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ウルトラマン×基礎宇宙論=最良の科学入門書! 『ウルトラマンと学ぶ 宇宙と生命体』(高水裕一著)の1チャプターを連載形式でまるっと紹介!【3】
2022.06.16
高速移動「スイングバイ」とは?
たとえば人類が実際にいった一番遠い宇宙の場所は、月面です。地球からおよそ38万㎞も先です。ISSが400㎞なので、いかに月までが遠いかわかると思います。
宇宙ロケットで宇宙にいくのは、今では比較的簡単になってきましたが、このISSなどがある宇宙空間と、月までいくという宇宙旅行とは大変さが全く違います。「宇宙に出れば月まではもうすぐだ」とは決して思わないでください。
ただし、長い距離であっても時間さえかければ、地球の上よりも簡単に移動できる側面があります。それは運動量の保存のため、一度速度をもって移動したら、そのまま勝手にそのスピードのまま移動できるからです。
途中でエンジンをかけたり、ジェット噴射をしたりする必要は基本的にありません。行き方や、行く時期にもよりますが、月の場合は、数日で地球から到着できます。
これまで月の上にたった人類は全員で12人、いずれもアメリカ人です。いつの日か、日本人として初めて月に降り立つのは、君たちの誰かかもしれません。
宇宙船の移動において、「スイングバイ」という方法が非常に有効です。
これはある惑星に近づき、離れていくことで、スピードをつけて移動する方法です。実際に火星などへ宇宙探査機を送るために、このような方法をとります。
ただし軌道の計算は、非常に大事なので、正確な計算を行わないといけません。誤った軌道をとると、その惑星の重力に捉えられ、落下していってしまうこともあるということです。命をかけた算数ですね。
探索ロケット「ボイジャー」
ボイジャーは探査した惑星の周りをしばらく回り、このスイングバイという方法でスピードアップして、また遠くにある別の惑星に移動するということをやってきました。
そのため探査する惑星たちがうまい位置に並んでいる必要があります。これを計算するには、木星と、地球から一番遠い惑星である海王星の位置が大事になります。
遠い惑星ほど、太陽の周りをまわる時間(=地球では1年)がどんどん長くなります。海王星の場合、これがおよそ165年かかります。木星の運動も考えると、2つの位置関係がうまくとれるのは、180年に一度しかチャンスがないのです。
ボイジャーは1977年に打ち上げられ、今も太陽系の端、地球と太陽の距離のおよそ150倍のところを飛んでいます。
原子力を用いた特別な電池で信号を送るといった活動をしているのですが、2025年までは稼働するといわれています。今も、太陽系の知らなかった真実を解き明かしてくれています。
ボイジャー探査機には、ゴールデンレコードという宇宙人へのメッセージをのせています。地球の文明を伝えるための多くの画像や、音楽などが録音されています。
録音された音声言語は世界中の55種類のもので、それぞれの言葉で挨拶しています。中には、6000年前にあったシュメール文明という最古の文明で使用されていたアッカド語も収録されているようです。
しかし宇宙空間で何者かに発見されないと、いつまでたってもこのメッセージ盤が読まれることがありません。一番近い隣の星まで、このスピードでいくと、およそ40万年もかかってしまうと言われているので、早く誰か宇宙人に見つけられてほしいものです。
お楽しみに!
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テレビマガジン編集部
日本初の児童向けテレビ情報誌。1971年11月創刊で、仮面ライダーとともに誕生しました。 記事情報と付録の詳細は、YouTubeの『テレビマガジン 公式動画チャンネル』で配信中。講談社発行の幼年・児童・少年・少女向け雑誌の中では、『なかよし』『たのしい幼稚園』『週刊少年マガジン』『別冊フレンド』に次いで歴史が長い雑誌です。 【SNS】 X(旧Twitter):@tele_maga Instagram:@tele_maga
日本初の児童向けテレビ情報誌。1971年11月創刊で、仮面ライダーとともに誕生しました。 記事情報と付録の詳細は、YouTubeの『テレビマガジン 公式動画チャンネル』で配信中。講談社発行の幼年・児童・少年・少女向け雑誌の中では、『なかよし』『たのしい幼稚園』『週刊少年マガジン』『別冊フレンド』に次いで歴史が長い雑誌です。 【SNS】 X(旧Twitter):@tele_maga Instagram:@tele_maga