手づかみ食べこそが、食べるスキルを上げていくという目標に合った食べ方だと考えています」(江田先生)

では、“手づかみ食べ”とはどんな食事の仕方なのでしょうか。“赤ちゃんが自分で食べる”って、どういうこと?

次回(#2)は、一般的な離乳食マニュアルとは全く異なるその食べ方について、先生に詳しく解説してもらいます。

取材・文/遠藤るりこ

※ 江田明日香先生インタビューは全4回。
次(#2)は21年12月15日公開です(公開日時までリンク無効)。

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えだ あすか

江田 明日香

小児科医

小児科専門医、国際認定ラクテーション・コンサルタント。2004年 杏林大学卒業後、藤沢市民病院にて臨床研修。藤沢市民病院(小児科)や、...

えんどう るりこ

遠藤 るりこ

ライター

ライター/編集者。ママとベビーのためのライフスタイルメディア「代官山スタイル by blossom39」編集長。東京都世田谷区で三兄弟...

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