3歳で出会った「青きドナウ」、覚えるほど観ました
しかも、高校生と大学生のとき、コンクールを受けたことがあるんですが、それもテープ審査で全部落ちました。それは落ち込みましたよ。だから、特別なことをやったから、特別な才能があったから、この仕事についたわけではないんです。
僕が今でも歌を歌っているのは、歌がうまいからではなく、ただひたすら小さいころから「好き」という気持ちが音楽の真ん中にあって、それが僕の音楽の色のひとつになって、聴いてくれる人たちに伝わっているのかなと思うんです。それがこの仕事を続けてこれた理由だと思っています。
東日本大震災で、歌を届けることの大切さを知った
でもそのころ、東日本大震災が起きました。子どもだけなく、大人にもどうにもできない、大変なことが起こった。番組で僕たちはテレビの前の子どもたちを「お友だち」と呼びます。そのお友だちが辛い毎日を過ごしている。僕らお兄さんお姉さんとして「なにかできないか」と、番組のスタッフさんたちとたくさん話し合いました。そのとき「『みんな元気?』と、変わらない毎日を届けてあげることが、あなたができる一番のこと」って言われたんです。スタッフさんたちの思いもあって「おかあさんといっしょ」はかなり早い時期に放送を再開しました。すると「戻ってきてくれてありがとう」「この番組に救われました」という声がたくさん届いて。そこで僕が歌のお兄さんとしてやるべきことは「当たり前の毎日を届けること」と気づくことができたんです。
年の終わりに東北でコンサートを開催できることになり、みんなの前で「ぼよよん行進曲」を歌いました。そのとき「この歌が終わったら倒れてもいいくらい、思いっきり楽しさや好きって気持ちを届けよう!」って思ったんです。僕の思いが子どもたちや親御さんに伝わったのか、みんなが笑顔になってくれました。そのとき歌のお兄さん、そして横山だいすけの生き方として「これでいいんだ」思えたんです。その経験から、歌を思いっきり楽しんで歌えるようになっていって、だんだん周囲の人も「だいすけお兄さんっていつも楽しそうに歌っているね」とか「歌から“好き”って気持ちが伝わってくるね」という声が増えてきました。やっぱり「伝わるんだな」って……。大きな大きな転換期でした。
子どもたちに伝えたいこと
「明日○○を食べたい」「来週○○してみたい」とか、そういう小さなものも夢のひとつだと思う。夢は1個じゃなきゃいけないわけでもないしね。大きかろうが小さかろうが、夢を持つと、叶えたときにうれしい。そういう小さな達成感みたいなものを、夢を持つことで感じてもらいたい。小さい夢がだんだん大きい夢につながっていく。自分の思い描く夢を叶えられる子が、ひとりでも多くいるといいな、と願っています。
1983年5月29日生まれ。千葉県出身。2006年に国立音楽大学音楽学部声楽学科を卒業。幼いころから歌が好きで、小学校3年生から大学卒業まで合唱を続ける。劇団四季時代は『ライオンキング』をはじめ数々の舞台に出演。2008年4月にNHK Eテレ「おかあさんといっしょ」の11代目「うたのお兄さん」となる。現在は、番組のレギュラー出演やコンサートで活躍し、子どもやお母さんの幅広い支持を集める。
げんき編集部
幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「いないいないばあっ!」と、幼児向けの絵本を刊行している講談社げんき編集部のサイトです。1・2・3歳のお子さんがいるパパ・ママを中心に、おもしろくて役に立つ子育てや絵本の情報が満載! Instagram : genki_magazine Twitter : @kodanshagenki LINE : @genki
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久世 恵美
ライター・エディター 東京都出身。一児の母。フリーライター・エディターとして、雑誌、ムック、絵本など、子ども向け書籍やweb記事を幅広く担当する。趣味は旅行、登山、キャンプ、筋トレ、ヨガなど。三度の飯よりおやつ好き。
ライター・エディター 東京都出身。一児の母。フリーライター・エディターとして、雑誌、ムック、絵本など、子ども向け書籍やweb記事を幅広く担当する。趣味は旅行、登山、キャンプ、筋トレ、ヨガなど。三度の飯よりおやつ好き。