絵本ナビ編集長がおすすめ!「0歳・1歳・2歳が夢中になる絵本」

絵本の情報サイト「絵本ナビ」編集長の磯崎園子さんが『絵本と年齢をあれこれ考える』エッセイ第4回

絵本ナビ編集長:磯崎 園子

『りんごです』(川端 誠・作 文化出版局)もまた、不思議な存在感のある絵本。

りんごがかじられ、小さくなり、種だけになり、芽が出て、やがてまたりんごの実がなり……という流れが「りんごです」の言葉のみで進んでいく。

そして、この絵本を読むたびに赤ちゃんだった息子は大爆笑していたのだ。なぜだかわからないけど「りんごです」と言えば笑ってくれるので、こちらも熱演を繰り返す。

絵本ナビのレビューの中にも同じことを書いている読者がいる。響きが面白いのか、繰り返しが笑ってしまうのか。なんとも幸せな絵本なのである。
「りんごです」
『す~べりだい』(鈴木 のりたけ・作 PHP研究所)はだじゃれ絵本。だからと言ってしまいこんでいてはもったいない。

なにしろこの絵本は「すべりだい」と普通には読ませてくれない。「すーーべりだい」になったかと思えば、「すべりだいー」「だいーん」「すべりぱい」「すべりさい」「すべれない…」と続く。

読んでいるだけでふざけているような気分になり、乗ってくると今度は声が大きくなり、自然に体が動いてしまっている。気がつけば、子どもも一緒に動いている。
「す~べりだい」

体が先に反応する絵本

「ぎゅっ」
体を動かしながら読む絵本というのは、ずっと人気がある。しかし、この頃の子どもたちにとっては格別だ。へたすれば、絵本を見ているよりも、体が動いている時間の方がずっと長いことだってある。

『ぎゅっ』(ジェズ・オールバラ・作 絵徳間書店)のように、読んでいれば自然にぎゅっとしてもらいたくなる絵本。そのまま抱っこの時間に変わっちゃってもいいよね。

『ぺんぎんたいそう』(齋藤 槙・作 福音館書店)は、ペンギンの動きが、心なしか1歳の子どもたちの動きにそっくりなのが可愛い。保育園の2歳児クラスで読めば、みんなが大盛り上がりで上手に真似をするという声も寄せられている。
「ぺんぎんたいそう」
読むたびに、同じページでパクッと絵本を食べてしまうという、愛らしいエピソードが寄せられているのが『ふるふるフルーツ』(ひがし なおこ・文 はらぺこめがね・絵 学研プラス)。リアルで瑞々しい絵はもちろん、耳で聞いても美味しそうな言葉の響きに、思わず体が先に反応してしまう。
「ふるふるフルーツ」
『じぶんでひらく絵本 全4冊セット』(H・A・レイ・作 石竹 光江・訳 文化出版局)は、絵本の各ページについている折返しを自分でめくると、さらに動物が登場し驚かせてくれる。

これは、小さな子どもたちにとっては嬉しい発見。自分でめくることで、世界が広がり動物たちが動き出す。これは何度だってめくりたくなってしまうはず。絵本が半分現実な彼らにとって、体感することも大事な読書の時間なのだ。
「じぶんでひらく絵本 全4冊セット」

絵本が原体験になる?

最初はじょうろを使ってささやかに始まった水遊びが、ホースを使い、水たまりをつくり、どんどんエスカレートして、最後にはどろんこになる『こぐまちゃんのみずあそび』(わかやま けん・作 こぐま社)。

実際に目の前で起これば、大人は声をあげてしまいそうな出来事だけれど、次から次へ思いつくままに遊びが広がっていく快感は、この年齢にこそ体験させてあげたいもの。「もっとやりたい」「もっともっとやりたい」という気持ちを、大事に育ててくれるのが、この絵本だ。
「こぐまちゃんのみずあそび」
「くるかな? くるかな?」「きたー!」この繰り返しがたまらないのは、『でんしゃ くるかな』(きくち ちき・作 福音館書店)。電車が来たら、嬉しくて手も足も上がっちゃう。

その喜びを全身で表現することを我慢させる理由なんてない。思いっきり感情を解放させてしまえばいい。読んだ後、なんだかすっきり気持ちがいい。
「でんしゃ くるかな」
記憶には、ほんのちょっぴりしか残らなかったとしても、この頃に絵本で味わった感情や、体で覚えた感覚は、きっと大人になるまで原体験として残っていくのではないだろうか。

例えば、私たちは大人になった今でも「うんとこしょ どっこいしょ」のフレーズを聞けば、思わず何かを引っぱりたくなってしまいそうになる。そう、言わずと知れたロングセラー『おおきなかぶ』(A・トルストイ・作 佐藤 忠良・絵 内田 莉莎子・訳 福音館書店)の影響である。

この絵本の主な読者層は1~2歳。思ったよりも小さい。それは、この絵本がストーリーだけでなく、言葉のリズムで感覚を大いに刺激してくれる絵本だということを物語っている。そして、その記憶はちゃんと残っていくのだ。
「おおきなかぶ」
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