発達障害の特性のある子の“きょうだい児”への支援【後編 保護者や周りができること】〔言語聴覚士/社会福祉士〕が解説

#17 発達障害の特性のある子どもの「きょうだい児」の支援─後編~周りの見守りとサポート~ 署名)

言語聴覚士・社会福祉士:原 哲也

1.きょうだい児の心情

きょうだい児は幼少期から「世の中は自分の思いどおりにはならない」と感じています。

例えば、発達障害の特性のある兄弟姉妹と遊びたくても意思疎通が難しくて遊べない、母親に甘えたくても母親は発達障害の特性のある兄弟姉妹のことで精いっぱいで甘えられない、などです。

このような経験が度重なる中で、きょうだい児は比較的幼いころから「わがままを言ってはいけない」「周りの人が望むように行動しなくてはならない」と思うようになりがちです。

これは早くに大人になった、成長したのだととらえられなくもありませんが、そこに大きなストレスがあることは間違いありません。

各種の調査では、きょうだい児には自己主張をあまりしない、自己卑下といった性格傾向への影響が見られること、周囲への過剰適応の傾向があること、そして、これらの傾向は社会生活への不適応、心身の不調などにつながる可能性があることが言われています。

だとすればきょうだい児には、適切な支援が必要なのです。

参考 「障害のある児のきょうだいに関する研究の動向と支援のあり方」2009 川上あずさ 小児保健研究 68(5) P583-589.

2.きょうだい児が求めているものと支援

以下、きょうだい児がどういう心情にあり何を求めているのか、それに対してどのような支援ができるかを考えてみたいと思います。

(1)養育者との関わりがほしい
きょうだい児は家庭の事情を理解しているので、養育者に甘えたり、自分への注目を求めたい気持ちを抑えることがよくあります。しかし、きょうだい児も愛情を求める子どもです。養育者はそのことを忘れないでほしいのです。

そして何とかして、きょうだい児と二人きりで向き合う時間を作ってください。長時間でなくてもいいのです。毎日10分、1週間に一度はもう少し長く、など、きょうだい児が「今はママと僕だけの時間」「パパが私とだけ遊んでくれる時間」と感じられる時間を保証してあげたいです。

(2)発達障害の特性のある兄弟姉妹のことを知りたい
きょうだい児は、発達障害の特性のある兄弟姉妹と意志疎通をしたい、遊びたいと思っています。それなのに「なんで急に怒るんだろう」「なんでしゃべらないんだろう」などと不思議に思い、なぜそうなのかを知りたいと思っています。

そしてこれらの「理由」を知ることで、きょうだい児が生活しやすく、楽になることも多いです。ですから養育者は、発達障害の特性のある兄弟姉妹について、きょうだい児が疑問を持っていたらそれに答えてあげましょう。

きょうだい児が大きくなってきたら、正しい知識を伝えるという意味で、主治医に協力してもらうのもよいと思います。

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