発達障害の特性のある子の“きょうだい児”への支援【後編 保護者や周りができること】〔言語聴覚士/社会福祉士〕が解説

#17 発達障害の特性のある子どもの「きょうだい児」の支援─後編~周りの見守りとサポート~ 署名)

言語聴覚士・社会福祉士:原 哲也

3.きょうだい児と家族のプログラム

最後に、①きょうだい児の、発達障害特性のある兄弟姉妹への否定的感情の低減、②親子関係の安定を目的とするプログラムをひとつご紹介します。

このプログラムには発達障害の特性のある子、親、きょうだい児(小学校1年から中学3年生)が参加し、親ときょうだい児はグループに分かれ、6回にわたって以下のようなテーマで活動や意見交換をしました。

●親子でも打ち解けゲーム
●自己紹介
●自分について話す
●家族自慢
●障害​の理解
●きょうだい児の友だち関係における悩みについての意見交換
●自分の友だちに発達障害の特性のある兄弟姉妹のことを聞かれたら、どう伝えるか
●親にわかってほしいこと
●親への手紙を書く
●将来の夢と自分を助けてくれる人について
●きょうだい児の訴える不公平感についての事例にもとづく意見交換
●親同士や子どものよいところを見つけるエクササイズ
●きょうだい児からもらった手紙の感想を話し合う

このプログラムの実施後、たしかに、きょうだい児の発達障害特性のある子への否定的感情が低減し、親子関係が安定する傾向がみられたといいます。このような実践が拡がることを強く望みます。

参考文献 「障害のある子どものきょうだいとその家族のための支援プログラムの開発に関する実践的研究」阿部 美穂子・神名 昌子 特殊教育学研究2015年52巻5号 P349-358

最後に

きょうだい児の支援への取り組みは地域差がかなりあり、支援がまだまだ不十分な地域もあります。

しかし、きょうだい児の人生もまた、1回だけの大切な人生です。きょうだい児が自分らしく生きられるよう、養育者、支援者は彼らを応援したいものです。

そのためには、まずは、きょうだい児が置かれている状況、すなわち、きょうだい児の心情や周囲との関係に意識を向けることから出発しましょう。

そして、きょうだい児が自分らしさをみつけ、自分らしい人生を築くことができるよう、きょうだい児と周囲の人々、すなわち、発達障害特性のある兄弟姉妹、養育者、友だちや先生、社会で出会う人々との関係がよりよいものになるように、働きかけていきたいものです。

────────
今回は「発達障害の特性のある子どもを育てる家族への支援」の中から、「きょうだい児」の支援について、原哲也先生に解説していただきました。

次回(第18回)では、発達障害の特性のある子どもを育てる「祖父母」のストレス支援について、具体的に教えていただきます。

原哲也
一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN代表理事・言語聴覚士・社会福祉士。
1966年生まれ、明治学院大学社会学部福祉学科卒業後、国立身体障害者リハビリテーションセンター学院・聴能言語専門職員養成課程修了。カナダ、東京、長野の障害児施設などで勤務。

2015年10月に、「発達障害のある子の家族を幸せにする」ことを志し、長野県諏訪市に、一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN、児童発達支援事業所WAKUWAKUすたじおを設立。幼児期の療育、家族の相談に携わり、これまでに5000件以上の相談に対応。

著書に『発達障害の子の療育が全部わかる本』(講談社)、『発達障害のある子と家族が幸せになる方法~コミュニケーションが変わると子どもが育つ』(学苑社)などがある。

児童発達支援事業所「WAKUWAKUすたじお」

原哲也先生へのご相談を募集

コクリコでは、原先生の連載で取りあげるご相談を募集しています。お子さんの発達障害、発達特性、療育、家族の関わりについてなど、お悩みをお寄せください。

くわしくはこちら https://cocreco.kodansha.co.jp/general/present_event/sPFh8

「発達障害の子の療育が全部わかる本」原哲也/著
すべての画像を見る(全3枚)

わが子が発達障害かもしれないと知ったとき、多くの方は「何をどうしたらいいのかわからない」と戸惑います。この本は、そうした保護者に向けて、18歳までの療育期を中心に、乳幼児期から生涯にわたって発達障害のある子に必要な情報を掲載しています。必要な支援を受けるためにも参考になる一冊です。

この記事の画像をもっと見る(全3枚)

前へ

4/4

次へ

35 件
はら てつや

原 哲也

Tetsuya Hara
一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN代表・言語聴覚士・社会福祉士

1966年生まれ、明治学院大学社会学部福祉学科卒業後、国立身体障害者リハビリテーションセンター学院・聴能言語専門職員養成課程修了。カナダ、東京、長野の障害児施設などで勤務。 2015年10月に、「発達障害のある子の家族を幸せにする」ことを志し、長野県諏訪市に、一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN、児童発達支援事業所WAKUWAKUすたじおを設立。幼児期の療育、家族の相談に携わり、これまでに5000件以上の相談に対応。 著書に『発達障害の子の療育が全部わかる本』(講談社)、『発達障害のある子と家族が幸せになる方法~コミュニケーションが変わると子どもが育つ』(学苑社)などがある。 ●児童発達支援事業「WAKUWAKUすたじお」

1966年生まれ、明治学院大学社会学部福祉学科卒業後、国立身体障害者リハビリテーションセンター学院・聴能言語専門職員養成課程修了。カナダ、東京、長野の障害児施設などで勤務。 2015年10月に、「発達障害のある子の家族を幸せにする」ことを志し、長野県諏訪市に、一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN、児童発達支援事業所WAKUWAKUすたじおを設立。幼児期の療育、家族の相談に携わり、これまでに5000件以上の相談に対応。 著書に『発達障害の子の療育が全部わかる本』(講談社)、『発達障害のある子と家族が幸せになる方法~コミュニケーションが変わると子どもが育つ』(学苑社)などがある。 ●児童発達支援事業「WAKUWAKUすたじお」