絵本ナビ編集長がおすすめ!「0歳・1歳・2歳が夢中になる絵本」
絵本の情報サイト「絵本ナビ」編集長の磯崎園子さんが『絵本と年齢をあれこれ考える』エッセイ第4回
2022.05.26
絵本ナビ編集長:磯崎 園子
半分現実!?
当たり前のことだけれど、この3年間というのは見えている世界も景色も全然違うのだ。
すべてが平等に知らないことだらけ。つまり絵本を通して見る世界だって、彼らにとっては半分現実なのである。
絵本を読んでもらう声はそのまま彼らへの呼びかけとなり、ページをめくることは遊びとなり、絵を見ることは大事な出会いの瞬間となる。
例えば、知人のふたごの赤ちゃんが絵本を読んでもらう様子を動画で見せてもらったところ、一人の子は、呼びかけるお父さんに対して声を出して笑っている。何回読んでも、ケタケタと楽しそうに笑う。
ところがもう一人の子は、全くの無表情。声も出さない。「絵本があんまり好きじゃないのかな……」そう思ってよく見ると、口がもぞもぞ動いている。手足がバタバタ動き出している。どうやら彼女は体で反応をしているようなのだ。
今度は少し大きくなった二人が、お父さんと絵本の中のくだものを一生懸命食べている様子。一人は夢中で食べ続け、もう一人はお父さんとカメラを向けているお母さんに対して順番にくだものを渡してあげている。条件は同じはずなのに、絵本に対する受け取り方が全然違うのである。
そんな観察が面白くないわけがない。
この時期の絵本というのは、大人にとってもやはり半分現実と言っていいのかもしれない。
響きが言葉になっていく瞬間
もっと細かく0歳、1歳、2歳、月齢まで指定してつくられている絵本もある。絵本選びを迷っている大人にとっては、大変ありがたいことである。
一方で、想定している対象年齢よりもずっと早くに読まれ、大きくなるまで愛読される絵本がある。それらは、とても個人的な選書であり、その偏りにとても興味をひかれる。
それでも、言葉がまだおぼつかない1歳の子が、この絵本を繰り返し開き、母親の「はーんぶーんこっ!」という呼びかけに対し、一生懸命真似をしている。とにかく言いたくて仕方がないのだ。
そのたびに口をパクパク動かし、表情がころころ変わる。そのうちすんなりと言えるようになり、言葉の意味を理解していくと、途端に今度は絵本の中の美味しそうなおやつの方に関心が向いていく。響きが言葉になっていった瞬間に、読み方はがらっと変わる。