広島「被爆二世」作家がドイツの中高生に尋ねた「遺族が名乗り出ない原爆犠牲者」が813人もいる理由
ドイツ発 作家・朽木祥さんが原爆投下25年後の広島を描いた『光のうつしえ』を講演。「負の記憶」を伝える大切さとは
2023.08.05
加害者になるな。犠牲者になるな。そしてなによりも傍観者になるな。
ウクライナで戦争が続いている今となっては、ますます差し迫った問題となりました。ますます戦争は他人事ではなくなったのです。
『光のうつしえ』には、原爆で亡くなった方々、その親や親せきが登場します。
この物語の登場人物は過去の亡霊ではありません。未来のあなたでも、私でもあります。過去の「負の記憶」を知ることは、未来に二度同じことが起きないように警戒することでもあります。
同じ過ちを繰り返さずに平和な未来を迎えるためには、どうしたらいいのでしょうか。ホロコーストの研究者、イェフダ・バウアー博士の言葉があります。「加害者になるな、被害者になるな、そしてなによりも傍観者になるな」。この言葉は、『光のうつしえ』でも引用しました。
ミュンヘンの大学生たちによる反ナチス活動「白バラ」グループのことは、皆さんもよくごぞんじでしょう。ショル兄弟たちをふくめた仲間たちは、ナチスを批判するビラをミュンヘン市内やミュンヘン大学でまき、その後、処刑されました。第六のビラの中には「無関心というマントを脱ぎ捨てなさい」という言葉が書かれていました。
ぜひ、これらの言葉を胸に刻んでいただけたらと思います。
講演会はまだまだ続きます。このあと朽木祥さんは、「戦争がはじまって、まずなくなる授業はなんでしょうか?」という質問をなげかけます。質疑応答の時間にうつると、子どもたちから「広島に放射能はのこっていますか?」「日本はアメリカをうらんでいますか?」といった質問をもらいました。
つづぎは、8月12日(土)に掲載予定です。
『光のうつしえ 廣島 ヒロシマ 広島』朽木祥/講談社
<あらすじ>
真夏の夜、元安川に、人々は色とりどりの灯籠を流す。光を揺らしながら、遠い海へと流れていく――。68年前の8月6日。広島上空で原子爆弾が炸裂した。そこに暮らしていた人々は、人類が経験したことのない光、熱線、爆風、そして放射能にさらされた。ひとりひとりの人生。ひとりひとりの物語。そのすべてが、一瞬にして消えてしまった。朽木祥が、渾身の力で、祈りをこめて描く代表作!第63回小学館児童出版文化賞受賞作。
朽木 祥
広島出身。被爆2世。 デビュー作『かはたれ』(福音館書店)で児童文芸新人賞、日本児童文学者協会新人賞を受賞。その後『彼岸花はきつねのかんざし』(学研)で日本児童文芸家協会賞受賞。『風の靴』(講談社)で産経児童出版文化賞大賞受賞。『光のうつしえ』(講談社)で小学館児童出版文化賞受賞。『あひるの手紙』(佼正出版社)で日本児童文学者協会賞受賞。 ほかの著書に『八月の光 失われた声に耳をすませて』(小学館)、『海に向かう足あと』(カドカワ)などがある。2016年『八月の光』より「石の記憶」がNHK国際放送より17言語に翻訳されて各国に放送、東京FMからは朗読劇として発信された。 近年では、『光のうつしえ』が英訳刊行され、アメリカでベストブックス2021に選定されるなど、海外での評価も高まっている。日本ペンクラブ子どもの本委員会委員。
広島出身。被爆2世。 デビュー作『かはたれ』(福音館書店)で児童文芸新人賞、日本児童文学者協会新人賞を受賞。その後『彼岸花はきつねのかんざし』(学研)で日本児童文芸家協会賞受賞。『風の靴』(講談社)で産経児童出版文化賞大賞受賞。『光のうつしえ』(講談社)で小学館児童出版文化賞受賞。『あひるの手紙』(佼正出版社)で日本児童文学者協会賞受賞。 ほかの著書に『八月の光 失われた声に耳をすませて』(小学館)、『海に向かう足あと』(カドカワ)などがある。2016年『八月の光』より「石の記憶」がNHK国際放送より17言語に翻訳されて各国に放送、東京FMからは朗読劇として発信された。 近年では、『光のうつしえ』が英訳刊行され、アメリカでベストブックス2021に選定されるなど、海外での評価も高まっている。日本ペンクラブ子どもの本委員会委員。