絵本ナビ編集長がおすすめする 6歳の子どもが読むのにぴったりな絵本

絵本の情報サイト「絵本ナビ」編集長の磯崎園子さんが『絵本と年齢をあれこれ考える』エッセイ第10回

磯崎 園子

絵本と年齢をあれこれ考える「あの子は、私。」
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絵本の情報サイト「絵本ナビ」編集長の磯崎園子さんが『絵本と年齢をあれこれ考える』エッセイです。

第10回目は、6歳以上と絵本「あの子は、私。」

「わたし」は私じゃない?

「わたし」は「わたし」。でも、それって本当? 生まれたばかりの赤ちゃんから見ると「おねえちゃん」。お兄ちゃんから見ると「いもうと」。お母さんやお父さんから見ると「むすめ」だし、おばあちゃんやおじいちゃんから見ると「まご」。

先生から見れば「せいと」だし、みっちゃんから見れば「おともだち」。犬から見れば「にんげん」、宇宙人から見ると……「地球人」!? 
世界の捉え方が変わってくる
絵本『わたし』(谷川 俊太郎・文 長 新太・絵 福音館書店)を読めば、世界が大きく揺らぐ。なにしろその世界は「わたし」を中心にまわっているはずだった。

それなのに、「わたし」は自分だけではないことに気がついてしまうからだ。「わたし」は誰かの一部であり、誰かにとっての「わたし」は自分ではない。この驚きは大きい。
「わたし」
けれど、この絵本を読めば必ずしも衝撃を受けるかといえば、そうではない。当たり前のこととして受けとめる人もいれば、なにも不思議に思わない子だっている。

なぜなら、絵本の中から何を発見していくのか、そのタイミングや受け取り方は自由だからだ。文章が読めるようになり、読解力もついてきた小学生ともなれば、絵本の前では大人と対等になってくる。それこそ、大人と同じタイミングで揺らぐことだってあるだろう。

絵本には、世界を広げてくれるきっかけがたくさん隠れている。だからこそ、適齢期と言われる3~5歳を越えてからの絵本の存在も、また興味深いのである。

それっていいこと? わるいこと?

同じく谷川俊太郎さんの詩による絵本『うそ』(谷川 俊太郎・詩 中山 信一・絵 主婦の友社)の中で「ぼく」は考える。

「おかあさんはうそをつくなと言う。それはきっと、うそが苦しいと知っているから。だけど、ぼくはきっとうそをつく。うそをつく気持ちはほんとうなんだ。」その考察は深く、答えは見えない。うそって、ついてはいけないものなのだろうか。ごまかすようなうそは嫌いだし、人を傷つけるのもよくない。

じゃあ、本当ってなんだろう。私はいつも本当のことを言ってるのだろうか……。気がつけば、絵本の中の「ぼく」が「わたし」をじっと見ている。
「うそ」
『ほんとうのことを いってもいいの?』(パトリシア・C・マキサック・作 ジゼル・ポター・絵 福本 由紀子・訳 BL出版)で語られるテーマはもう少し複雑だ。うそをついてはいけないと怒られたリビーが、これからは本当のことだけを言うと決意する。ところが、本当のことを言おうとすればするほど、周りのみんなを怒らせてしまう。どうしてなんだろう?
「ほんとうのことを いってもいいの?」
小学生になれば、目の前に経験したことのない問題が次から次へとふってくる。物事を善と悪に分け、明快に理解していくことも必要だが、その間には整理しきれない感情があるということを知るのも、同じくらい大切になってくる。世界は年齢とともにどんどん複雑になっていく。正解がすぐ近くにあるとは限らない。
「にげてさがして」
『にげてさがして』(ヨシタケ シンスケ・作 赤ちゃんとママ社)の中で、作者はもし答えが見つからなかったらその場所から逃げればいいと言う。足を使って自分で動き、自分で考え、自分で決めていけばいい、と。これらの絵本が伝えてくれるのは、道は一つじゃないということ。あらゆる考え方、感じ方、可能性があるのだということ。そうやって自分と向き合う時間を生みだしてくれるのも、また絵本の役割なのだろう。
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