初めて原稿で読んだ「あらしのよるに」は、読み終えるころには「本の完成形ができていた」ほど面白かった【作者対談】

OMO7旭川 by 星野リゾート スペシャルトークショー 前編 (2/3) 1ページ目に戻る

機転を効かせた技法で描かれた「暗闇の中のガブとメイ」

『大型版 あらしのよるにシリーズ(1) あらしのよるに』より 絵:あべ弘士

あべ:
技法は簡単なんですよ。この話はヤギとオオカミ2人のお芝居。上手からヤギ、下手からオオカミがきて、真っ暗闇の中、2人で会話をする。舞台で言えば一幕一場暗転。それどうやって描こうかなと考えたんですね。普通に線画したものをコピー機で白黒反転にする。

そしたら線で書いたところが白で出てくるんですよ。その上にマーカーで色をつける。真ん中をカッターで切って真ん中を白地にして、そこに文章を入れるようにしました。

ほとんどの人は、まずクレヨンで色を塗ってその上に黒いクレヨンで全体を塗りつぶしてペン先でスクラッチしたと思っていますね。それじゃあ何色が出てくるかわからないし、大変すぎるよ!

種を越えた友情は永遠のテーマ

──なぜオオカミ(ガブ)とヤギ(メイ)にしようと思ったのでしょう?

『新あらしのよるにシリーズ(2) あたらしいかぞく』より 絵:あべ弘士

きむら:
食う、食われるというテーマでは、僕の中で食べるほうはみんなオオカミ。オオカミが出てくる本を何冊も出しています。

『あらしのよるに』は暗闇の話とはいっても、稲光があったり、シルエットが出たり、触ったりすると相手がばれて話がすぐに終わってしまうので、何にしようか考えました。ウサギじゃ小さい、ヒツジじゃ毛深い、ブタじゃ丸いし──で、ヤギが一番バレない。

──今回、あべさんと打ち合わせしたときに、どの動物にしたってお互い気づくだろうってご指摘がありました。

あべ:
動物園関係者からは考えられないんだな。そこは素人と言わせてもらおう(笑)。

だから物語(フィクション)であるわけだけど。本来、ヤギもオオカミも目はいいし、鼻も利きますからね。鼻風邪ひいたくらいで相手がわからなくなることはないよ。

──あべさんの描くオオカミはオオカミらしさがあるというか。ちゃんと描いていますね。最初に文章を読んで、どういう見た目にしようか構想はありましたか?

あべ:
ずっと動物園で見てきたし、野生も見ていますから、ちゃんと描かなきゃいけないと思いがあって、あんまり噓では描けません。いわゆる人間のような2本足の擬人化ではなく、生態はきちんと描くようにしています。最初の『あらしのよるに』シリーズの3巻目までは軽い話です。だから絵のタッチも軽い。

で、話が進むにつれ、どんどん重い話になってくるのね。こうだから筆使いに勢いが出て絵も重厚化しています。1巻から7巻まで読み比べたら、絵の進化というか変遷が面白いから、ぜひその変化を見てほしいな。

中でも私が一番好きな巻は『ふぶきのあした』。これはやっぱり北海道を知っている作家でないと描けないですよね。

『大型版 あらしのよるにシリーズ(6) ふぶきのあした』

きむら:
旭川空港からこのホテルに来る途中、山が見えてね、まだ雪をかぶっていて「あれは『あらしのよるに』に出てくる山だな」って見ていました。

『ふぶきのあした』で完結の予定だった
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