絵本ナビ編集長がおすすめする 3歳の子どもが読むのにぴったりな絵本

絵本の情報サイト「絵本ナビ」編集長の磯崎園子さんが『絵本と年齢をあれこれ考える』エッセイ第5回

磯崎 園子

絵本と年齢をあれこれ考える「空想と現実が溶け合って」

絵本の情報サイト「絵本ナビ」編集長の磯崎園子さんが『絵本と年齢をあれこれ考える』エッセイです。

第5回目は、3歳児と絵本の前編「空想と現実が溶け合って」。

空想と現実が溶け合って

大人になり、ふと手にした絵本を開いて驚くことがある。

「この景色、知っている」

自分の記憶を丁寧にたどっていくと、かすかに浮かび上がってくる断片的な光景。それは目の前に広がる絵本の中の場面と同じような、少し違うような。だけれども、確かにここを知っている。思い返せば、おそらく3歳の頃に読んだ絵本。

もっと後だったかもしれないが、この年齢になってくると、出会った絵本の記憶がこうして少しずつ自分の中に残っていく。そして実際の絵の印象と大きく違っていたり、一部分だけを突出して記憶していたりする。この現象こそ「3歳と絵本の関わり方の面白さ」とつながってくるのである。

3歳児の記憶力

3歳になったばかりの子を見ると、イメージの中の3歳よりも少し幼く見える。喋りがまだまだ拙いこともある。急激に言葉は増えていくものの、それらをつなぎ合わせ、流暢な会話ができるようになるのはもう少し先。

それでもよく観察していると、話しかけられていることにしっかりと反応し、返事をしようとしているのがわかる。絵本を読んでもらっていても、うなずいたり、目線があちらこちらに動いていたりして、お話を理解している様子が見てとれる。そして、絵本にとって重要なポイントがここにある。

できることが増える3歳児の世界

「3歳の子は、まだ字が読めない」

彼らは目の前に広げられた絵に集中し、聞こえてくる言葉に耳を傾け、その響きや物語を堪能する。まだ文字を気にすることはないだろう。つまり、絵本の中の世界にしっかりと没頭することができるのである。

文字に捉われていないからこそ、自由に絵の中を歩き回り、あるいは迷い込み、聞こえてくる言葉の響きを楽しみ、物語を自分なりに感じ取っていく。経験が少ない分だけ、現実と空想の境界線はまだまだ曖だろう。だからこそ、臨場感あふれる体験として、その一部が記憶に残っていくのである。

絵本を「絵本の中の世界」として

絵本の世界を物語として受け取れるように

前号で、0〜2歳にとっての絵本は「半分現実」だと述べたのだが、3歳になると、絵本を「絵本の中の世界」として楽しめるようになっていく。いよいよ空想の世界の入り口に立っている。

『てぶくろ』(ウクライナ民話 エウゲーニー・M・ラチョフ・絵 内田 莉莎子・訳 福音館書店)と言えば、日本でも読み継がれているロングセラー絵本。雪の中に落ちていた片方の手袋に次々と動物たちが入っていく可愛らしいお話なのだが、ねずみ、かえる、うさぎときて、きつねがやってきたあたりから「あれ、おかしいぞ。そんなに入れるの…?」読んでいると疑問がわいてくる。

ところが、あまりにも自然に大きくなっていく手袋の絵を見ていると、「不思議だけれど、本当にありそうなお話」として3歳の子どもたちは素直に受け入れてしまう。毎回どこかで少しドキドキしながらも、この展開に胸を膨らませている。

「てぶくろ」

日本が誇るファンタジー絵本『わたしのワンピース』(西巻 茅子・作 こぐま社)にも同じような現象が起こる。真っ白なきれでつくったワンピースで、お花畑を散歩すれば花柄に、雨がふれば水玉に、次々と模様が変化する。小鳥がやってくれば空を飛び、そのままワンピースを着たうさぎは星空へ。

どうしてそうなるのか、説明なんてないけれど、子どもたちの目はとっくに輝いている。その様子を見ていると、現実と空想の境界線を自由に飛び回る3歳という年齢がうらやましくなってくるのである。

「わたしのワンピース」

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