作家志望必見! 「講談社絵本新人賞」受賞作家・伊佐久美さんの「絵本創作」Q&Aを全文公開
絵本セミナー「絵本作家への道」質問コーナー続き 答えられなかった質問に答えます!
2024.06.17
イベントでお答えできなかった質問に答えます!
2024年3月15日と4月3日の2日にわたって行われたオンラインセミナー「絵本作家への道」。イベント終了後もアーカイブ視聴での申し込みは増え続け、現在までの申し込み者はなんと400人超。
今回公開するのは、第42回講談社絵本新人賞の受賞作家・伊佐久美さんが出演した第2回の質問コーナーの続き。時間の都合でお答えできなかった、伊佐さんの「未公開Q&A」をお届けします。
伊佐 久美(絵本作家)
1970年生まれ、東京都在住。東京造形大学デザイン学科卒業。製版会社、デザイン事務所勤務を経て、2002年よりぬいぐるみ、雑貨等の制作・販売をするネットショップの運営をしている。2021年、第42回講談社絵本新人賞受賞。
【伊佐久美さん出演】第2回セミナーのレポートはこちら
セミナー動画は申し込み後すぐにご覧いただけます
伊佐久美さんへの質問コーナー
質問1:絵本をつくりはじめてから、仕事になるまでどれくらいかかりましたか?
伊佐さん:絵本を初めて描いたのが、講談社絵本新人賞に応募した「タコとだいこん」だったので、作りはじめてすぐでした。今でも仕事になっているとはとても言えませんが。
質問2:絵本作家になって良かったなと思えたのはどんな瞬間で、どんな感情を感じたときですか?
伊佐さん:よかったなあと思うときは、絵本を読んでくださった方の感想を聞いたときです。自分が楽しく作ったものを見て楽しんでくれた人がいる!と知るとなんて幸せなんだろう、と思います。それを見たくて、ネットなどで感想を探しています。
質問3: 息の長い絵本作家とそうでない作家の違いとは何ですか。そうなるため に日常心がけていることはありますか?
伊佐さん:息の長い作家になれたらいいな。と思っていますが、方法はわかりません。自分が描きたいものを、「楽しく」一生懸命描くということしか思いつきません。
私の場合、楽しく。というのはとても大事です。つらかったり、つまらなかったりすると、すぐ嫌になってやめてしまうので、楽しくなるように心がけています。
飽きてきたら描くのをやめて他のことをします。窓から外を眺める、散歩に出る、おやつを食べる、ピアノを弾く、好きな画集や写真集を見る、編み物をする、など。踊るのはホコリがたつので我慢しています。
質問4:尊敬する絵本作家はどなたですか?
伊佐さん:たむらしげるさん、佐野洋子さん、ごとうみづきさんです。
質問5:アイディアのタネは、どのように育てますか?
伊佐さん:私にも途中でストップしているお話がいっぱいあります。無理に描こうとしてもどうしようもないので、そういうものは放っておきます。「そのうち良い言葉を思いついたり、他のお話に形が変わったりするだろう」と、のん気に待っています。
例えば、「おおきくなったリス」は、どうにも進まなくなった別のお話が変化してできたものでした。
思いついたことはすぐ手帳にメモしています。絵本のネタに限らず、作ってみたいバッグ、ぬいぐるみ、編み物、読みたい本、見たい映画、行ってみたい場所、など、なんでもかんでもです。
ときどきそれを眺めて、今ならこれを実行できるかも?と思ったものをやっています。絵本もそのひとつです。
質問6:描いている間に「大丈夫かな?」と、不安になることはありますでしょうか?
伊佐さん:よくあります。ラフスケッチを描く段階では、描けるかどうかは考えないようにしているので、不安です。
色鉛筆で描いたラフを、原画のためにクレヨンや絵の具で描き始めると、どうやって描いたらいいのかわからないものが出てきたりするのです。
「おおきくなったリス」の動きを表した線などは、紙を切って貼る方法に落ち着くまで、いろいろ考えました。その他に、このお話でいいのだろうか?と不安になることもありますが、ダメでも死んだりする心配はないんだからいいや、と思うことにしています。
質問7:ストーリー創作の過程で、いつも軸になる考えはありますか?
伊佐さん:教えたり、諭したりする内容にならないように。とだけ気を付けています。大人になってから、子どものころよく読んでいた本を見てみたら、ものすごくお説教臭い内容でびっくりしたことがあるからです。わざわざ意地悪な人が出てきたり。
子どもって、お説教されるのに慣れていて、麻痺しているのですね。そういうお話は描かないようにしようと思いました。
質問8:絵本を書くことを決めたきっかけはなんですか?
伊佐さん:五十肩と腱鞘炎になって、それまでやってきたダンスと手芸ができなくなったことがきっかけでした。絵は手の痛みもなく描けたので、何か目標を持って描いてみようと、コンクールを検索したら講談社絵本新人賞に行き当たったのでした。
質問9:ラフを検討する際に、ボツにしたシーンなどがあれば教えていただきたいです。
なぜボツにしたのか、判断基準も知りたいです。また、つくるモチベーションを保つためにしていることがあれば教えてください。
伊佐さん:「タコとだいこん」の場合、ラフの段階や絵の具で描き始めてからボツにしたのは、タコがだいこんを食べたい理由をあれこれ説明するシーンと、タコが最後お布団に寝ているシーンです。
食べたい理由はいらないなと思い、削りました。あと、海の中に急にお布団が登場するのは変だと気が付きました。
つくるモチベーションを保つためにしているつもりではないのですが、絵を描くのに飽きたら、他のことをしています。縫い物や編み物、散歩、読書など、いろいろです。