算数障害は脳の特性
熊谷先生によれば、算数障害は、発達障害の中の学習障害(LD)に含まれる特性の一つ。
計算や数の理解が特に難しい状態です。ADHD(不注意や多動性)やASD(対人関係やこだわり、イメージする力の特性)を併せ持つこともあります。
算数につまずく根本的な原因は、認知能力のバランスです。情報をインプットして処理し、アウトプットする過程にアンバランスさがあり、学習に困難が生じるのです。
たとえば「数詞」(「さん」という読み方)、数字(「3」)、意味(「●●●」)が結びつかないと、計算方法を習得したり文章題を解いたりするのは難しくなります。
また、順序を表す「序数性」、量を表す「基数性」の理解も大切です。数を数えるときに「1,2,3,5……」と途中の数字を飛ばしてしまうという序数性の困難があったり、反対に、順番はわかるけれど、数が表す量がイメージできなかったりします。
他にも、計算に必要な情報を一時的に保持する「ワーキングメモリ」、計算を順序立てて処理する「継次処理」、全体をまとめて処理する「同時処理」など、算数にはさまざまな能力が必要です。
算数障害は「困難」が伝わりづらい
学習障害(LD)には大きく「読字障害(ディスレクシア)」「書字表出障害(ディスグラフィア)」「算数障害(ディスカリキュア)」の3つがあり、読字障害なら「音読が苦手」、書字障害なら「漢字が覚えられない」など、比較的“見えやすい困難”で表れます。
しかし、算数に関連する能力は、とても抽象的。困難さを当事者である子ども自身が説明するのは難しく、周囲もなかなか理解してあげられません。
しかも「積み重ねの教科」である算数の場合、どこかでつまずくと、学習全体に影響が出やすいのです。熊谷先生は、「とくに小学校1~2年生で周囲の大人が気づいて対応することが、社会生活に必要な算数の考えを身につける上で大切」と説明します。
小学校高学年になるほど、子どもは苦手さを隠しやすくなり、周囲も気づきにくくなることも。放置すれば、自己肯定感の低下や不登校につながってしまうリスクもあります。
「数や計算の苦手さには、必ずその子なりの理由があります。検査など少し手間はかかりますが、できるだけ早く適切な支援に繫げていくことが大切です」(熊谷先生)
もちろん、どんなタイミングでも遅すぎるということはありません。水木さんの子どもも、診断を受けたのは高校生のときでした。
子どもの特性に合ったサポート
「優等生に育てたい」から、「子どもの特性に合ったサポート」へ。困り事の裏にある「算数障害」に出会い、水木さんの子育の価値観は大きく変わりました。
その背景には、自身の「反省」があったといいます。






















































































