「わたし」は私じゃない?
先生から見れば「せいと」だし、みっちゃんから見れば「おともだち」。犬から見れば「にんげん」、宇宙人から見ると……「地球人」!?
それなのに、「わたし」は自分だけではないことに気がついてしまうからだ。「わたし」は誰かの一部であり、誰かにとっての「わたし」は自分ではない。この驚きは大きい。
なぜなら、絵本の中から何を発見していくのか、そのタイミングや受け取り方は自由だからだ。文章が読めるようになり、読解力もついてきた小学生ともなれば、絵本の前では大人と対等になってくる。それこそ、大人と同じタイミングで揺らぐことだってあるだろう。
絵本には、世界を広げてくれるきっかけがたくさん隠れている。だからこそ、適齢期と言われる3~5歳を越えてからの絵本の存在も、また興味深いのである。
それっていいこと? わるいこと?
「おかあさんはうそをつくなと言う。それはきっと、うそが苦しいと知っているから。だけど、ぼくはきっとうそをつく。うそをつく気持ちはほんとうなんだ。」その考察は深く、答えは見えない。うそって、ついてはいけないものなのだろうか。ごまかすようなうそは嫌いだし、人を傷つけるのもよくない。
じゃあ、本当ってなんだろう。私はいつも本当のことを言ってるのだろうか……。気がつけば、絵本の中の「ぼく」が「わたし」をじっと見ている。