初めて原稿で読んだ「あらしのよるに」は、読み終えるころには「本の完成形ができていた」ほど面白かった【作者対談】

OMO7旭川 by 星野リゾート スペシャルトークショー 前編

左:あべ弘士さん 右:きむらゆういちさん

2026年4月25日、テンションあがる「街ナカ」ホテル「OMO7旭川 by 星野リゾート」で、世界的なベストセラー絵本「あらしのよるに」の著者、きむらゆういち氏とあべ弘士氏によるトークイベントが開催されました。

新シーズンもスタートし、ますます目が離せない展開になっていますが、制作秘話や著者それぞれの思いなど熱く語り合いました。

前編/全2回
後編はこちらから(2026年6月20日公開予定)

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司会(OMO7旭川広報担当者):
「あらしのよるに」は、講談社出版文化賞や産経児童出版文化賞など数々の賞を受賞し、その後映画や舞台さらには歌舞伎など、さまざまな表現へと広がり続けてきました。

子どもたちのための物語としてはもちろんですが、大人になってから読み返し、言葉の奥にある深いテーマに改めて気づかされたという方も多いのではないでしょうか。

きむらさんが綴る言葉とあべさんが描く力強い絵、このお二人の出会いから、どのようにして唯一無二の世界が生まれたのか、本日はその舞台裏や作品に込められた思いなど、ここでしか聞けない話をじっくりと伺っていきたいと思います。

物語世界がとりもつ同世代作家の縁

──あべさん、きむらさん、お二人の出会いは?

きむらさん(以下敬称略):
まず僕の原稿があり、絵をどうしようと初代の編集者と考えていました。そこであべさんの『ゴリラはごりら』(作 工藤直子、絵 あべ弘士 童話屋)という本を見つけて、「あ、この人いいんじゃない」ってことで頼むことになったのです。ところが次に編集者と打ち合わせしたら、「あべさんに断られました」という話でした。

「あらしのよるに」シリーズ

あべさん(以下敬称略):
飼育係として働いていた旭山動物園でお昼ご飯を食べていたら編集者から電話があり「きむらゆういちさんという方が文を書いたんですが、絵を描いてくれませんか」って。でもね、原稿がきてないんだもの、判断できない。きむらゆういちという人も知らなかったし。

「原稿読んでから描くか描かないか決めます」といいました。だから断ったんじゃないよ。それで原稿が来たんですね。きむらさんの手書きの原稿用紙で。第一印象は、「下手な字だな~」(笑)。2番目の印象は「こっれは、面白いな~!」です。

繰り返し読んでいるうちに、どんどん頭の中でラフを描いていたの。読み終えるころには完成形ができていた。そのくらい面白かった。

きむら:
原稿用紙の裏に絵ができていて、それが本チャンの絵本の絵とほとんど変わってなかったんです。これには驚いたけど、こんなに楽な仕事はないよね(笑)。

──本当に、お互い知らなかったのですね

きむら:
以前に旭川に遊びに来たとき子どもの具合が悪くなり、書店の「こども冨貴堂」の2階で休ませてもらったことがあるんです。そのときお店の方に、あべさんの最初の作品『旭山動物園日誌』(出版工房ミル)という本をいただいて「おもしろいなあ」と思いました。でも絵は下手だなあって(笑)。

また、小学館の「おひさま」という雑誌に、ゾウの話を書いてほしいという依頼があり、編集者がゾウの絵のすごい上手い人がいるっていうので、見てみたら「わっ、すげえな」って思って、名前を見たらあべさんという人で──。

そして『あらしのよるに』のあべさん。当時はその3人とも別の人だと思って仕事していたんです。僕は名前覚えないから(笑)。同じ人だっていうのはだいぶ後になってわかるんです。『あらしのよるに』の画稿ができてみて、あべさんの第一印象は、「めっちゃ頭の良い人」。だって、絵描きがデザイナーのするようなことまでやってのけて。

あの独特な嵐の夜は……で描かれていた。

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